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【女性リーダーと業界話】 政治の世界と同じく、世界最下位レベル 自動車業界はなぜ、女性リーダーが少ないのか?

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【女性リーダーと業界話】 政治の世界と同じく、世界最下位レベル 自動車業界はなぜ、女性リーダーが少ないのか?

自動車業界の女性リーダーといえば?

自動車業界の女性リーダーとして、日産自動車副社長の星野朝子氏を思い浮かべる方は少なくないだろう。

【画像】アジア太平洋地域ディレクターとして初の女性を起用したマクラーレン 全94枚

星野氏は1983年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、同年4月に日本債券信用銀行株式会社(~1986年)、89年8月株式会社社会調査研究所の主任研究員から役員理事を務め、2002年4月日産自動車株式会社に入社している。

その後は、執行役員、専務執行役員、常務執行役員を経て2019年5月に副社長に就任。同年6月に執行役副社長に就任し現在に至る。

また、同じ日産自動車の井原慶子氏を思い浮かべた方もいるだろう。井原氏は1997年3月に法政大学経済学部を卒業後、1999年にプロカーレーサ―としてレースデビュー。以来、世界70ヵ国を転戦し、2014年にはWEC世界耐久選手権の表彰台に世界女性初で上った。ル・マンシリーズでは総合優勝を果たし、女性レーサーとして世界最高位を獲得している。

2016年6月には株式会社ソフト99コーポレーション 社外取締役(現職)、2018年6月に日産自動車株式会社社外取締役(現職)に就任している。

同じく2018年6月にはトヨタ自動車も社外取締役に三井住友銀行の工藤禎子常務執行役員を起用しており、自動車メーカーが女性の社外取締役を起用したのはこのお二方が初となる。

他社で目立つ「社外取締役」といえば、2023年6月にスズキの第157回定時株主総会において選定された元マラソンランナーの高橋尚子氏が記憶に新しい。

トヨタとホンダの女性管理職の比率は2~3%!

自動車メーカーに「生え抜き」の女性役員は存在するのだろうか? 国内自動車メーカーで初の「生え抜き」女性役員は2016年4月にホンダが執行役員として起用した鈴木麻子氏である。

同氏は1987年にホンダに入社。アジアでの赴任経験が長く、2014年には中国の合弁会社東風本田汽車有限公司総経理(経営を主管する「社長」にあたる役職)に就任。2021年からはホンダの取締役を務めている。

続く2018年1月、トヨタ自動車が加古慈氏を常務として起用。同氏は奈良女子大を卒業後、1989年に初の女性総合職一期生としてトヨタに入社。2015年にトヨタ初の女性チーフエンジニアとしてレクサス「CT200h」のマイナーチェンジなどを手がけた。

女性の社外取締役も生え抜き役員も、そしてチーフエンジニアも「初」の誕生からまだ10年も経過していない状況だ。それゆえ、女性が役員になったり取締役になったりすると経済メディアがこぞって記事にするほど、自動車業界における女性幹部の存在は非常に珍しい。

日本は2023年のジェンダーギャップ指数が世界146ヵ国中「125位」と低く、G7では最下位である。各社の女性管理職比率はどれくらいなのか。

自動車メーカーが発表している女性の管理職(課長職以上役員のぞく)比率の最新版は以下となる。
・トヨタ:3.7%(2023年)
・ホンダ:2.4%(2023年)
・日産:10.7%(2024年)
・マツダ:4.3%(2024年)
・スズキ:役員2.9% 管理職1.6%(2023年)

「管理職」の比率は想像以上に低い。幹部登用が見込まれる総合職に女性が少ない現状もあるだろう。

1986年改正の男女雇用機会均等法との関係は?

技術職を中心に男性従業員が多い製造業ではとくに女性管理職の割合が低くなる傾向がある。

トヨタの3.7%も衝撃的な低さだが、トヨタグループであるデンソーは1.8%、豊田自動織機1.7%、愛知製鋼が1.0%……。自動車メーカーを含めた国内の大企業製造業における管理職は5.1%(厚生労働省「令和4(2022)年賃金構造基本統計調査」における計算結果)だが、それよりも日本の自動車メーカーは、日産を除いて大幅に低いことがわかる。

それではトヨタのグローバルでの女性比率はどうだろうか。世界のトヨタ47社の状況を集計(コーポレートガバナンス2024年6月公表)したところ、グローバル平均での女性管理職は11%、経営幹部は7%だ。

その中で日本は管理職が3.7%、経営幹部が19%という結果が出ている。管理職3.7%はグローバルのトヨタ全体でもけた違いに低いことがわかる。

自動車業界に限らず、女性管理職、女性経営幹部の少なさが目立つ日本の産業界ではあるが、その根幹にある要因は1986年に施行された男女雇用機会均等法に関わるのではないか。均等法の施行によって性別にかかわらず「総合職」と「一般職」という2つのコースが設定された。幹部を狙えるのは総合職である。

しかし、「雇用機会均等」に関しては日本の経済界からは大きな反発があった。施行してしばらくは募集・採用、配置、昇進などにおける女性社員の扱いは男性と均等であることが「努力義務」とされるにとどまっていた。性別による差別は残ったままで、責任ある仕事に就く前に退職する女性も少なくなかった。

政治の世界も世界最下位レベル。

ところで、業界から少し視点をずらして日本の国会議員の女性比率はどれくらいだろうか?

世界経済フォーラムによる「Global Gender Gap Report 20238)」(世界男女格差報告書2023年版)では、「経済」/「政治」/「教育」/「健康」の4分野14項目のデータをもとに世界146ヵ国の男女格差の現状が指数化されている。

諸外国と比較すると日本は恐ろしく低い。総合順位は146ヵ国中125位! とくに、政治分野は138位と最下位クラスに位置している。日本の国会議員の女性割合は11%で、女性大臣は9.1%。これまで女性の首相が一人も存在しなかったことも低い評価となっている。

日本では1946年に初めての女性国会議員が誕生し、その時は衆議院議員466人中39人で全体の8.4%を占めていた。そして77年後の2023年10月24日現在、衆議院議員465人中女性議員は48人で9.68%である。77年経ってもわずか9人しか増えていない。自動車業界とは一概に比較できないものの、男尊女卑の意識が古くから根付いている状況は共通点が多いように感じる。

ではなぜ、日本の自動車業界には女性リーダー、女性管理職が少ないのか?

それは、自動車業界は政治の世界同様、非常に保守的なバリバリの男性社会であることに大きく関係している。根本的な話だが、自動車関連産業に就職するほどクルマが好きで、将来は自動車企業のトップを目指してやる! という高い志を持った女性は実際、少ない。

筆者も業界35年の中でいろいろな女性にあってきたが、99%男性社会の中で苦労している。長きにわたってセクハラ、下ネタなんでもあり。女子どもの入るスキはない! それが当たり前の業界だったのである。

レースクイーンの存在も日本独特。

バリバリの男性社会はレースの世界でも同様だ。特に日本独特なのが「レースクイーン」(RQ)の存在である。

欧米の主要レースからRQが「女性蔑視だ」という理由で次々と消えていく中、日本では現在も「華を添える」「レースを盛り上げる」存在としてRQは欠かせない。

しかし、2018年にF1が「明らかに現代の社会規範にそぐわない」として「グリッドガール」(=RQのような立場の女性)を廃止したことで、さすがに近年は日本でもRQの存在価値や服装規定に変化がみられつつある。

90年代前半、RQの衣装といえば「ハイレグ」が主流だった。それを最初に禁止にしたのはスーパーGTである(2009年)。近年はできるだけ露出を少なくして健康的な若い女性の美しさをアピールするという観点から衣装もセクシー系→アイドル系に変化している。

セクシーな衣装が激減したのは社会全体の流れもあり、スポンサー企業の意向も大きいと考えられる。RQ専門の雑誌や写真集などもどんどん廃刊になった。

RQのハイレグをいち早く禁止したスーパーGTでは、×レースクイーン → ○レースアンバサダーに名称変更を発表。2024年4月のスーパーGT第1戦から「レースアンバサダー」として韓国人男性モデルが登場している。

日本の自動車業界は「男尊女卑」体質が長く続いて来た。女性の管理職や役員を増やそうという動きは自動車メーカーを中心に積極的にあるようだが、自動車業界=男性社会であるため女性の進出は他の産業界、政財界よりも圧倒的に難しいと感じる。

業界35年の筆者は女だが、自動車業界に女性リーダーが必須か? といわれると……答えに詰まる。

ただひとつ、筆者のライフワークでもある「乗車中の子どもの安全」については自動車メーカーの女性社員、管理職の声がもっともっとクルマ作りやユーザー啓発の場において反映されるべきだと思う。

将来の日本を支える子どもたちの安全を守るうえで、自動車メーカーが「女性目線で」やるべきことはまだたくさんあると感じている。

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みんなのコメント

7件
  • HiDE
    特に自動車分野は他の先端産業にくらべ
    ゴリゴリの機械工学のど真ん中みたいな世界なので、なかなか女性が入ってきにくいってのはあると思う。
    かといって、無理やり女性枠を作って役員に据えてもうまくいかないと思いますし。。。
  • tetsuya
    別に政治や自動車業界から女性が締め出されているわけでもないでしょう。自然とそうなっているだけであって、枠を作ってまで無理やり女性を増やす必要を感じません。業界によっては逆に女性がほとんどのところもありますがそちらは問題視されないのはなぜでしょうか。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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