■EV時代だからこそ光る、当時の「4輪×2輪」のコンセプト
2023年10月28日から一般公開が始まった「ジャパンモビリティショー2023」ホンダブースで、大きな話題を呼んでいるコンセプトモデルが「SUSTAINA-C Concept(サステナ・シー コンセプト)」です。
往年の名車「CITY(シティ)」との関連性はあるのか、開発担当者に直撃インタビューを試みました。
【画像】めちゃカッコいい! 現代版「シティ」を画像で見る(50枚以上)
サステナ・シー コンセプトは、赤いボディに黒いバンパー、台形の車体に丸いヘッドライトなど、ホンダが1981年発表した名車「シティ」のイメージを強く感じさせるホンダのBEV(バッテリーEV:電気自動車)コンセプトモデルで、2輪車「Pocket Concept(ポケット コンセプト)」もセットで発表されています。
車名に「C」が含まれていることや、シティに搭載することが前提で開発されたバイク「モトコンポ」のイメージを強く感じさせることから、「これはシティとモトコンポの再来だ」と話題になっています。
果たしてサステナ・シー コンセプトはシティとの関連性はあるのか、ホンダファンのみならず多くの人が気にしているのではないでしょうか。
まずはサステナ・シー コンセプトの全体的な狙いと技術について、先進技術研究所 次世代電動車研究 シニアチーフエンジニアの田中 健樹氏に話を聞きました。
「まさしく、あれ(シティ)とあれ(モトコンポ)の組み合わせがヒントになっています。
4輪と2輪の組み合わせをセットで企画できるのも、私たちならではと思います。
高速道路で4輪車に乗って行き、2輪車を下ろしてさらに先に向かうというコンセプトはEVの時代にこそ有効で、バッチリとハマるのではないかと考えました。
かつてはクルマもバイクもガソリンエンジンで、バイクも重く、横倒して積載するために燃料漏れの心配もありました。
もしあの頃EVが実用化されていたら、電動バイクで発売していたと思います」
またSUV全盛の時代に、ちょっと懐かしく感じられるコンパクトハッチバックのスタイルを採用したことも注目したいところです。
これについて田中氏は次のように話します。
「SUVが多いこの時代に、あえてコンパクトカーとしたことはかなり意識的なものです。
その発想の原点は、最新の市販EVといえば、大きくて価格も高いモデルが主流で、一般のユーザーには遠い存在になっているのではないかという疑問からでした。
しかし私たちは、昔から身近なクルマやバイクをお届けしています。これからEVが普及すれば、手頃な大きさで親しみやすく、価格もリーズナブルなEVが求められるようになる、と考えました。
航続距離についてはアナウンスしていませんが、実用面で問題ない数値は確保したいと思います。
日本では軽自動車の人気が高いですが、世界的にはコンパクトカーの需要が高いです。各メーカーとも、このクラスにEVを投入してくるのではないでしょうか」
■誰が見ても「Hondaらしい」とわかるデザインを
そして田中氏は、サステナ・シー コンセプトのボディパネルについてこのように説明しました。
「プレスリリースでも、サステナ・シー コンセプトはサスティナブルな素材を使っていると説明しています。
100%リサイクルできるアクリル樹脂でボディパネルを作っていますが、この赤いパネルはアクリルで、塗装していません。アクリルは無塗装でも美しい色合いが出せます。
自動車製造におけるCO2排出の大部分は塗装の工程が占めているので、塗装なしで成立するクルマを作りたい、という希望もありました」
そして気になる車名の「C」について突っ込んでみたところ「あくまでもコンパクトのCです」と笑いながら答えてくれ、シティとの関連性も決して否定はしませんでした。
続いて気になるデザインの真相に関して、e-モビリティデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ チーフデザイナーの古仲 学氏は、このように語りました。
「サステナ・シー コンセプトとポケット コンセプトのデザインは、社内のデザインコンペで決定しました。
ホンダは2023年で創立75周年を迎えるということもあり、いろいろなヘリテージ(伝統)や良いアセット(資産)を持っているのですが、それを生かしたデザインの中にこの2台がありました。
つまり、意図的に当時をオマージュして生まれたデザインではありません。
誰が見てもホンダのクルマだとわかるデザインで、往年のホンダファンだけでなく、若い方々にも『やっぱりホンダはいいね』と思っていただけるのではないでしょうか」
※ ※ ※
このインタビューでは、サステナ・シー コンセプトがコンパクトカーで出現した理由や、シティとの関係性を聞くことができました。
また多くの人がサステナ・シー コンセプトに寄せる「これはいかにもホンダのクルマだ!」という感想を、ホンダ自身も感じていたことがわかります。
SNSでの反響を見ても、サステナ・シー コンセプトの提案は多くの人に共感を与えているように感じます。
ホンダらしいモデルという意味でも、コンセプトモデルに近い状態での市販化が望まれる一台です。
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