ビー・エム・ダブリューといっても、昨今はさまざまなモデルがあり、好みはわかれる。「3シリーズ」や「5シリーズ」のようなスポーティセダンが好きなひともいれば、昨今はスポーツ・アクティビティ・ビークル(SAV)と、独自のコンセプトをうたう「Xシリーズ」のファンも多い。そうしたなか、昔から一定のファンを有するのはスポーティクーペ&カブリオレだ。
2019年2月に日本でも販売開始された8シリーズ・カブリオレは、いかにBMWがこのジャンルで卓越しているかを示す、絶好のショーケース・モデルといえる。ちなみに、8シリーズ・カブリオレは、2018年のル・マン24時間レースの会場で発表された8シリーズ・クーペがベースだ。
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今回試乗したモデルは、4.4リッターV型8気筒ターボエンジンに4WDシステムを組み合わせた「BMW M850i xDriveカブリオレ」だった。なお、ほかに3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジン搭載モデルも選べる。
試乗した印象を先に記すと、フルオープンボディの爽快感と、トルクがたっぷりある気持ちよい走り、そして適度なスポーティさが絶妙にブレンドしていた。ほかに類がない完成度で、いちど乗ったら忘れられないみごとな出来だ。
M850i xDriveカブリオレは、4855mmの全長に対し、車高が1345mmに抑えられているゆえ、伸びやかで美しい。そして、長めのエンジン・フードがパワー感を強調する。やや後退しているキャビンは、初代8シリーズや初代6シリーズを想起させるのも魅力だ。
優雅なボディを持つM850i xDriveカブリオレが搭載するエンジンは、なかなか過激である。750Nmもの最大トルクを1800rpmから発生する設定だ。アクセルペダルを介して、ドライバーと車体が一体化したようなハンドリングはBMW的であるものの、ウルトラ・シャープというほどではない。
カミソリのような切れ味を求めるなら「Z4」を選べばよい。それだけにM850i xDriveカブリオレは、快適志向に振られている。軽めのステアリングの操舵感や車体の反応速度、カーブでのロール具合などは、2820mmと長めのホイールベースを持つグランド・ツアラーを意識させる。
もちろん、パワフルなエンジンを搭載するから飛ばせば速い。2000rpmを超えると、中音を中心とした心地よい音が”吠える”のだ。
中間加速はかなり俊敏で、BMWならではとも言うべきスムーズな吹け上がりが運転して気持ちいい。
もちろん低速域でも魅力的だ。ゆったりとした乗り心地によって、なかなか優雅な気分にさせてくれる。いっぽう、高速では車体のフラット感が増す。といっても足まわりが硬すぎるわけでもないので、うまくボディ各所が捩れてショックを吸収しているのだろう。
オープンでの走行は、低めのウィンドシールドごしに空が見える。そういえば、Z4のようなロードスターでは、前を見ているときも空が視界に入るよう設計するのがお約束といわれている。そんなお約束を、M850i xDriveカブリオレにも取り入れているのだ。
しかも、風の巻き込みはすくない。じつに巧妙に、風の流れが設計されているようだ。必要に応じ、リアシート部分にウィンドストップ(はめ込み式の折りたたみ型スクリーン)を装着出来るものの、使う場面はほとんどないかもしれない。
ソフトトップを閉じたドライブも快適だ。ソフトトップを閉じた状態でも、前後サイドウィンドウを下げれば、適度に風が吹き込み気持ちいい。
インテリアは贅沢だ。クオリティの高いレザーやウッドをふんだんに使っているうえ、シフト・レバーはなんとクリスタル製で美しい。
もちろん、贅沢なだけでなく、実用性も高い。広くはないもののリアシートがあるから、いざというときは4人乗れるし、ラゲッジ・ルーム容量もそれなりにある。しかも、リアシートのバックレストを倒せば、ラゲッジ・ルームとつながるのも便利だ。
M850i xDriveカブリオレを運転していると、ドライブの面白さを再発見出来るかもしれない。速度コントロールがうまく出来るパワープラントや、路面の凹凸をていねいにいなすサスペンションシステムがドライブを快適にするうえ、ソフト・トップをおろせば、これまでとは違う景色が見られるからだ。
“徹底的に優雅なカブリオレに仕上げよう”といった開発者の思いを強く感じるM850i xDriveカブリオレは、ドライブの概念を変えてくれそうだ。オープン・カーを所有した経験のない人にぜひ乗って欲しい1台である。
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