現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【苦境でも「走り」は世界に勝ってる?】名門国産セダンはドイツ勢に劣っているか

ここから本文です

【苦境でも「走り」は世界に勝ってる?】名門国産セダンはドイツ勢に劣っているか

掲載 更新
【苦境でも「走り」は世界に勝ってる?】名門国産セダンはドイツ勢に劣っているか

 日本車は走りの面でドイツ車に追い付け追い越せで開発を続けてきた。そのため日本車はドイツ車の走りのトレンドに大きく影響されてきた。そのいっぽうで、ドイツ車以上にドイツ車っぽい乗り味の日本車というものも存在している。

 日本のセダンもその例にもれず、高いスタビリティ、コーナリングパフォーマンス、足回りの味付けなどドイツ車を規範にしているモデルが多い。

【海外では魅力的なセダンを販売】日産はなぜ「日本のセダン市場」を見限ったのか?

 現在販売面で苦戦し存在意義すら問われるようになった日本のセダンだが、松田秀士氏が日本の名門セダン、日産スカイライン、ホンダアコードハイブリッド、マツダアテンザセダンをドイツ車と比較して、その走りの実力を検証する。

文:松田秀士/写真:NISSAN、HONDA、MERCEDES-BENZ、平野学、ベストカー編集部

日産スカイライン

【日産スカイライン200GT-t タイプP】
2014年6月追加登場(2017年2月マイチェン)
全長×全幅×全高:4815×1820×1450mm、車両重量:1690kg、直4DOHCターボ、1991cc、211ps/35.7kgm、価格:443万3400円

【メルセデスベンツC180アバンギャルド】
2014年7月日本販売開始(2018年7月ビッグマイチェン)
全長×全幅×全高:4690×1810×1445mm、車両重量:1490kg、直4DOHCターボ、1595cc、156ps/25.5kgm、価格:489万円

スカイラインはハイブリッドとターボではキャラクターがまったく違う。元気がいいのは2Lターボでかなり速くて気持ちいい走りに仕上げられている

 日本のスポーツセダンの代表的な存在だったスカイライン。“だった”と過去形で表現しなければいけないのがさみしいが、現状の存在感を考えると致し方ない部分もある。

 現行モデルのスカイラインは、3.5L、V6+モーターのハイブリッドとメルセデス製2Lダウンサイジングターボ(型式は274A)を搭載するモデルの構成で、スポーティに味付けがされているのは2Lターボモデル(211ps/35.7kgm)だ。

 メルセデス製2Lターボはパンチ力もあり鋭い加速を見せ速いし、ロードホールディング性にも優れていてポテンシャルは高い。走りの質感という点では静粛性、ロードノイズも低く抑えられている。

 いっぽうメルセデスベンツC180は274M16という2Lではなく1.6Lターボを搭載(156ps/25.5kgm)。排気量の差もあり絶対的な速さはスカイラインが上。 

日本デビューは2014年だから5年経過しているが、2018年にビッグマイチェン。C180アバンギャルドは高速走行時の安定性を重視しているとは言え乗り味はかなり硬い(写真のモデルは欧州仕様)

 現行Cクラスはフロントサスペンションが先代のストラットからダブルウィッシュボーンに変更になり乗り心地がよくなるかと期待していたがストラット時代と同様に硬いまま。これはバウンシング、ハーシュには多少目をつむっても高速域のハンドリングを重視した結果だと思う。

 しかしC180の場合、乗り味は高いのだがシートやボディなどによりドライバーが不快に感じさせない作りこみをしている点は見逃せない。

 この点が日産及びスカイラインに足りない部分で、走りの実力ではスカイラインは高いレベルにあるが、シートのホールディング性、インパネなどの視認性などのインターフェイス面など総合的に判断するとC180が上となる。

 このクラスのクルマはATの多段化が顕著で、スカイラインの7速に対してC180は9速となっている。デビューはともの2014年だからこの差は大きい。

 スカイラインは素材、味付けとも欧州セダンに負けないものを持っているが、発売後にあまり手を加えてきた印象が薄いのが残念だ。

スカイラインの走りのポテンシャルは高いが、トランスミッション、シート、計器類などにもっとこだわりを持ってほしい。その点は次期モデルに期待

ホンダアコード

【ホンダアコードハイブリッドEX】
2013年6月登場(2016年5月マイチェン)
全長×全幅×全高:4945×1850×1465mm、車両重量:1600kg、直4DOHC+モーター、1993cc、145ps/17.8kgm(エンジン)、184ps/17.8kgm(モーター)、価格:410万円

【メルセデスベンツC200アバンギャルド】
2018年7月日本販売開始
全長×全幅×全高:4690×1810×1425mm、車両重量:1550kg、直4DOHCターボ+モーター、1496cc、184ps/28.6kgm(エンジン)、14ps/16.3kgm(モーター)価格:552万円

アコードのハイブリッドシステムは非常に賢く効率的。低負荷時にはエンジンで発電してモーターで走行。足回りのセッティングもよく走りは快適

 アコードは北米がメインターゲットだが、ハイブリッドのメルセデスC200アバンギャルドと比較してみたい。

 アコードはハイブリッド専用モデルで通常時は2Lエンジン(145ps/17.8kgm)で発電してモーター(184ps/17.8kgm)で走行し、高速域はモーターがエンジンと直結して走るという非常に賢いシステムだ。

 通常時はクルマの造りもしっかりしているので静粛性の高く快適。エンジン、モーターともパワーがあるので加速感もすばらしく不満はない。

 ホンダは足回りのセッティングについて、足を積極的に動かす方向にあるため、ロードホールディング性にも優れているし、荒れた路面なども軽快にいなす。ロングで走ってもドライバーに疲労感を与えないなど実力は高い。

2018年7月のビッグマイチェンで2Lターボからマイルドハイブリッド仕様に変貌を遂げたC200アバンギャルド。同じCクラスでもC180との質感の差は大きい

 対するC200アバンギャルドは、1.5Lターボ(184ps/28.6kgm)にモーター(14ps/16.3kgmを組み合わせたマイルドハイブリッドだ。発進時のガソリンエンジンのトルクの立ち上がりの悪さをモーターでアシストするなど走りの高効率化を実現している。

 走りについていえばスカイラインのライバルとして登場させたC180とは全く別物で、ワンランク上の走りの質感を実現している。

 2013年デビューのアコード、2014年デビューのCクラスとともに新しくはないが、Cクラスは2018年にフルモデルチェンジ並みのマイチェンを行うという最近のメルセデスの慣例により刷新され、マイルドハイブリッドのC200アバンギャルドを追加し、Cクラス自体が6000カ所以上が改良されている。 

 アコードの走りの実力が高いのは事実だ。ただし大きな改良を受けず、ハイブリッドとプラグイン(2016年に消滅)のプラットフォームゆえにトランススペースなどに制約が出ているのもセダンとしての魅力を多少スポイルする要素となっているのは否定できない。

2013年のデビュー時に同時ラインナップがされていたプラグインハイブリッドは2016年に消滅し、クラリティプラグインに引き継がれた

マツダアテンザセダン

【マツダアテンザXDプロアクティブ】
2012年11月登場(2018年5月ビッグマイチェン)
全長×全幅×全高:4865×1840×1450mm、車両重量:1610kg、直4DOHCディーゼルターボ、2188cc、190ps/45.9kgm、価格:336万9600円

【VWパサートTDI】
2018年2月日本販売開始
全長×全幅×全高:4785×1830×1470mm、車両重量:1560kg、直4DOHCディーゼルターボ、1968cc、190ps/40.8kgm、価格:489万9000円

日本のセダンとして走り、質感などトータルでのポテンシャルはトップクラスのアテンザ。2018年のビッグマイチェンの効果は絶大で、ドイツ車をも凌駕する実力を持つ

 アテンザは2018年に外観のイメージは大きく変わらないものの中味はフルモデルチェンジといっていいほどの改良を受けて刷新された。ここでは同じディーゼルエンジンを搭載するVWパサートTDIと比較してみたい。

 アテンザの改良モデルにちょっと乗った時にはあまり感じなかったが、1カ月ほど長期的に乗ってその進化を実感した。

 まずこのクラスのセダンに重要な音、振動が大幅に抑えられていて、ボディの2次振動も少なくなったことが特筆ポイントで走りの質感が大幅にアップしている。

 それからボクがアテンザで最も評価している点のひとつが、ドライバー支援装置のアダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープアシスト(LKA)だ。

 現状ではほとんどのクルマがACCをオンにしないとLKAが立ち上がらないというシステムとなっているなか、マツダはそれぞれを独立してオン/オフできる。

 これにより、多くのクルマが高速道路を走っている時に、割り込まれる→ブレーキを踏む→ACCとLKAの両方がカットされる、となるなかアテンザはACCのみがカットされLKAは残る。これは運転していて安心感につながり、それが無駄に疲れないことにもつながる。

マツダのSKYACTIV-Dは後処理が不要というのがセールスポイント。アテンザもプレミアム性を高めるにはATの多段化など付加価値が必要になってくる

 アテンザに搭載される2.2Lディーゼルターボエンジンは、190ps/45.9kgmというスペックからもわかるとおりトルクフルでパンチ力がある。2000回転で最大トルクを発生するので、発信加速は気持ちよく、どの回転域でも鋭い加速を見せる。

 マツダのディーゼルエンジンは尿素など後処理を必要としないのもいい。

 対するVWパサートTDIは2Lディーゼルターボエンジンは、190ps/40.8kgmをマーク。VWが20年ぶりに日本に導入したディーゼルモデルだ。

 トランスミッションは6速DGSが組み合わされるが、ディーゼルはガソリンエンジンほどのレスポンスがないのでDSGのメリットが生かせていない。さらに、カタログスペックでは40.8kgmだが走っていてそれほどのトルク感はない。 ただし、以前こちらも長期試乗したが燃費はかなり期待できるレベルだ。

パサートTDIの2Lディーゼルターボはアテンザに比肩するスペックだが実際に乗ってみるとそれほど力強さが感じられない。あと、DSGではなくATで乗ってみたい

 乗り心地も硬めでアテンザのほうがポテンシャル、走りの質感とも高い。

 アテンザの走りに関しての実力は日本車でもトップレベルにあり、パサートTDIの走りを凌駕している。

 課題としてはマツダは今後プレミアムメーカーとしての道を進むことを明言しているが、アテンザの場合マイチェンでは無理だったかもしれないが、トランスミッションの多段化など、付加価値が必要になってくると思う。

★     ★     ★

 スカイライン、アコードハイブリッド、アテンザセダンをドイツ車セダンと比較してきたが、3車ともビッグネームであるものの存在感は薄い。しかし、走りのポテンシャルはかなり高いレベルにあるのは事実だ。

 しかしアテンザやCクラスの大幅改良の例を見るまでもなく、クルマはしっかりと手を入れて進化させることが魅力につながること如実に示している。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

283.0419.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8265.0万円

中古車を検索
アテンザセダンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

283.0419.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8265.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村