現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ヤマハ「SR400」は本当に名車だったのか? ~2輪系ライター中村トモヒコの、旧車好き目線で~ Vol.2

ここから本文です

ヤマハ「SR400」は本当に名車だったのか? ~2輪系ライター中村トモヒコの、旧車好き目線で~ Vol.2

掲載 23
ヤマハ「SR400」は本当に名車だったのか? ~2輪系ライター中村トモヒコの、旧車好き目線で~ Vol.2

■ふたつの印象深い出来事

 オーナーが読んだら気を悪くしそうなタイトルをつけてしまいましたが、1978年から43年に渡って生産が続き、多くのライダーから愛されたヤマハ「SR400」「SR500」(以下、SR)は、間違いなく歴史に残る名車です。このモデルが存在しなかったら、少なくとも1980年代以降の日本のバイクシーンは、いまひとつ面白味に欠ける状況になっていたでしょう。

ヤマハSR400を「XT500」に! 往年の名車を再現した「オフローダー」カスタムとは

 なお、「SR400」のファイナルエディションおよびファイナルエディションリミテッドは、2021年1月の発表と同時に注文が殺到し、現在は新車価格の倍以上のプライスタグを掲げる販売店が存在するようです。

 そんなSRに関して、私(筆者:中村友彦)が印象深い出来事としてよく覚えているのは、かつての業界に否定的な意見を述べる先輩ベテランライダーが少なからず存在したこと、そして年齢を重ねることで自分自身の考え方が変化したことです。

 1970年生まれの私は、2輪免許を取得する前からSRに好感を抱いていましたが、レーサーレプリカブームの渦中だった1980年代後半、さすがにSRでは友人知人の乗る4スト4気筒や2ストVツインについていけないだろうと考え、初の中型車にはヤマハのビッグシングルスポーツ「SRX-4」を選びました。

■パンチと軽さは、XT500に及ばない

 まずは否定的な意見の話ですが、かつての業界でSRを嫌っていたベテランの多くは、一方でSRの先祖に当たるトレールバイク「XT500」には好意的でした。

 具体的な話をするなら、基本設計の多くを共有するモデルでも、エンジンのパンチとハンドリングの軽さは「XT500」のほうが格段に上で、それを知っていると、SRはすべての挙動がモッサリしていて物足りなく感じてしまう、と……。

 ちなみにSRが登場した1978年はそういうライダーが多かったようで、専門誌に掲載されたインプレでは、期待ハズレの気配を匂わせる記述をよく見かけました。

 そして私が1995年に2輪メディアの仕事を始めて数年後、SRの初期型と「XT500」の比較試乗を体験したところ、これは確かに、先輩方の言葉には一理があると思いました。端的に言うなら、「XT500」の乗り味はワイルドにしてアグレッシブ(ただし1970年代前半以前に生まれたビッグシングル、BSAの「B44」「B50」系やドゥカティ450などと比較すれば、フレンドリーだったと思います)、穏やかで牧歌的なSRとは完全な別物だったのです。

 もっともそんな体験しても、私の場合はSRに対して否定的な気分になりませんでした。「XT500」と比較すれば、SRに牙を抜かれた感があるのは事実ですが、当時の私は仕事を通して、カスタムによってSRが「XT500」に匹敵する、いや、場合によってはそれ以上のパンチと軽さを獲得できることを知っていたので、ノーマルに異論を述べるのは野暮だと思ったのです。

 でも現実的な話をするなら、まだ20代だった私のSRに対する印象は、“ノーマルはあくまでも素材で、やっぱこのバイクはいじってナンボ”で、以後の十数年間もそれは同様でした。

■ノーマルはノーマルで、全然アリ

 続いては私自身の変化の話です。確か気化器がキャブレターからインジェクションに変更されて数年後、2012年から2013年頃だと思うのですが、久しぶりにSRをじっくり乗り込んだ私は、“ノーマルはノーマルで、全然アリじゃないか?”という気持ちになったのです。“いじってナンボ”から考え方がガラリと変化した理由は、40代になった私が、若い頃ほど刺激を求めなくなったからでしょう。

 いずれにしても、歳を重ねることで同じバイクに対する印象が変わったのは、私にとっては初めてのことで、その経験は以後のインプレ仕事に役立っています。

 そして紆余曲折を経て、ノーマル肯定派になった私は、SRは穏やかで優しくて牧歌的な特性だったからこそ、超ロングセラーになれたんじゃないか……とも感じました。逆に言うなら、「XT500」のワイルドさやアグレッシブさを維持していたら、多くのライダーから支持を集めることはできず、SRはもっと早い段階で姿を消していたのではないでしょうか。もっともこのあたりは、マニアにとっては“何を今さら”の話かもしれませんが、今になって考えると、歴史に残る名車と呼ばれているSRは、私のバイク観に多大な影響を及ぼしたような気がしています。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

トヨタ新型「“4WD”スポーツカー」初公開! “現代版セリカ”な「2ドアクーペ」! 「旧車デザイン」&300馬力「ターボエンジン」採用の「GR86」米に登場
トヨタ新型「“4WD”スポーツカー」初公開! “現代版セリカ”な「2ドアクーペ」! 「旧車デザイン」&300馬力「ターボエンジン」採用の「GR86」米に登場
くるまのニュース
「金田のバイク」でおなじみのSFアニメ「AKIRA」 11月30日にトムス・エンタテインメントが無料配信
「金田のバイク」でおなじみのSFアニメ「AKIRA」 11月30日にトムス・エンタテインメントが無料配信
バイクのニュース
ジャガーが3年前に開発中止した大型SUV「Jペイス」 全長5m強のプロトタイプ、画像で明らかに
ジャガーが3年前に開発中止した大型SUV「Jペイス」 全長5m強のプロトタイプ、画像で明らかに
AUTOCAR JAPAN
寒風吹きすさぶ自動車各社、日産は北米の従業員6%が希望退職、フォードは欧州で4000人削減[新聞ウォッチ]
寒風吹きすさぶ自動車各社、日産は北米の従業員6%が希望退職、フォードは欧州で4000人削減[新聞ウォッチ]
レスポンス
子育てもひと段落したのでスズキ「ジムニー」にVWゴルフから乗り換え…「オープンカントリーR/T」をセットして趣味環境は整いました
子育てもひと段落したのでスズキ「ジムニー」にVWゴルフから乗り換え…「オープンカントリーR/T」をセットして趣味環境は整いました
Auto Messe Web
「最悪の出来事だ……」ヒョンデ、タイトル王手ヌービル苦しめたWRCラリージャパンでのトラブルを謝罪。ターボ関連の疑い
「最悪の出来事だ……」ヒョンデ、タイトル王手ヌービル苦しめたWRCラリージャパンでのトラブルを謝罪。ターボ関連の疑い
motorsport.com 日本版
「すごい衝突事故…」 東富士五湖道路が一時「上下線通行止め!」 ミニバンが「横向き」で“全車線”ふさぐ… 富士吉田で国道も渋滞発生中
「すごい衝突事故…」 東富士五湖道路が一時「上下線通行止め!」 ミニバンが「横向き」で“全車線”ふさぐ… 富士吉田で国道も渋滞発生中
くるまのニュース
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
レスポンス
「アルピーヌA110RGT」が初のヨーロッパラウンド以外となるラリージャパン2024に参戦!
「アルピーヌA110RGT」が初のヨーロッパラウンド以外となるラリージャパン2024に参戦!
LE VOLANT CARSMEET WEB
バイクニュース今週のダイジェスト(11/18~22)
バイクニュース今週のダイジェスト(11/18~22)
バイクブロス
超クラシック! ホンダが新型「ロードスポーツ」発表で反響多数! ロー&ワイドの「旧車デザイン」に「スタイル最高」の声! 女性にも人気らしい新型「GB350 C」が話題に
超クラシック! ホンダが新型「ロードスポーツ」発表で反響多数! ロー&ワイドの「旧車デザイン」に「スタイル最高」の声! 女性にも人気らしい新型「GB350 C」が話題に
くるまのニュース
上質な乗り心地が最高! 軽二輪クラスのスクーター5選
上質な乗り心地が最高! 軽二輪クラスのスクーター5選
バイクのニュース
タイヤに記された「謎の印」の意味とは? 気になる「赤と黄色マーク」の“重要な役割”ってなに? 気づけば消えるけど問題ないのか?
タイヤに記された「謎の印」の意味とは? 気になる「赤と黄色マーク」の“重要な役割”ってなに? 気づけば消えるけど問題ないのか?
くるまのニュース
メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
カー・アンド・ドライバー
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
motorsport.com 日本版
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
くるまのニュース
新車99万円! ダイハツ「“最安”ワゴン」どんな人が買う? イチバン安い「国産乗用車」は装備が十分! 超お手頃な「ミライース」支持するユーザー層とは
新車99万円! ダイハツ「“最安”ワゴン」どんな人が買う? イチバン安い「国産乗用車」は装備が十分! 超お手頃な「ミライース」支持するユーザー層とは
くるまのニュース
2025年は赤・黄・黒の3色 スズキ「V-STROM 250SX」2025年モデル発売
2025年は赤・黄・黒の3色 スズキ「V-STROM 250SX」2025年モデル発売
バイクのニュース

みんなのコメント

23件
  • そもそも名車の定義がはっきりしていない
  • 今まで一部の人以外見向きもしなかったのに、販売完了になったとたんにみんな騒ぎだしましたよね。
    もう30年くらい前、SRは不人気で生産台数を絞っていた時期もありました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村