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【GT-Rより新しいのに】ホンダNSXが短命に終わったワケ 旗艦モデル廃止 ホンダブランドの行方は?

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【GT-Rより新しいのに】ホンダNSXが短命に終わったワケ 旗艦モデル廃止 ホンダブランドの行方は?

短命 早くも生産終了の発表

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

【画像】レジェンド、オデッセイに続きNSXも…【生産終了発表3モデルを見る】 全95枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

クルマが好きな人であれば、NSXは誰でもご存知だろう。ホンダが世界に誇るスーパースポーツカーだ。

初代モデルは1990年に発売され、エンジンをボディの中央に搭載する本格的なミドシップレイアウトが注目された。

オールアルミボディで、V型6気筒3Lエンジンを搭載しながら、車両重量は1350kg(5速MT)と軽い。さまざまな改良を加えながら、2005年まで生産された。

2代目のNSXは、10年以上の隔たりを経て、2016年に発売された。

初代と同様のミドシップスポーツカーだが、メカニズムは大幅に異なる。

V型6気筒3.5Lツインターボエンジンに、ハイブリッドシステムを組み合わせた。後輪に加えて、前輪にも左右別々にモーターが配置され、4WDを成立させている。

このNSXが生産を終える。タイプSの追加を最後に、海外仕様も含めて終了するという。

生産は2022年12月までおこなうが、販売店では「NSXは生産規模が小さいから、生産枠が早々に埋まる可能性が高い」と説明した。

最後を飾るNSXタイプSの生産規模は、全世界で350台の限定だ。内訳は海外が320台、国内は30台にとどまる。

それにしてもNSXの廃止には驚いた。

現行型の発売は前述の2016年だから、2007年登場のGT-R、2008年のフェアレディZに比べると基本設計が新しい。

しかもハイブリッド車だから、システム最高出力が581ps、システム最大トルクも65.9kg-mに達しながら、WLTCモード燃費も10.6km/Lと良好だ。

ちなみに新型BRZは、水平対向4気筒2.4Lエンジンを搭載して、最高出力は235ps、最大トルクは25.5kg-mになる。

この性能でWLTCモード燃費は11.7-12.0km/Lだ。NSXはBRZの2.5倍に相当する動力性能を発揮しながら、燃費数値は近い。

つまりスポーツカーなのに燃費効率が優れ、時代のニーズに応じて、GT-Rなどよりも長く生産されると思われていた。

それが真っ先に生産を終える理由は何か。

ホンダの環境対応にそぐわず

NSXが生産を終える理由は大きく分けて2つある。

まずは環境対応だ。

ホンダでは、2040年に発売するクルマは、電気自動車と燃料電池車にしぼるとしている。

ハイブリッドを含めて内燃機関は搭載しない方針だ。この流れに沿ってNSXは役割を終えたと判断され、生産も終了した。

それでも今後は新しいスポーツカーを模索していくという。

つまりNSXは終了するが、スポーツカー市場から撤退するわけではない。

かなり先の話だと思うが、電気自動車や燃料電池車のスポーツカーを開発する可能性がある。

NSXが生産を終える2つ目の理由は、現行型の生産台数が少なかったことだ。

2016年の発売時点では「北米のオハイオ工場では1年間に1500台を生産して、その内の100台を日本国内で販売する」と述べていた。

仮に2017年から2021年までの5年間にわたって生産すれば、世界生産台数は累計で7500台、日本では500台を販売していたことになる。

ところが実際は、世界生産台数は2021年7月までに2558台だ。この内の464台が日本国内で売られた。

国内販売台数は1年間に100台の目標に近いが、世界生産台数は計画台数の34%にとどまる。大幅に少なかった。

売れ行きは伸び悩んでいた

世界生産台数が計画台数の34%で、しかも短命で終わるとなれば、NSXのプロジェクトが赤字になってしまう可能性もある。

現行NSXの価格は2420万円だから、単純に世界生産台数の2558台を掛けると、売り上げ総額は619億円だ。

NSXは特殊な高性能スポーツカーだから、開発と生産設備の費用などで、619億円が消費される可能性もある。

そうなると製造コストは、丸まるメーカーの負担だ。

NSXは高性能スポーツカーとあって、製造原価が1台当たり少なくとも1000万円には達するから、2558台であれば256億円の持ち出しになる。

先代NSXも生産台数は少なかったが、約15年間にわたって生産されたから、世界の累計生産台数は約1万8000台になる。

対する現行型は2558台だから、収支で辛くなるのは当然だ。

NSXの売れ行きが2558台にとどまったのは、NSXの売れ行きが、国内、海外ともに伸び悩んだからだ。

価格がネック? ニーズと隔たり

販売低迷の理由として、まずは価格が挙げられる。

先代型の価格は、1990年の発売時点で800万3000円(5速MT/東京地区)、2003年のマイナーチェンジ後でも920万7000円(6速MT/東京地区)であった。

それが現行型の価格は2420万円だから、先代型の2.6~3倍に跳ね上がった。

つまり先代型は、動力性能、価格ともに中級水準のスポーツカーだった。

それが現行型は、外観、性能、価格まで、本格的なスーパースポーツカーになった。

そこにユーザーニーズと商品の乖離が生じている。

1990年に発売された初代NSXは、ミドルサイズで切れの良い走りを味わえた。

価格もちょうど良く、約15年間にわたって販売したから売れ行きを伸ばせた。

しかし現行型は、動力性能が高まる一方で価格も高騰しており、先代型の馴染みやすさが薄れた。

とはいえ海外のスーパースポーツカーに比べると、ブランド力が弱く、先を急ぎすぎた印象を受ける。

現行NSXは前述のとおり前輪をモーターで駆動する4WDを搭載して、走行安定性が優れている。加速性能も抜群で、停車状態から100km/hに達するまでの所要時間は3秒少々と速い。

その一方でハイブリッドだから、走行性能が高い割に燃料消費量を抑えられる。

クワイエットモードでは、エンジンを停止させたモーター駆動のみの走行も可能で、従来のスーパースポーツカーとは異なる機能も備わる。

このように現行NSXは、優れたスポーツカーだが、ユーザーニーズとの隔たりも多く売れ行きは伸び悩んだ。

レジェンドも廃止 今後のブランドイメージは?

ホンダは2040年には内燃機関を廃止する方針だから、既に車種構成の整理を開始している。

販売台数の少ないNSXの廃止も理解できるが、30年以上の伝統あるフラッグシップスポーツカーだ。イメージリーダーとしての存在感は大きい。

しかもホンダは、狭山工場の閉鎖に伴い、オデッセイ、レジェンド、クラリティの生産も終了する。

オデッセイはミニバン、レジェンドはセダンの最上級車種だから、NSXとあわせて廃止するとフラッグシップモデルが一気に抜け落ちる。

仮にそうなると、ホンダのブランドイメージは大幅に変わってしまう。

2021年1~7月の時点で、国内で新車として売られたホンダ車の35%をNボックスが占めた。

軽自動車全体では50%を上まわり、そこにフィット、フリード、ヴェゼルというコンパクトな3車種を加えると85%に達する。

このうえでさらにNSX、オデッセイ、レジェンドまで廃止すると、ホンダのイメージは、スズキとダイハツに急速に近付いていく。

NSXやレジェンドは、ホンダにとって、ブランドイメージのスタビライザーだ。

販売台数は少なくても、その存在がアピールされることで、ホンダは上級車種を手掛ける総合自動車メーカーであり続ける。

Nボックスも「NSXやレジェンドを手掛けるホンダの軽自動車」とみられる。これもNボックスなどが好調に売れる大切な理由だ。

それがこれからは、車種ラインナップとブランドイメージの両方で、ダウンサイジングが加速する。

電動化を達成した2040年のホンダは、今とはまったく違うメーカーになっているかも知れない。

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みんなのコメント

5件
  • デビューした時、元さんや土屋が筑波で走らせてたが
    とても見れた姿じゃなかった
    半額以下の35GTRに追い回されて見るも無惨
  • 「2040年のホンダは、今とはまったく違うメーカーになっているかも知れない」
    車のメーカーであるかもわからない!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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