MotoGPは先日、9月に予定されていたカザフスタンGPの中止を発表。代替レースにはミサノ・サーキットでの2戦目を行なうことが決まった。この出来事は、MotoGPがカレンダーの拡大を目指す一方で、そのマネジメントを改善しなくてはならないということを示していると言えるだろう。
カザフスタンのソコル・インターナショナル・サーキットでのMotoGP開催が初めて計画されたのは、2023年。“New circuit, new challenge(新たなサーキット、新たなチャレンジ)”というスローガンのもと、初開催がファン向けにPRされた。
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しかし、結局カザフスタンGPは少なくとも2025年も開催されないことになった。そしてMotoGPを開催しようという冒険に乗り出した幹部の誰も、この”挑戦”の本当の難しさを予見できていなかったと考えられる。
2023年、カザフスタンでの第1回大会は、開催まで2ヵ月というところで、サーキットのホモロゲーション取得が不可能であると判明し、結局2024年6月へと延期された。
しかし今年も、カザフスタンGP開催は厳しいのではないかと当初より言われてきた。サーキットの施設整備や、イベントで必ず求められる医療やスチュワードなどのサービスに欠陥があると3月の時点で噂されていたのだ。
そして5月にはカザフスタンGPの再度延期が発表された。これはあくまでも中央アジアで発生している洪水被害による影響を鑑みたものとされていたが、新たなスケジュールは公表されなかった。
この説明は理解のできるものだった。しかしその一方で、後に今シーズンは開催中止が決まったインドGPについては、理解が難しい説明だっただろう。
インドGPは昨年、多くの関係者がかなりの労力をかけて、なんとか初開催までこぎ着けた。しかし2回目が開催されるかどうかという点に疑問が浮かぶのも明らかだった。
今年のインドGP開催中止の理由は、motorsrport.comの入手した情報では、地元プロモーター側がドルナ・スポーツに対する支払い問題に起因する契約に違反したことだったという。
一方で公式発表では「9月開催が気象条件など運営上の考慮により不適切」という理由が示されており、2025年3月に改めてインドGPを行なう意向が示された。
そしてインドGPの中止で空いた開催枠を埋めるように、延期されていたカザフスタンGPが滑り込んできた……これでMotoGPは全20戦を維できる”はず”だった。
だが結局、9月へ延期されたカザフスタンGPも中止が発表され、代替レースとしてミサノ・サーキットでのエミリア・ロマーニャGPが行なわれることになった。
新型コロナウイルスが猛威を奮っていた時期以来となる、同一サーキットでの(1週間を空けての)2連戦だ。
■カレンダーの混乱が続く“恥ずかしい”MotoGP
今年のMotoGPは結局、アルゼンチンGP、インドGP、カザフスタンGPの3戦が中止ということになった。そしてチャンピオンシップの関係者のほとんどは、こうしたカレンダーの混乱という“恥ずかしい状況”を避けるために、もう少し考える必要があるという認識で一致している。
新大統領による緊縮政策からアルゼンチンGPが中止になるという、予期せぬ出来事などによって、5大陸の転戦が影響を受ける可能性があるのは明らかなことだ。
しかし、拡大を目指すチャンピオンシップとして、インドやカザフスタンでのような事態は許されないものだ。価格以上に変動するカレンダーへの対応によって、物流部門はさらに手一杯となり、ほとんどのチームが混乱に陥ってしまっていることは、言うまでもない。
代替レースとして組み込まれたエミリア・ロマーニャGPの1週間後には、東南アジアのインドネシアでのレースが予定されている。この連戦で、何も物流に問題が起こらず、機材とバイクの詰まったコンテナが無事に到着するかどうか、まだ分からない。
ドルナ・スポーツがどの遠隔地でグランプリを開催するかという選択は目を引くモノだが、インドやカザフスタンでの事例には対処が必要だ。また、ハンガリーに新設されたバラトン・サーキットをリザーブ・サーキットとして指定していながら、何らかの理由でそのコースが使用されないのは、不誠実なことでもある。
今は新型コロナウイルスのパンデミック当初とは異なり、同じコースでのあまり間を空けない2戦目の開催というのは、正当化するのがかなり難しい状況になっている。当然、TV放送の契約も遵守すべきではあるが、内部で発生した問題に対して、より創造的な解決策を模索する必要がある。
MotoGPは、F1を所有するリバティ・メディアによって買収されることになるが、今の状況は何ひとつ良いことではない。既にF1は2024年4月に次シーズンの開催カレンダーを発表しているが、MotoGPは後4ヵ月で今シーズンを終えるというのに、まだ2025年の開催カレンダーが確定していない。リバティ・メディアも、こうした状況には驚いているに違いないはずだ。
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