現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 日産「チェリー」は「和製ミニ」だった!? 「カローラ」や「サニー」の肥大化を横目に「イシゴニス式」FFで小型化を実現

ここから本文です

日産「チェリー」は「和製ミニ」だった!? 「カローラ」や「サニー」の肥大化を横目に「イシゴニス式」FFで小型化を実現

掲載 26
日産「チェリー」は「和製ミニ」だった!? 「カローラ」や「サニー」の肥大化を横目に「イシゴニス式」FFで小型化を実現

モータースポーツでも活躍した1台

 今やコンパクトカーだけでなくアッパーミディアムクラスまで普及した前輪駆動ですが、日産自動車で前輪駆動の先駆けを務めたのは1970年に登場したチェリーでした。そこで今回は名車と呼ばれたチェリーを紹介します。

いまじゃ不可能なデザイナーの個性バリバリの秀作! 大胆デザイン大成功の旧車7選

日産のエントリーモデルで登場した1000ccの前輪駆動

 日産のブランドのひとつ、ダットサンの本格的な戦後モデルとして1955年に登場した110型系が850cc、1957年に登場した後継モデルの210型系が1000ccエンジンを搭載していました。1959年に登場した310型系(初代ブルーバード)では、1000ccに加えて1200ccモデルも登場。次第に1200ccモデルが主流となっていきました。

 そして空白となった1000ccクラスには1966年に初代サニーが登場します。オーソドックスながら軽快なデザインと動力性能、そして高い信頼性で初代サニーは大きな反響を呼びましたが、1970年に登場した2代目では1200ccに排気量が拡大されていました。

 これは1000ccで登場した初代サニーに対して半年遅れで登場し、最強のライバルとなる初代トヨタ・カローラが1100ccでデビュー。「プラス100ccの余裕」をキャッチフレーズにCMを展開し、販売競争でサニーを圧倒したことから、2代目サニーでは1969年に1200ccに排気量を拡大していたカローラに合わせる格好で1200ccエンジンを搭載。『隣のクルマがちいさく見えま~す』と反撃することになりました。

 ちなみに、2代目サニーが登場した当時、まだカローラは初代モデルが現役でしたが、じつは両車はほぼ同サイズ。2代目サニーが登場した3カ月後に登場した2代目カローラは、初代カローラや2代目サニーよりもひとまわり大きくなっていました。

 この辺りから、モデルチェンジのたびにボディやエンジンが大きくなっていく慣例が繰り返されていました。これは日本国内に限らず、世界中のメーカーが繰り返してきた悪しき慣例ですが、いずれにしてもこれでまた日産の、1000ccのエントリーモデルが消えることに。そんな日産のエントリーモデルとして、2代目サニーが登場してから9カ月後の1970年10月に登場したモデルが日産チェリー(初代モデルのE10型)です。

 日産は、旧中島飛行機の流れをくんでいたプリンス自動車工業を1966年に吸収合併していました。この初代チェリーはそもそもプリンス自動車工業で開発が進められていて、日産に吸収合併された後も旧プリンス出身の社員を中心に、旧プリンスの開発拠点である東京都杉並区にあった荻窪事業所で開発が続けられ、1970年の10月に発表・発売されることになりました。

 最大の特徴は日産として初、国産車としても軽乗用車のホンダN360や小型乗用車のスバル1000が採用している程度でまだまだ珍しかった前輪駆動を採用していたこと。それでは初代チェリーのメカニズムを紹介していきましょう。

イシゴニス式の“2階建”でレースでも大活躍

 初代チェリーが搭載していたエンジンは、1966年にデビューした初代サニーが搭載する直列4気筒プッシュロッドのA10型と2代目サニーが搭載していたA12型。排気量は、それぞれ988cc(ボア×ストローク=73.0mmφ×59.0mm。シングルキャブ仕様で最高出力は58ps)と1171cc(ボア×ストローク=73.0mmφ×70.0mm。ツインキャブ仕様で最高出力は80ps)でした。

 前輪駆動とするためのレイアウトは直列4気筒のA10/A12型エンジンを横置きに搭載。トランスミッションとデフを一体化したトランスアクスルをエンジンの下に置く“2階建”の配置としていました。これは1959年にブリティッシュ・モーター・コーポレーションがリリースしたミニ(オースチン・セブン/モーリス・ミニ・マイナー)に初めて採用されていたレイアウトで、最初にデザインしたアレック・イシゴニスに因んで「イシゴニス式」と呼ばれる様式です。

 そして、のちにフィアットのダンテ・ジアコーサがデザインしたエンジンとトランスミッションを一列に置き、そのトランスミッションと一体式のトランスアクスルから左右にドライブシャフトが伸びる、いわゆる「ジアコーサ式」とともに前輪駆動を一般化したエンジン/駆動系レイアウトのひとつです。

 ちなみにイシゴニス式のミニに搭載されたエンジンは、チェリーに搭載されたのと同じA型を名乗っていました。サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット式、リヤがコイルで吊ったトレーリングアーム式で4輪独立懸架を採用。

 ブレーキはフロントにディスク式、リヤにはドラム式を装着していました。ボディのバリエーションは2ドアと4ドア、2タイプのセダンがラインアップされていましたが、一般的な3ボックス・スタイルではなくリヤウインドウを斜めに寝かせてトラックリッドに繋げたファストバック・スタイルを採用しており、とくに2ドア・セダンは2ドア・クーペを名乗ってもよさそうな、スポーティなルックスでした。

 デビューから1年後にはルーフを伸ばしてリヤゲートを備えたクーペが登場。まるでコッペパンのような、数多くのライバルがラインアップしていた“クーペ”とは一線を画したデザインが人気を呼んでいました。

 さらに1973年にはクーペにオーバーフェンダーを装着したホットモデルのX-1Rが追加されています。ちなみに2ドア/4ドア・セダンの全長×全幅は3610mm×1470mm。全長が伸びたクーペでも3715mmでしかなく、オーバーフェンダーで全幅が広げられたX-1Rでも1550mmでしかありませんでした。

 軽自動車をひとまわり大きくしただけのミニはともかく、じわじわと肥大化していったカローラやサニーよりわずかずつでもコンパクトで軽量に収まっていましたから、そのパフォーマンスは着実に引き上げられていました。

 X-1Rが追加設定される前、クーペが登場したころから、日産のワークスドライバーによってチェリー・クーペがレースに登場するようになります。サニーに関してはコンサバな後輪駆動で、プライベーターの参戦が先駆けとなった雰囲気もありましたが、チェリー・クーペはまだまだノウハウが少ない前輪駆動だったために、プライベートなチューナーには手に余るところもあったのでしょう。

 開発はメーカー主導で進められていました。デビュー戦は1971年10月、1300cc以下のツーリングカーにとっては活躍のひのき舞台となっていた富士マイナー・ツーリング(MT)レースでしたが、日産ワークスドライバーの黒澤元治選手のドライブで見事優勝。

 翌1972年の富士MTも開幕から長谷見昌弘、黒澤、北野 元のワークスドライバー3選手が入れ替わりで前年から5連勝を飾り、また耐久レースでは1972年の4月に行われたレース・ド・ニッポン6時間で歳森康師/星野一義組が総合2位でチェッカーを受けています。

 スプリントレースではカローラ/パブリカのトヨタ勢やプライベートのサニーと高バトルを展開するのが常でしたが、とくにウェットコンディションになるとその強さはライバルを一蹴することになっていました。デザイン的には1973年シーズンのワークス車両に施された“火の玉”カラーが印象的で、まだ若手だった長谷見・星野両選手の活躍とともにファンの記憶に刻み込まれています。

こんな記事も読まれています

負傷のハプスブルク、WECスパでの復帰叶わず。グーノンがふたたびアルピーヌA424をドライブへ
負傷のハプスブルク、WECスパでの復帰叶わず。グーノンがふたたびアルピーヌA424をドライブへ
AUTOSPORT web
4児の父「杉浦太陽」、新車で買った「高級ミニバン」初公開! 「すごく乗りやすくて…」全貌を明かし「カッコイイ!」「好感持てる」の声集まる
4児の父「杉浦太陽」、新車で買った「高級ミニバン」初公開! 「すごく乗りやすくて…」全貌を明かし「カッコイイ!」「好感持てる」の声集まる
くるまのニュース
レッドブルF1代表、フェルスタッペンの契約にニューウェイに関する条項はないと明言
レッドブルF1代表、フェルスタッペンの契約にニューウェイに関する条項はないと明言
AUTOSPORT web
世界戦デビューの地でエルラシェールが復活。リンク&コーが週末完全制覇を達成/TCRワールドツアー第2戦
世界戦デビューの地でエルラシェールが復活。リンク&コーが週末完全制覇を達成/TCRワールドツアー第2戦
AUTOSPORT web
リスクはある? サイバーセキュリティ規制、非対応車は「脆弱」なのか 一部地域で販売継続
リスクはある? サイバーセキュリティ規制、非対応車は「脆弱」なのか 一部地域で販売継続
AUTOCAR JAPAN
ロールス・ロイスが考古学調査!? 本社の増築予定地からローマ時代の遺物が出土…地元の小学生が「ジュニア考古学者」になりました
ロールス・ロイスが考古学調査!? 本社の増築予定地からローマ時代の遺物が出土…地元の小学生が「ジュニア考古学者」になりました
Auto Messe Web
アントネッリのF1デビューを早める動き。イモラでサージェントと交代との説は、メルセデスとウイリアムズが否定
アントネッリのF1デビューを早める動き。イモラでサージェントと交代との説は、メルセデスとウイリアムズが否定
AUTOSPORT web
BMW M4 に最強の「CS」、550馬力ツインターボ搭載
BMW M4 に最強の「CS」、550馬力ツインターボ搭載
レスポンス
史上最少僅差0.001秒決着! カイル・ラーソンが「ワイルドなフィニッシュ」で2勝目/NASCAR第12戦
史上最少僅差0.001秒決着! カイル・ラーソンが「ワイルドなフィニッシュ」で2勝目/NASCAR第12戦
AUTOSPORT web
「人とくるまのテクノロジー展」が過去最大規模となって5月22日よりパシフィコ横浜で開催
「人とくるまのテクノロジー展」が過去最大規模となって5月22日よりパシフィコ横浜で開催
Auto Prove
日産の斬新すぎる「商用バン」が凄い! もはや「でんでん虫マシン!?」な“円形ボディ”に熱視線! 人気の絶えない「エスカルゴ」どんなクルマ?
日産の斬新すぎる「商用バン」が凄い! もはや「でんでん虫マシン!?」な“円形ボディ”に熱視線! 人気の絶えない「エスカルゴ」どんなクルマ?
くるまのニュース
軽量安価なFRPより鉄にステンレス! デコトラ乗りのエアロへのこだわりは独特だった!!
軽量安価なFRPより鉄にステンレス! デコトラ乗りのエアロへのこだわりは独特だった!!
WEB CARTOP
遂に来た!新型「フリード」先行公開!上質感ある“エアー”&遊び心溢れる“クロスター”を設定
遂に来た!新型「フリード」先行公開!上質感ある“エアー”&遊び心溢れる“クロスター”を設定
グーネット
新型フリードは「AIR」「CROSSTAR」どっちも主役!
新型フリードは「AIR」「CROSSTAR」どっちも主役!
グーネット
三菱自動車、円安追い風で増収へ 来期には戦略車のグローバル展開予定も
三菱自動車、円安追い風で増収へ 来期には戦略車のグローバル展開予定も
くるまのニュース
トヨタ流の熟成──新型ヤリスハイブリッド試乗記
トヨタ流の熟成──新型ヤリスハイブリッド試乗記
GQ JAPAN
マクラーレン久々の優勝はメルセデスにとってもポジティブなこと? ラッセルも刺激受ける「物事がうまくいけばどうなるかを示している」
マクラーレン久々の優勝はメルセデスにとってもポジティブなこと? ラッセルも刺激受ける「物事がうまくいけばどうなるかを示している」
motorsport.com 日本版
世界初試乗!? ソニー・ホンダのAFEELAに自動車評論家がGT7の中で乗ってみた
世界初試乗!? ソニー・ホンダのAFEELAに自動車評論家がGT7の中で乗ってみた
レスポンス

みんなのコメント

26件
  • 令和だったら後方視界無いで叩かれる運命
  • 構造だけじゃなく外観までミニにそっくりなホンダN360が3年前に発売されているから、
    チェリーが「和製ミニ」を名乗るのは無理があると思うなぁ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

122.7186.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

28.8458.0万円

中古車を検索
サニーの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

122.7186.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

28.8458.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村