この記事をまとめると
■トヨタのスポーツモデル、スープラ
トヨタ・スープラは1日にしてならず! 意外と知らない5世代の歴史とは
■初代は1978年にデビューし、現行型で5代目となる
■今回は80型と呼ばれる4代目について詳しく解説
80型(4代目)スープラとは?
2019年5月17日、日本で17年ぶりにスープラが復活し大きな注目を集めたことは記憶に新しいことでしょう。
現行スープラは、トヨタがBMWとの共同で手掛けた2シーターFRスポーツ。日本で始めてお披露目されたお台場メガウェブで当時の豊田章男社長は、ニュルブルクリンクで先代モデルとなる80型スープラを走らせ運転の腕を磨いたことをスピーチしたことも話題となりました。
その80型とは4代目スープラ。1993年にデビューした同車は、ラグジュアリースポーツとして登場した初代、2代目からピュアスポーツ路線へと舵を切った3代目のコンセプトを継続し、本格的スポーツカーに進化しています。
前後重量配分は54:46(ターボ/NAは52:48)とわずかに前が重くなっていますが、これは意図的に配分されたもの。結果、50:50に配分するより高速直進性や横風を受けたときの安全性が高まりました。
また、ダウンフォースも高速直進性などを考慮し、やや前が軽く後ろを重く調整しています。
80型は3代目ソアラとプラットフォームを共有していましたが、燃料タンクの位置をリヤシート下からトランクルーム下へ移し重量配分を最適化。スポーツカーらしいこだわりを随所に配置したことで、その走行ポテンシャルを先代モデルからさらに昇華させました。
ワイドトレッド&ショートホイールベースのフォルムも現行モデルに取り入れられたスポーツカーらしいもの。
余談となりますが開発時、ドイツのニュルブルクリンクでテスト走行を行ったのは80型スープラがトヨタでは初のモデルです。
同車は1994年、さらに1996年にマイナーチェンジを実施。1996年のマイナーチェンジではヘッドライト、フロントバンパーの造形、サイドマーカーの位置など変更する意匠チェンジも行われています。
しかし、主要マーケットとなる北米市場での販売は低迷。国内では排出ガス規制が強化(平成12年自動車排出ガス規制)される影響やスポーツカー離れが進んだこともあり2002年に販売を終了。現行モデルの登場まで、スープラの名はトヨタのラインアップから消えることとなりました。
80スープラの特徴
アグレッシブなエクステリアデザイン
モデルチェンジでボディが大型化するなか、80型の全長は歴代モデルで一番短い4520mm。先代と比べ100mm短縮されています。
ただ、全幅は1810mmへと拡大。5ナンバーサイズ車を有していた先代と比べワイドで筋肉質のフォルムへ生まれ変わりました。
アグレッシブでマッチョなデザインとなった80型は前後フェンダーや面と面との繋がりを重視した曲面スタイル。塊(かたまり)を感じるボディともいえます。
ワイドボディにワイドタイヤを装着したことで80型はピュアスポーツカーらしいフォルムを手に入れました。
パワフルな直6エンジンを搭載
スープラのパワーユニットといえば直6エンジンですが、80型に用意されたパワーユニットは2JZ型3リッター直6。先代に用意された2リッター直6エンジンは廃止されています。
エンジンは最高出力225馬力のNAと280馬力のターボを選択でき、トランスミッションは6速&5速MTと4速ATを組み合わせました。
ターボの最高出力は当時の自主規制によるものでしたが、北米仕様は国内仕様より大容量のターボを搭載したことなどにより最高出力は320馬力を発揮しています。
80型のパワーユニットは1997年のマイナーチェンジでターボエンジンに可変タイミングバルブ機構のVVT-iを採用したことで最大トルクが大幅に向上。リヤサスペンションやボディ構造の強化も図られ、より走行性能が高められました。
電子デバイスを廃したサスペンション
80型はシャシーやパワーユニットなど、主要コンポーネントは先代から一新されました。ただ、サスペンション形式は先代同様、四輪ダブルウイッシュボーン式が継承されています。
ダブルウイッシュボーン式のフロントサスペンションはアルミ鍛造のA字型アッパーアームと鉄鍛造のL字型ロワアームを採用したのが特徴。
フロント&リヤともに当時のラグジュアリークーペやスポーツカーの多くに装備されていた電子デバイスを使わず直進安定性や旋回性を高めた足まわりを作りあげました。
また、ボディはエンジンフードをアルミ化するなどで先代から約100kgの軽量化を実現。これは同じプラットフォームを使用する3代目ソアラに比べてグレードにもよりますが約200kg軽く仕立てられていたのです。
歴代スープラを紹介!
初代(40/50型:1978年)
初代スープラは1978年にデビュー。ただ、初代の日本名は「セリカXX(ダブルエックス)」。北米で「XX」とは映画視聴の年齢制限を意味する表記だったことで、北米版はスープラと名付けられたのでした。
4気筒エンジンを搭載していた2代目セリカをベースにホイールベースを130mm延長。ノーズも延長し直列6気筒エンジンを搭載し、内装をラグジュアリーテイストに仕立てました。
パワーユニットは最高出力125馬力を発揮する2リッター直6、および140馬力を発揮する2.6リッター直6エンジンをラインアップ。その後、マイナーチェンジにより2.6リッター直6が最高出力145馬力を発揮する2.8リッター直6エンジンに変更されています。
現行モデルはコテコテのスポーツカーですが、初代スープラは北米市場のニーズに合わせラグジュアリークーペとして仕立てられていたのが特徴といえるでしょう。
2代目(60型:1981年)
リトラクタブルヘッドライトを備えた外観が目を引く2代目スープラは1981年にフルモデルチェンジで登場。国内では初代同様、セリカXXとして販売されました。
シャープなフォルムを採用した2代目は、見た目のイメージより優れた空力性能(CD値0.35)を実現。どちらかというとまだスペシャリティカー寄りではありましたが、トヨタとの関係が深かったロータスが2代目の開発に関わっていたことなどを理由にスポーツカー好きからも注目を集めます。
デビュー時に用意されたエンジンは最高出力125馬力の2リッター直6と170馬力を発揮する2.8リッター直6。その後、2リッター直6SOHCターボと2リッター直6DOHCのNAエンジンを追加し、1983年に行われたマイナーチェンジで2.8リッターエンジンの出力が175馬力まで向上しました。
また、高級クーペのソアラに初めて装備されて話題を集めたデジタルメーターやクルーズコントロール、電子チューナー付きオーディオセット、さらに目的地までの距離を自動で算出し方角などを表示するクルーズナビコン、と最先端機器を装備したことも特徴です。
3代目(70型:1986年)
国内でも海外同様スープラを名乗るようになった3代目。プラットフォームがセリカではなくソアラと共通になったことも特徴です。
トヨタ2000GT以来だという四輪ダブルウイッシュボーンサスの採用やパワーユニットの性能向上などを実現。スペシャリティ路線から本格スポーツカーへとコンセプトを方向転換したことが3代目最大のトピックスといえるでしょう。
デビュー時のパワーユニットは2リッター直6・NAと2リッター直6・DOHCターボ、3リッター直6・DOHCターボの3タイプ。ただ、3リッターエンジン搭載車には2リッターモデルにある5速MTが用意されず4速ATのみとなるなど、走りの2リッターエンジン仕様、豪華な3リッターエンジン仕様と設定されていたようです。
デビュー翌年には3リッターエンジン仕様にMTを追加。同時に海外仕様で採用されていたワイドフェンダーボディも追加され、迫力あるエクステリアデザインを実現しました。
その後、3リッターはすべてワイドフェンダーボディとなり、1988年にはレース車両のベースモデルとなる500台限定の“ターボA”が販売されるなど、スープラの位置づけがピュアスポーツ志向へと変化していきます。
その後、1990年に、3リッターエンジンに代えて280馬力の1JZ-GTEを搭載する2.5GTがラインアップされるなどの変更などが行われ、ピュアスポーツとなった80型にバトンタッチされました。
5代目(DB型:2019年)
80型の販売終了から17年、長い沈黙を経て復活したのが現行スープラ。開発はBMWとの共同で、基本コンポーネントは同車のZ4と共用。搭載するエンジンはBMW製直6エンジン、車両製造はマグナ・シュタイナー(オーストリア)が担うなど、複雑な工程を経て開発・製造されています。
現行型のフォルムは80型に通じるロングノーズ+ショートキャビンのプロポーションにワイドトレッド、絞り込まれたキャビンなどピュアスポーツカーらしいもの。キャビンを絞り込むなど空力にもこだわられたデザインを採用しました。
パワーユニットは2リッター直4ターボエンジンと3リッター直6ターボエンジンでいずれもBMW製の2種類。
B58型3リッターエンジンは最高出力340馬力、最大トルク51.0kg-m。3リッターエンジンは2020年の一部改良により最高出力を387馬力に向上。これはエキゾーストマニホールドの変更やピストン形状を変えたことによるもので、同時にボディ剛性の向上やサスペンションのセッティングも改良されました。
現行モデルはMT仕様に特別仕様車の追加などを行い、現在まで進化が続けられています。
まとめ
国産スポーツカーを引っ張る現行スープラ。歴代スープラの特徴ともいえる直6エンジンとFRレイアウトを継承し開発されましたが、大きな影響を与えているのは80型です。
事実、そのフォルムや「RZ」とのグレード名も80型から引き継いでいるもの。正統派ピュアスポーツとして開発されたのも80型があったからこそ。
排ガス規制などの影響で日産スカイラインGT-R(R34型)やマツダRX-7などとともに生産終了(2002年)となりましたが、偉大なスポーツカーだったのは間違いありません。
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