2021年3月12日、軽2シーターオープンモデルのホンダS660が、2022年3月をもって生産終了となることがアナウンスされた。さらに3月中には受注終了となり、もう新車を手に入れることはできなくなっている。
また、スポーツカーの灯が一つ消えてしまうことは非常に寂しいことだ。しかし軽自動車のオープンカーはS660だけではない、ダイハツコペンがある。
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エンジンを運転席後方にレイアウトしたアスリート系オープンカーのS660に対して、コペンは軽自動車ながら電動開閉式のメタルトップを採用したラグジュアリー系のオープンカーとキャラクターは異なる。S660の生産終了により、俄然注目が集まるコペンについて一体どのようなモデルなのかをいま一度復習してみたい。
文/萩原文博
写真/ベストカー編集部 ダイハツ
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2014年6月に登場した現行コペン
2021年4月7日に一部改良が行われた。今回の一部改良では、新法規に対応し、より広い後方視界確保のためサイドミラーを拡大。さらにオートライトを新設定するとともに全グレードに標準装備し、安全性を向上させた
新骨格構造「D-Frame」の導入により、骨格だけでスポーツカーにふさわしい剛性を確保した。ルーフのないオープンカーならではの弱点であるねじり剛性は、フロント、サイド、リア、フロアの車両全体を切れ目なくつなぐ構造でカバーしている(赤が補強部位)
2代目となる現行型ダイハツコペンは、2014年6月のフルモデルチェンジにより登場した。コペンは軽自動車の新しい価値を提供するために、開発・生産と営業の両面から新たな取り組みを行ったのが特長だ。
営業面では、ユーザーが自分らしさを表現するためのサポートを展開。「LOVE LOCAL by COPEN」をキーワードにコペン認定ショップの「コペンサイト」を全国の販売店に設置。
そして神奈川県の鎌倉にメーカー直営拠点の「ローカルベース」を開設し、コペンのオープンカーライフを楽しむための情報発信拠点となっている。ここでは、ユーザーと直接コミュニケーションをはかれる場として活用され、様々な要望を商品開発へフィートバックされている。
開発・生産面での特長はコペンのコンセプトである「感動の走行性能」「自分らしさを雹園できるクルマ」の実現を目指して、新骨格構造「D-Frame」を採用。
これはフレーム構造やモノコック構造といった従来の構造にこだわらず、骨格+樹脂外板という新しい価値と形を実現するために、骨格のみでスポーツカーに求められる高い剛性を確保。
フロント~サイド~リア~フロアの車両全体を切れ目なくつなぐ構造を採用し、さらにフロア下のトンネル部やクロスメンバーなどの補強を行うことで、ボディ上下曲げ剛性3倍、ボディねじり剛性を1.5倍に向上させている。さらにサスペションやパワートレーンに専用のチューニングを施すことで、感動の操縦安定性と乗り心地を実現した。
購入後でも着せ替え可能な構造が凄い!
内外装脱着構造のドレスインフォメーションにより、コペンセロからローブへ、ローブからセロへのデザイン変更が可能
ドレスインフォメーションのボディパーツはメーカー希望小売価格で21万100円~38万1700円。別に工賃等の諸費用が必要となる
コペンドレスインフォメーション掲載のホームページはこちら!
自分らしさを表現できるクルマを追求し、内外装脱着構造「DRESS FORMATION(ドレスインフォメーション)」を採用。これはボディの外板を13個の樹脂パーツの集合体と捉えて、クルマは購入後のデザイン変更が難しいというこれまでの固定観念を覆し、購入後でもユーザーの嗜好に合わせたデザインそしてカラーの変更が可能という究極のドレスアップといえる。
また、外観だけでなく、内装も運転席/助手席加飾パネルやオーディオクラスターを変更可能となっている。この「DRESS-FORMATION」は2014年6月に登場したローブと2015年6月に登場したセロで行うことが可能だ。
例えばローブからセロへ行うドレスインフォメーションのフルセットは、ヘッドランプ、フロントバンパー、ボンネットフード、左右フロントフェンダーのフロントパーツ4点と、リアコンビランプ、リアバンパー、トランクフード、左右リアフェンダーのリアパーツ4点セット合計で38万1700円。セロからローブに行うドレスインフォメーションの場合も価格は同じだ。
なお、フロント4点セットのみ、リア4点セットのみの交換も可能でいずれも21万100円(すべて工賃は別)。交換可能な樹脂部品はボルト締め付け構造を採用しており、工具で簡単に脱着することができる。
コペンのボディカラーはモデルによって全8~9色を用意
ルーフのカーボン調塗装「Dラッピング」にはブラック、ワインレッド、シルバーの全3色をラインナップ
そしてボディカラーは全9色。また、ダイハツ独自のラッピング技術として開発された「Dラッピング」を施したカーボン調のルーフは5万5000円となっている。
現行型コペンに搭載されているエンジンは最高出力64ps、最大トルク92Nmを発生する660cc直列3気筒DOHCターボの1種類。組み合わせるトランスミッションは5速MTとマニュアル車感覚でシフト操作が行える7速スーパーアクティブシフト付CVTの2種類。
駆動方式はFFのみで、燃費性能はWLTCモードで18.6~19.2km/Lとなっている。そしてコペンの象徴である電動開閉式のルーフはボタン操作一つで、約20秒で開閉可能。ルーフを開けた状態でもラゲージスペースは確保されている。
現行コペンのグレード構成は?
4つの顔を持つコペン。左から順に、コペンセロ、ローブ、コペンGR SPORT、エクスプレイ
続いては現行型コペンのグレード構成を紹介する。
2014年6月に現行型コペンの先陣を切って登場したのがローブだ。スポーツカーとしての躍動感や流麗さを表現したデザインが特徴で、ボディはダブルスウィーブシルエットと呼ばれる2つのスイーブ(長く緩やかな曲線)のリズミカルな動きにより躍動感と流麗さを表現している。
LEDを採用したクリアランスランプはフェンダートップのキャラクターとフェンダーアーチにかかるV時形状で配置し、夜間でもひと目でコペンとわかる特徴的なグラッフィックを実現。現在プジョーが縦に延びるデイライトを採用しているが、コペンローブのほうがひと足先に採用していたのだ。
同年11月にはコペン2つ目の意匠となるコペン エクスプレイが登場。「タフ&アグレッシブ」をコンセプトとした内外装のデザインが特徴で、外観はスポーツカーシルエットとタフでアグレッシブなテイストを融合。ウェッジチューブシルエットに力強さを想起させるホイルフレア造形を追加。
多面体ボディと多角形グリルによって新ジャンルのスポーツカーを表現している。内装はブラックを基調として、インパネはセンタークラスターの骨格をインパネ上部まで張り出した「クロスフレーム」とすることで、タフでアグレッシブな斬新さを表現している。
翌12月にはローブの上級グレード「ローブS」を設定。このモデルはコペンローブをベースに、初代コペンに設定されたアルティメットエディション同様、スポーツプレミアムブランドのパーツを装着し、さらなる操舵の正確性向上とより引き締まった上質な乗り心地の両立を図ったグレードだ。
足回りにはダイレクト感あふれるハンドリング、操縦安定性とフラットな乗り心地を追求した専用設計のビルシュタイン製ショックアブソーバーを採用。内装には手触りと意匠にこだわり、スウェード調生地を使用したレカロシートを標準装備。さらにコペン専用デザインのBBS製鍛造16インチアルミホイールをオプションで用意している。
丸目のセロが2015年6月に登場
コペン登場から約1年後、2015年6月に追加されたコペンセロ。丸型のヘッドライトが先代コペンの面影を連想させる
2015年6月には、コペン第3の意匠となるコペンセロを追加。デザインコンセプトは「フレンドリー&ダイナミックエボリューション」で、初代コペンのDNAを受け継いだ丸型ヘッドライトを採用。親しみやすさと躍動感の融合をコンセプトに流れる雫をイメージした「フローイングドロップシルエット」を採用している。
インパネは、水平に延びる個価格をイメージした「ストレートフレーム」を採用し、スポーティなイメージを追求。さらに自発光式3眼メーターはセロ専用のシルバーリング付ブラック盤面となっている。
セロの特徴である丸型ヘッドランプには1つの光源でハイビームとロービームの切り替えが可能なBi-Angle LEDヘッドライトを当時軽自動車で初めて採用した。
このタイミングで、エクスプレイの上級モデル、エクスプレイSを設定。装備はローブSと同様となっている。そして同年12月にコペンセロの上級モデル、セロSを追加した。ほかのSモデルと装着される装備は同じだが、セロSにはレッドインテリアパックが専用設定されている。
トヨタとのコラボモデル、GRコペンが2019年10月登場
2019年10月に発売されたコペンGR SPORT。ダイハツが主な開発を担当し、トヨタにOEM供給している
専用のレカロシートとメーターのほか、新車としては今時珍しくMOMO製ステアリングを採用
しばらく、ニースのなかったコペンだが、2019年10月にはコペン第4のモデル、GR SPORTを追加した。GR SPORTは既存モデルに対して、ボディ剛性を一層高めるため、アンダーボディに補強材の追加や形状変更を施したことで、ボディのねじれを抑制し、安定感あるフラットな乗り心地を実現。
さらに足回りの最適化や空力を向上させるパーツの採用によって品高菜動きと安定性を向上させている。また、フロントフェイスにはトヨタGRシリーズのアイコンである「Functional MATRIX」グリルを採用。インテリアでは専用のレカロシートやメーターなどを採用し上質な雰囲気を漂わせている。
ローブ、エクスプレイ、セロの上級モデルであるSグレードに対して、GR SPORTはスポーティでありながら気持ち良く走れる上質なスポーツカーという新しい価値観を提供しており、グレードのキャラクターがハッキリと分けられている。
一番人気のグレードはセロ!
2002年~2012年まで販売された初代コペンの生産台数は約6万6000台。一方の2014年に登場した2代目コペンの生産台数は2020年までの6年間で約3万2000台と初代と変わらぬ販売台数を記録している。
グレード構成はメーカーが数字を開示していないため、ハッキリとした数字は出せなかったが、2015年12月のコペンセロSが登場した時のプレスインフォメーションにはセロが、当時の販売台数の約5割を占めているという記述があった。
そして2020年のデータを見てみると、やはりセロが最も人気が高く、次いでGR SPORT、そしてローブという順番となっている。コペンといえば初代譲りの丸目のヘッドライト!というユーザーが多いようだ。そしてより走りに磨きを掛けたGR SPORTの人気が高いのはS660が生産終了となったことによる影響というには早すぎるかもしれない。
ホンダS660とともに軽オープンカーの両雄を担ってきたコペンだが、GR SPORTの剛性の上がったボディによる切れ味鋭い走りは魅力的。
2014年の販売開始から、初めて2021年4月に一部改良を行い、新法規に対応させるために大型化したサイドミラーの装着。そしてオートライト機能を全グレードに標準装備するなど安全性を向上させている。これでしばらくの間は、軽オープンカーの灯は消えずに済みそうだ。
ダイハツコペンとホンダS660の主要諸元比較表
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