現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 近年採用がすすむ「トルクベクタリング」 SUVに多いが一体ナニモノ? 運転が上達したと“錯覚”する機能の効果って?

ここから本文です

近年採用がすすむ「トルクベクタリング」 SUVに多いが一体ナニモノ? 運転が上達したと“錯覚”する機能の効果って?

掲載 22
近年採用がすすむ「トルクベクタリング」 SUVに多いが一体ナニモノ? 運転が上達したと“錯覚”する機能の効果って?

■トルクベクタリングって一体何?

 人気かつ定番ジャンルとなった「SUV」ですが、各メーカーがさまざまなモデルを市場投入し、豊富なラインナップから選べるようになりました。
 
 そんなSUVでは、近年「トルクベクタリング」なる機能が装備されることが増えています。メーカーによってネーミングが異なることもありますが、4WDモデル(一部では2WDにも)に搭載されているようです。
 
 何となく駆動力に関する機能なのは予想できるのですが、一体どのようなものなのでしょうか。

【画像】「えっ…!」これが「トルクベクタリング」を搭載したクルマです!画像を見る(23枚)

 トルクベクタリングとは、タイヤにかかる駆動力を電子制御でより高度にコントロールする機構のこと。これによって、挙動を安定させ、よりスムーズかつ安全にコーナリングができるといわれています。

 現在のSUVは4WDが増えましたが、もともとはFF(前輪駆動)をベースにしているため、基本的なセッティングは速度を上げると旋回半径が大きくなる(外に膨らんでいく)「弱アンダーステア」とされています。

 というのも、「アンダーステア」のほうがコントロールしやすく、コーナリング速度を落とせばアンダーステアが軽減し曲がりやすくなる(=無理な速度でなければスムーズにコーナーを走れる)という万人向けのセッティングなのです。

 ただし、実際の路面は状況が常に変化しています。グリップが良い路面もあれば、砂やホコリなどで滑りやすい路面もあり、ましてやクルマの向きを変えるコーナリングは、同じ駆動力のままでは左右のタイヤに回転差が生じることもあります。

 この回転差や空転してしまうタイヤを減らす目的で誕生したのが4WD(AWD)のほかに、左右の回転差を制御・調整する「デフ(ディファレンシャルギア)」と呼ばれる機構もあり、デフは専用ギアの組み合わせで機械式に作動させる機構です。

 そして、このデフの機能をさらに進化させたのが、トルクベクタリングです。

 今まではギアを用いた機械式が主流でしたが、近年はこれに電子制御が伴っています。

 タイヤの回転を監視するセンサーや走行時の車体の挙動を監視するセンサー、高速で情報処理をおこなうコンピュータやヨーコントロールデフなど電子的デバイスを組み合わせ、4つのタイヤを独立して電子制御してくれます。

 コーナリング中は曲がろうとする方向とは逆の方向に引っ張られる遠心力が働きますが、これを瞬時に検知し、引っ張られる側の駆動力(トルク)を高める、または内側の駆動力を抑えるなどで挙動を安定化させ、曲がりたい方向により曲がりやすくしてくれるという、安全にもスポーツ走行にも対応する制御機構というわけです。

■トルクベクタリングの効果はいつ・どこで感じられる?

 実はこのトルクベクタリングは、ここ数年に出てきた新しい技術ではありません。1996年に登場したホンダ「プレリュード」(5代目)に「ATTS(アクティブ・トルク・トランスファー・システム)」なる名称で搭載されたのがはじまりと言われています。

 ただし実際にこの機構が有名になったのは、三菱「ランサーエボリューションIV」の「アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)」のおかげでしょう。

 それから約30年が経過し、SUV市場の拡大や4WD自体の進化、電子デバイスの高度化などが組み合わされ、現在ではさらに扱いやすく高精度な制御機構へと進化、普及しているというわけです。

 トヨタでは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」、ホンダは「SH-AWD」、マツダでは「G-ベクタリングコントロール」など各社で個別の名称が与えられ、制御方法にも少し違いはありますが、おおまかな機能は一緒と考えて良さそうです。

 では、このトルクベクタリングは、どのようなシーンで効果を発揮するのでしょうか。

 もちろんSUVで悪路を走行しているときにも有効なのですが、むしろ一般道のほうが効果を体感できるかもしれません。

 たとえば山岳路の曲がりくねったアップダウンの激しい道などを走行中に、オーバースピードでコーナーに入ってしまってもステアリングを切ったぶんだけ曲がり、車体が横滑りするのも自動制御してくれます。

 またトルクベクタリングは単体で作動するというより、これに付随するほかの機能と複合的に作用することで、より高い効果を発揮するといいます。

 現在の機構は、駆動力を4輪独立して電子制御するだけでなく、制動力(ブレーキ)も同時に制御してくれるのがポイント。コーナリングでは外側のタイヤに駆動力を回すだけでなく、同時に内側のタイヤも軽く制御して曲がりやすくしており、運転がうまくなったように感じられるかもしれません。

 ちなみに駆動力(トルク)を制御して挙動を安定させるという点では、「スタビリティコントロール」を装備しているクルマも多いでしょう。

 トルクベクタリングと似ていますが、作動する領域が違います。スタビリティコントロールはクルマが横滑りをはじめると機能し、強制的に挙動を安定させるのに対し、トルクベクタリングは挙動が乱れる前に適度なトルク配分を電子制御して事前に挙動を安定させてくれるものです。

※ ※ ※

 せっかくトルクベクタリングが搭載されていても、タイヤが十分な性能を発揮できる状態になければ意味がありません。

 日頃からタイヤの状態や空気圧のチェックをして適切なコンディションを保つことで、初めてトルクベクタリングの恩恵が受けられるということを覚えておきましょう。

こんな記事も読まれています

ハミルトンが予選3番手、PPと0.3秒差「実際にはそれほど差はないはず。優勝争いに加わりたい」メルセデス/F1第10戦
ハミルトンが予選3番手、PPと0.3秒差「実際にはそれほど差はないはず。優勝争いに加わりたい」メルセデス/F1第10戦
AUTOSPORT web
アルピーヌF1、カルロス・サインツJr.争奪戦に名乗り! 新加入ブリアトーレが早速動いた!?
アルピーヌF1、カルロス・サインツJr.争奪戦に名乗り! 新加入ブリアトーレが早速動いた!?
motorsport.com 日本版
「5ナンバー車」かと思ったら「7ナンバー」だったのですが… 分類番号700番台はレア? どんな車につくのか
「5ナンバー車」かと思ったら「7ナンバー」だったのですが… 分類番号700番台はレア? どんな車につくのか
乗りものニュース
「あなたはやってる?」 乗車前の「推奨行為」ってナニ? 教習所で教わるもやってる人は少ない安全確認とは
「あなたはやってる?」 乗車前の「推奨行為」ってナニ? 教習所で教わるもやってる人は少ない安全確認とは
くるまのニュース
「英国最大のバイクブランド」がスイスの高級時計メーカーと再コラボ! 世界270台限定!! 「特別なスポーツバイク」は何が魅力?
「英国最大のバイクブランド」がスイスの高級時計メーカーと再コラボ! 世界270台限定!! 「特別なスポーツバイク」は何が魅力?
VAGUE
F1分析|ラッセルに抑えられなければ勝機はあった……悔やむノリス。F1スペインGPの上位ふたりのレースペースを検証する
F1分析|ラッセルに抑えられなければ勝機はあった……悔やむノリス。F1スペインGPの上位ふたりのレースペースを検証する
motorsport.com 日本版
[サウンド制御術・実践講座]タイムアライメントでは正確な距離測定と音量バランス設定が成功の鍵!
[サウンド制御術・実践講座]タイムアライメントでは正確な距離測定と音量バランス設定が成功の鍵!
レスポンス
ハースVSマゼピン後援ウラルカリ、20億円規模のF1スポンサー契約めぐる法廷闘争がついに終了……? どちらも勝訴を主張
ハースVSマゼピン後援ウラルカリ、20億円規模のF1スポンサー契約めぐる法廷闘争がついに終了……? どちらも勝訴を主張
motorsport.com 日本版
Yahoo!ブラウザーの「カメラ検索」に車種名や価格、年式までわかるクルマ検索機能が追加
Yahoo!ブラウザーの「カメラ検索」に車種名や価格、年式までわかるクルマ検索機能が追加
@DIME
夏のモーターシーンのお供に…HKSのプレミアムグッズにTシャツ2種類が新登場
夏のモーターシーンのお供に…HKSのプレミアムグッズにTシャツ2種類が新登場
レスポンス
全長4.1mで「MTあり」! スズキ新型「コンパクトSUV」発表に反響多数!?「いいね」「次は欲しい」デザイン変更で精悍顔の「ビターラ」伊に登場
全長4.1mで「MTあり」! スズキ新型「コンパクトSUV」発表に反響多数!?「いいね」「次は欲しい」デザイン変更で精悍顔の「ビターラ」伊に登場
くるまのニュース
ポールのノリス「完璧なラップを走るのがどれほど難しかったか。明日はマックスやルイスを抑えて優勝したい」F1第10戦
ポールのノリス「完璧なラップを走るのがどれほど難しかったか。明日はマックスやルイスを抑えて優勝したい」F1第10戦
AUTOSPORT web
スウェーデンで自動車博物館ハシゴ旅! たまたま「サーブ9000生誕40周年記念」イベントに遭遇、取材を忘れるほど最高の旅でした
スウェーデンで自動車博物館ハシゴ旅! たまたま「サーブ9000生誕40周年記念」イベントに遭遇、取材を忘れるほど最高の旅でした
Auto Messe Web
【2024 スーパーフォーミュラ第3戦】レースは悪天候により12周で終了 TEAM MUGENがワンツーフィニッシュ
【2024 スーパーフォーミュラ第3戦】レースは悪天候により12周で終了 TEAM MUGENがワンツーフィニッシュ
Webモーターマガジン
アレックス・パロウ、コーション5度のレースを制し今季2勝目|インディカー第8戦ラグナセカ
アレックス・パロウ、コーション5度のレースを制し今季2勝目|インディカー第8戦ラグナセカ
motorsport.com 日本版
「ソアラ」の翌月に登場した2代目『レパード』の衝撃【懐かしのカーカタログ】
「ソアラ」の翌月に登場した2代目『レパード』の衝撃【懐かしのカーカタログ】
レスポンス
日本でピックアップ熱が高まってるしメーカーさんここはひとつ導入どうですか? いすゞD-Maxにホンダ・リッジラインにマツダBT-50……海外は日本メーカーの魅力的なトラックだらけだった
日本でピックアップ熱が高まってるしメーカーさんここはひとつ導入どうですか? いすゞD-Maxにホンダ・リッジラインにマツダBT-50……海外は日本メーカーの魅力的なトラックだらけだった
WEB CARTOP
オービスを光らせてバックレ! 乗り逃げ転売! 個人間カーシェアで本当にある「とんでも話」5つ
オービスを光らせてバックレ! 乗り逃げ転売! 個人間カーシェアで本当にある「とんでも話」5つ
WEB CARTOP

みんなのコメント

22件
  • fie********
    >トヨタでは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」、ホンダは「SH-AWD」、マツダでは「G-ベクタリングコントロール」など各社で個別の名称が与えられ・・・

    トヨタとホンダのシステムは、電制デフを使って実際に左右の駆動力を可変させてるけど、マツダのはブレーキを摘む制御をしてるだけで、駆動力を可変させているわけではない。
  • alp********
    マツダのGベクタリングコントロールは所謂トルクベクタリングではありません。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

168.3249.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

58.6399.0万円

中古車を検索
プレリュードの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

168.3249.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

58.6399.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村