2019年3月にフルモデルチェンジを行ったアウディA6/A6アバント。新型の5代目では、わずかなサイズアップで大きく居住性を向上させた新しいパッケージングを採用。軽快さと卓越した乗り心地を実現するダイナミックオールステアリング(後輪操舵)も話題となっている。今回は新刊ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」から、最新のA6 45 TFSI クワトロ スポーツを中心とした試乗記をお届けしよう。
日本では2019年3月にセダン/アバントの両ボディが同時に登場
先進的なテクノロジーの積極的な採用とともに、各部の上質な作り込みなどにも定評がある、まさに「プレミアムブランド」に相応しい仕上がりが特徴のさまざまなアウディ車。昨今はSUV系モデルの拡充が著しいラインアップ中にありながらも、前身となるモデル(アウディ100シリーズ)まで含めれば、その起源は実に1960年代にまで遡る歴史ある存在が、4ドアセダンとこのブランドの流儀によりアバントの名称を与えられるステーションワゴンという2タイプのボディで構成される「A6シリーズ」だ。
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1994年に「A6」と命名されてから5代目となるのが、2018年に発表された現行モデル。欧州ではまずセダン、次いでアバントという順番で登場したが、日本では2019年3月に両ボディが同時に発表・発売されて、現在に至っている。
欧州ではFFモデルも設定されるが、日本への導入モデルはアウディが古くから「クワトロ」の名称を用いてプロモーション活動を行ってきた4WDモデルとなる。パワーユニットは最初、3L V型6気筒ターボ付きガソリンエンジンで始まり、2020年1月に今回の主役である2L直列4気筒ターボ付きガソリンエンジン搭載モデルが新たに加わった。
そのモデル名に含まれる「TFSI」という文字が示すように「ターボ付きのガソリン直噴」というのは3L V6ユニットと同様。一方、245psの最高出力と370Nmの最大トルクは、3Lエンジンとの比較でそれぞれ95psと130Nmのマイナスとなる。近年は、モデル名をエンジンが発する出力パフォーマンスに準じて2桁の数字で表すというアウディの流儀によれば、3Lユニット搭載車が「55」、この2Lユニット搭載車は「45」となる。
なお2020年4月2日に日本で発表された最高出力が204psの2L直列4気筒ディーゼルターボエンジン(TDI)モデルになると、その数字は「40」とされる。
実は、そのディーゼルターボエンジンが発する最大トルク値は400Nmで「45」のそれを上回るが、この2桁数字が表す「ヒエラルキー」ではガソリンエンジン搭載モデルが上位となる点に、アウディの市場戦略を理解することができる。
余裕のあるボディサイズと静粛かつ滑らかな走行性能
今回、テストドライブを行った「45」モデルは、セダンの「45 TFSI クワトロ スポーツ」。日本仕様の45モデルはこのグレードと「45 TFSI クワトロ」の2タイプで、47万円高に設定される「クワトロ スポーツ」ではスポーツサスペンションやサイドアシスト、リアのアウディプレセンス、バルコナレザー仕様のフロントスポーツシートなどが標準装備となる。なお試乗車には豊富なオプションアイテムが装着され、サスペンションには電子制御式の可変減衰力ダンパーが、足もとには大径の20インチサイズのホイール&タイヤを備えていた。
フラッグシップであるA8に続いて、アウディのセダンラインアップでは2番目のポジションに位置付けられるA6。すなわち「A8の弟分」的なモデルではあるものの、それでも全長は4.9mを超えて全幅も1.9mに迫るボディサイズは、とくに日本の環境下では「十二分過ぎるほどに堂々たるもの」と言える。
自動車検査証に記載された前軸重の値が1040kgとなる3Lモデルに比べれば70kgほども軽いが、それでも2Lモデルの両フロントタイヤには合計970kgという大荷重が掛かる。さらに4WDシステム搭載ということもあり、両リアタイヤへの荷重も830kgと軽くはない。それゆえ、いかにターボ付きと言えども「オプション装備込みで車重1.8トンの大柄なセダンを、2L直列4気筒のターボエンジンで不足なく走らすことができるのか?」と心配になる人も現れそうである。
しかしそうした不安は、実際にアクセルペダルをひと踏みした段階で、たちまち霧散することとなる。端的に言って、その加速感は多くの人が期待する以上に力強く、かつエンジンの回転フィールも、多くの人が「4気筒」という言葉からイメージする以上に静かで、かつ滑らなものと報告できる仕上がりだからだ。
確かに、3L V型6気筒ターボエンジンを搭載した「55」モデルの印象と直接比較をすれば、そちらの方がより滑らかで上質。そして、より強力な加速感を味わわせてくれるのも事実である。しかしその一方で、もしもそうした比較をすることなく「45」モデルのみを単体で乗ったとすると、おそらく半数ほどの人が「これは6気筒です」と言われたらそのまま信じてしまいそうにも思える。
ちなみに、専用のリチウムイオンバッテリーやスタータージェネレーターによって構成される、いわゆる「マイルドハイブリッド」のテクノロジーを採用し、運転状況によってはクルージング中であってもエンジン停止まで行うことなどで、このモデルが極めて優れた燃費性能の持ち主であることも今回の試乗で確認できた点のひとつ。実際、高速道路上での約1時間に及ぶ連続クルージング時には、ディスプレイ上には約18km/Lという平均燃費が表示されることになった。
245psと370Nmを発するエンジンと車重1.8トンの持ち主としては、言うまでもなく「驚異的」なデータだろう。
もちろん、ターボ付きエンジンを備えるモデルの常として、走行状態によっては自然吸気エンジン車より燃費のデータが大きく変動してしまう可能性は残る。だが「全車種にマイルドハイブリッドシステムを搭載」と銘打って登場した現行型A6が、走り方次第ではとびきりの好燃費を達成させることができるポテンシャルの持ち主であるということは、掛け値なしの事実だと言っていい。
すこぶる上質なセダンという揺るぎのない価値観を実現
ところで、A6セダンの45 TFSI クワトロモデルは、4気筒の2Lターボエンジンとは思えないほどの動力性能の印象のみならず、フットワークの上質さという点でも見るべき点が多いモデルだ。
前述のように、本来の18インチアイテムからすれば2サイズ増しということになるオプションの20インチホイール&タイヤは、見た目で足もとの逞しさを大きくアップさせるといったメリットの一方で、こと乗り味という点ではあまりプラスとなる印象はもたらしていないように思えた。ひとたびサスペンションが動き始めればその動作は滑らかな一方、とくにタイヤ自身で路面の細かな凹凸を包み込む「エンペロープ性」が支配的となる領域では、やはり衝撃が直接的にキャビンへと伝えられる傾向を感じさせられることになったからだ。
それでも、エンジン音が強く封じ込められたことに加え、ロードノイズも低く抑えられたことなども貢献した静粛性の高さもあり、「すこぶる上質なセダンに乗っている」という感覚はヒシヒシと伝わってくる。狭い路地などに入った場合、絶対的に大きなボディサイズは仕方がない一方で、オプション装着されていた「ダイナミックオールホイールステアリング」が実現させる、最小回転半径がわずか5.2m(標準は5.7m)という小回り性の高さにも驚かされることとなった。
いま、セダンやステーションワゴンはどのブランドのモデルであってもSUV人気に押され気味。そんな状態に業を煮やしてか、開発にもさしたる労力は注ぎ込まれず、単に自身のブランド内でかつてからの存在を維持しているだけ……と、そう感じられてしまうモデルも皆無とは言えない。しかしその一方で、世界にはそうした態度とは対極に位置すると思えるモデルも、まだまだ見出すことができる。そしてアウディA6も、もちろんそうしたポジションに身を置く最右翼のモデルと言える存在なのである。(文:河村康彦/新刊ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」より)
アウディ A6 45 TFSI クワトロ スポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4940×1885×1430mm
●ホイールベース:2925mm
●車両重量:1770kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:245ps/5000-6000pm
●最大トルク:370Nm/1600-4300pm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●WLTCモード燃費:11.4km/L
●タイヤサイズ:225/50R18
●車両価格:799万円
■アウディ A6 車両価格(税込み)
A6 45 TFSI クワトロ:752万円
A6 45 TFSI クワトロ スポーツ:799万円
A6 アバント 45 TFSI クワトロ:788万円
A6 アバント 45 TFSI クワトロ スポーツ:835万円
A6 55 TFSI クワトロ ラグジュアリー:1034万円
A6 55 TFSI クワトロ Sライン:1035万円
A6 アバント 55 TFSI クワトロ ラグジュアリー:1070万円
A6 アバント 55 TFSI クワトロ Sライン:1071万円
A6 40 TDI クワトロ:745万円
A6 40 TDI クワトロ スポーツ:792万円
A6 アバント 40 TDI クワトロ:781万円
A6 アバント 40 TDI クワトロ スポーツ:828万円
[ アルバム : アウディA6/A6アバント はオリジナルサイトでご覧ください ]
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「ツ」がスポーと抜けちゃっている?
スポー星