1970年代の後半に大ブームが起き、今もなお人々を魅了してやまないスーパーカーたち。そんな懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまでを紹介していく、スーパーカークロニクル。今回は、マセラティ ボーラだ。
マセラティ ボーラ(MASERATI BORA:1971-1978)
マセラティが初めて製作した市販ミッドシップカーが「ボーラ」だ。車名のボーラとはマセラティ伝統の「風」シリーズのひとつで、アルプス山脈からアドリア海へと吹きおろす冷たい地方風に由来するという。ちなみに、かつてフォルクスワーゲンに同名のボーラというセダンがあったが、これも車名の由来は同じだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
ランボルギーニのミウラやカウンタックが登場し、一躍注目度が高まっていったスーパーカー市場に参入したマセラティの切り札的なモデルがボーラだ。発表は1971年のジュネーブ モーターショーだったが、1960年代末期から当時のマセラティの親会社であったシトロエンの提案で、プロトタイプを製作していた。
発表は1971年だが、その設計はさすが実績のある一流スポーツカー メーカーだけのことはあり、時流に即した新しい方式で手堅くまとめていた。基本はモノコックにサブフレームを組み合わせ、その上にエンジンや駆動系などを搭載する。サスペンションは前後ダブルウイッシュボーンとした。エンジン上方はカーペットで覆われた上にキャビンとはガラスで隔たれ、ミッドシップカーながら騒音が低く抑えられていたのも特徴のひとつだった。
そのエレガントともいえる性格を決定的に印象付けているのはスタイリングで、イタルデザインを立ち上げて間もないジョルジェット・ジウジアーロが担当した。当時は新進気鋭だったジウジアーロだが、すでに多くのスーパーカーの試作車や市販車を手がけており、それらはまさに切れ味鋭い前衛的作品が多かった。
ランボルギーニ ミウラがターゲットだった
しかし、ボーラには余裕の気品のようなものも感じられ、大人のスーパーカーといえた。もちろんスーパーカーならではの、地を這うようなファストバックボディのシルエットをしっかり見せていたが、破綻のないバランスのとれたプロポーションも見どころだった。
仮想敵は、ランボルギーニ ミウラだった。車体はライバルよりやや大きく重く、ホイールベースも長めの2600mmだったが、そのぶん乗員スペースは余裕があり、フロントには大きめの荷室も確保された。さらにマセラティらしい落ち着いたハンドリングを実現していた。
ボーラはスーパーカーの公式に則り、モノコックシャシのリアミッドにV8 DOHCエンジンを縦置きに搭載した。エンジンは中速域のトルク特性を重視した設定のフレキシブルなギブリ用の4.7L V8を搭載。あえてピークパワーを狙わなかったのも、老舗マセラティらしい見識といえる。それでも総アルミ製のV8 DOHCはウエーバー製のツインチョークキャブレターを4基装着して最高出力は310psを発生。最高速は約260km/hを実測しており、スーパーカーの名に恥じない高性能ぶりを発揮した。
1973年にはアメリカの排出ガス規制に対応するため、北米仕様のエンジンを4.9Lに排気量アップしたが、最高出力は300psにダウンしている。そのため、1975年のマイナーチェンジでは、排気量はそのままに最高出力は320psにアップされた。ボーラは累計で530台が生産され、1978年に生産を終了した。まぎれもなく第1次スーパーカーブームの主役の1台として記憶されるべきモデルだ。
マセラティ ボーラ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4335×1768×1134mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1400kg
●エンジン種類:90度V8 DOHC
●総排気量:4719cc
●最高出力:310ps/6000rpm
●最大トルク:47.0kgm/4200rpm
●燃料・タンク容量:有鉛ハイオク・90L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前205/70VR15、後215/70VR15
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みんなのコメント
因みに現在の愛車はマトラM530、日常で乗ってます
日本のクルマは進化したのかね?