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欠点を上回る魅力 アームストロング・シドレー・サファイア236 ライレー・パスファインダー 前編

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欠点を上回る魅力 アームストロング・シドレー・サファイア236 ライレー・パスファインダー 前編

自由でおおらかだった1950年代のクルマ

現代のクルマは、空気力学や環境規制などを理由に均質化の傾向が強い。1950年代は、もっと自由でおおらかだった。今以上に魅力的だと捉える読者もいらっしゃると思う。

【画像】欠点を上回る魅力 サファイア236とパスファインダー 同時代の上級サルーンと比較 全94枚

英国では道を走るクルマは少なく、交通ルールも寛大だった。クルマの運転自体が、特別なことといえた。技術革新は次代の幕開けを告げるような、ワクワクするものだった。われわれの自制を促すものではなく。

人生もシンプルだったと思う。ファストフードやコンビニエンスストアは存在せず、電気自動車は子供のおもちゃだった。国の隅々まで敷設が進む高速道路を走ってみたいと、ドライバーの気持ちをはやらせた。

政府による健康保険制度が新設され、伝染病に対する不安は和らいだ。第二次大戦から10年が経過し、配給制度もなくなった。

オースチンにモーリス、フォード、ルーツといったメーカーの自家用車が、英国の家族を乗せて走り始めていた。世界有数の自動車輸出国として、英国人であることを誇らしく感じさせながら。

ライレー・パスファインダーやアームストロング・シドレー・サファイア236に憧れているような人は、緊縮財政から開放されつつあった。ブルーカラーの年収の3倍近い価格ではあったが、成長を続ける経済と、増加する中産階級を象徴するモデルといえた。

とはいえ、既に70年前のサルーンだ。その体験を現代に良く捉えるか悪く捉えるかは、何に魅力を感じるかによって異なるだろう。

ウーズレー6/90とボディパネルを共有

終戦直後の上級サルーンとして、1945年に登場したのがライレーRMシリーズや、アームストロング・シドレー・ランカスターといったモデルだった。当時の市場は拡大傾向にあった。

その反面、1200ポンドの価格で販売されたライレー・パスファインダーや、1600ポンドのアームストロング・シドレー・サファイア236は伸び悩んだ。選択肢が増え、ローバーP4 90が1100ポンドで購入できた1950年代に、あえて選ぶ人は限られた。

最高速度160km/h以上がうたわれた、洗練されたジャガー2.4が1955年に登場。1340ポンドという価格が、2台のとどめを刺したといってもいい。

1954年から1957年にかけて生産されたパスファインダーは、5152台に留まった。BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)傘下となり、ウーズレー6/90とボディパネルを共有していたため、ダメージは限定的といえたが。

ただしパスファインダーと6/90には、現代の兄弟モデルほど密接な関連性はなかった。前者はロンドンの西のアビンドン、後者はその北にあるカウリーと、生産工場は別。エンジンやインテリアなども別物だった。

6/90が搭載したエンジンは、2.6Lの直列6気筒。ホイールは15インチと1インチ小さい反面、全高は2インチ(約51mm)高く、サイドシルやフェンダーの造形も異なっていた。パスファインダーより、ひと回り大きく見えた。

ドーム型ルーフラインの古びたスタイリング

他方、アームストロング・シドレーにはパートナーが存在しなかった。1955年からの3年間に生産されたサファイアは1406台で、悲劇といえる数字だった。これには、4気筒エンジンの234が803台も含まれている。

最高速度はジャガーに並ぶ160km/h以上が主張され、スポーティな個性が強調されていた。それでも、ドーム型のルーフラインを持つ古びたスタイリングは、支持を集めるのに苦労した。ロンドン自動車ショーでの発表時点から、指摘された事実だった。

同社の上層部は、ジャガーとは異なる市場の反応に、失敗を予見したのかもしれない。サファイア234と236には専用の生産ラインが準備さなかったが、今後を見越した対応だったといえる。

戦時中に、アームストロング・シドレーは航空機用エンジンの生産で事業を拡大。戦後は自動車産業で生き残りをかけ、ひと回り大きいサファイア346とのペアでモデルラインナップを構成する、意欲的な試みではあった。

サファイア234や236には、技術者のW.O.ベントレー氏が1940年代に担当したプロジェクトとの関連性を見いだせる。ブレース材がクロスしたシャシー設計は、寸法を除いてベントレー・スポーツカー・プロトタイプのものに似ていた。

ボックスセクション・シャシーで、充分な最低地上高も得ていた。道路整備が遅れる植民地では、有用な設定だった。

ボディはロールス・ロイス開発のアルミ合金

コイルスプリングにウイッシュボーンという組み合わせのフロント・サスペンションと油圧ドラムブレーキ、リアアクスルなどはサファイア346に通じるもの。だが、ひと回り小さいサイズに合わせて再設計されていた。

ボディパネルにはロールス・ロイスの航空機部門が開発した、ヒドゥミニウムと呼ばれるアルミニウム合金を使用。バルクヘッドやインナーフェンダーにはスチール材を用い、軽量化を図ることでパワーウエイトレシオを改善させる狙いがあった。

ボディシェルの骨格に木材は用いられず、フェンダーはボルトで固定。インテリアには、本皮で仕立てられた346と差別化するように、ビニールレザーが用いられた。

エンジンは2.3Lの直列6気筒で、最高出力は86ps。最高速度は141km/hと、サファイア236はゆったり走るのが得意といえた。

ライレー・パスファインダーの設計を手掛けたのは、BMCでボディとシャシー技術者を務めていた、ジェラルド・パーマー氏。ジャガーMk VIIに伍する高性能サルーンとして1953年に発表され、生産は1954年にスタートしている。

ライレーRMシリーズには正確性で勝るラック・アンド・ピニオン式のステアリングラックが与えられたが、パスファインダーに載ったのは旧式なカム・アンド・ローラー式。当初は、Cシリーズと呼ばれた直列6気筒エンジンが検討されていたためだ。

しかし最終的には、ハイカムが組まれた2.5L直列4気筒エンジンが収まっている。サスペンションは、フロントにトーションバーを備えた独立懸架式を採用した。

この続きは後編にて。

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