マイナーチェンジを受けたトヨタの新型「カローラ」に小川フミオが試乗した。今や希少な和製セダンの魅力を考える。
1.8リッターから1.5リッターへ変更されたワケ
トヨタのカローラ(セダン)が新エンジンを搭載し、2022年10月3日に発売された。いちはやく試乗できたのは、11月7日。セダンは古くさい? と、思いきや、新しい車型として、若い世代を中心に人気が上がっているとトヨタの担当者は話す。
カローラは、従来の1.8リッター直列4気筒ガソリン・エンジンに換えて、1.5リッター直列3気筒ガソリン・エンジンを搭載した。従来は103kW(140ps)だった最高出力が、88kW(120ps)に、最大トルクは170Nmが145Nmとなった。
リアサスペンションは従来の独立式ダブルウィッシュボーンが、1.5リッターガソリンエンジン搭載の前輪駆動車(試乗車)では半独立のトーショナルビーム式に変更された。
一般的には、わりと大きなグレードダウンである。が、乗ってみると、よく走る。高速での合流や、追い越し加速など、力不足感はほとんど感じられない。
運転支援システムを作動させているときに、勾配のきつい上りがあると、設定速度に達するのに時間がかかり、「がんばれ!」と、声が出そうになるものの、基本的には満足いく走りが体験できた。
トーショナルビームは、1970年代のフォルクスワーゲンが「ゴルフ」などで採用し、日本のメーカーもならったサスペンション形式で、後輪をとりつけているアームがねじれることで路面への追従性を上げる。
でも走りを追求するなら独立式のダブルウィッシュボーンに軍配があがるのは当然といえば当然なのだけれど、あえて、トヨタ自動車はこの形式を採用。理由を尋ねて驚いた。
「セダンは、商用車など法人の購入が少なくないため、価格を抑えるのが目的だった」と、製品企画の梅村伸一郎主管は教えてくれた。エンジン排気量を抑えたのも、同様の理由なんだそうだ。
カローラはやっぱり、日本のビジネスの屋台骨を支えているクルマなのだなぁと、私は逆に感心。それより感心したのは、上記のように、性能にすぐれている点だ。
「1.8リッターに対して遜色ない出来になったと自負しております」。梅村主管も満足そうに話してくれた。
若い世代へのアピールもうひとつの驚きは、カローラ(セダン)の人気が若い世代のなかで上昇中という、梅村主管の発言だ。
「たしかに今回は、若い世代にアピールしようとコーナリング性能などを向上させています。それとはべつに、若いユーザーは、“セダン”という車体形式を新鮮にとられていらっしゃるのです」
訊けば、ハッチバックとかミニバンで育ち、いまやSUVに囲まれているような環境にあって、若い世代はセダンを自分に身近なものとしてとらえてこなかったとか。
「このクルマ、トランクというのがついていて、おもしろい! と、セダンに興味を持つ方が増えているようで、そのマーケットへのアピールもはかりたいと思っています」
カローラは、かつては家族をどこまででも運んでくれるクルマだった。だから、サイズは小さくてもダメだし、大きすぎては日本の道に合わない。後席空間の広さやトランクも容量も重要だし、いっぽう、エンジンが力不足では困る。
今回のカローラを体験してみると、全長4495mm、全幅1745mm、全高1435mmと、たしかに日本の路上では使いやすいサイズにおさまっている。先述のとおり、動力性能も高いし、乗り心地もおおむね快適だ。シートもよく出来ている。
ひとつだけ、いまの時代のクルマだなぁと思うのは、後席の使い勝手だ。側面衝突の基準をクリアするためだろうか、ドアの内張がぶ厚くて、結果、後席へ乗降性は優れているとは言い難い。
後席スペースも、身長175cmの私には十分だけれど、着座位置が落としてあるせいで、前席のヘッドレストレイントに視界が遮られ、閉塞感が強い。つまり、4人で乗ること前提でなく、前席重視で選択するほうがよさそうだ。
このあたりも、若い世代ならいいかもしれない。ひとつだけ、ないものねだりをするなら、インテリアがもうすこし趣味性が高いといいなぁと思った。合成樹脂のパーツなどクオリティは高いのだけれど、”味”が不足。このあたり、フォルクスワーゲンとかルノーとかフィアットなどが参考になりそうなのだけれど。
法人ユーザーには必要ないものかもしれないけれど、クルマには多少の“遊び”があったほうが幸福な気分になれるのも、たしかなのだ。
トヨタさま、どうでしょう?
文・小川フミオ 写真・小塚大樹
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