2020年が初年度シーズンとなるTCR規定ツーリングカーの新シリーズ、TCRデンマークが欧州地域の先陣を切ってこの週末に開幕。FDMユランズリングには16名のレギュラードライバーに1名のスポット参戦、7マニュファクチャラーの車両が一同に介し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに揺れた欧州で開幕の日を迎える。
6月20~21日の週末に先立ち、先週にはおなじくデンマークのシルケボー近郊に位置する開幕の地、FDMユランズリングで多くのドライバー、チームが集結しての公式テストが実施された。
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この初テストで最速を記録したのは、Massive Motorsportのキャスパー・H・ジェンセン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)で、一部オーバルのトラックを活用した短いトラックで1分09秒068をマークした。
直近4年間ではデンマーク国内のDTC(Danish Thundersport Championship)に参戦し、2度のチャンピオンを獲得しているジェンセンに続いたのは、おなじく国内のツーリングカーやスポーツカー耐久で4度のタイトルを経験するマーティン・アンダーセン(ヒュンダイi30 N TCR/Andersen Motorsport)で、このふたりが現時点での開幕戦ウイナー最有力候補に挙げられている。
「この5シーズンほどは毎年おなじ(DTC規定のフォード・マスタング)マシンをドライブしてきたけど、そのシートから新たな車両のコクピットに移り、新鮮なステアリングの感触を得ながら何か新しいことに挑戦する気分は最高だね」と、テスト最速の手応えを得て、意気込みを新たにするジェンセン。
「たしかにこのTCR規定ツーリングカーはDTCのマシンと大きく異なっている。でもそれは許容範囲のうちだし、ある程度の調整を経て戦える状態に持っていけるはずだ」
そして開幕戦を前に急遽シリーズ参戦が決定した元GT経験者のジェイコブ・マティアセンは、2018年にシトロエンDS3カップのタイトル獲得を分かち合ったInsight Racingに復帰。過去数シーズンをSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権で戦い、TCR規定のノウハウを学んできた同チームのクリスチャン・モエ・ソーレンセンとともにアルファロメオ・ジュリエッタTCRをドライブする。
そのマティアセンとおなじく公式テストでタイムシートの上位につけ、初日には3番手を記録した元F1ドライバーのヤン・マグヌッセンは、すでに体制発表済みのとおり若手有望株のニコライ・シルベストとともにLM Racingのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRのステアリングを握る。
「正直に言って、テスト初日は苦戦していてマシンのポテンシャルを最大限に引き出すことができていない状態だった。それでもトップと秒差圏内の3番手を記録できたのは励みになる。このフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRをさらに活用できれば、フロントランナーとして戦うことができるかもしれないね」と、北米では長くコルベット・レーシングのファクトリードライバーも務めたマグヌッセン。
さらにル・マン24時間やELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズでも活躍する女性ドライバーのミシェル・ガッティングが、開幕戦のみのスポットながらマイケル・マルクセン、マイケル・カールセン、ジョニー・ヴァイレら3名とともに、プジョースポールの支援するMarkussen Racingのプジョー308 TCRをドライブすることが決まった。
「そうね、少なくとも今季はこの1戦限りになると思う。テストへの参加が遅れてシェイクダウンは直前になったけれど、それでもこの週末のターゲットは先頭集団でレースを争うことよ」と語った26歳のガッティング。
2019年にル・マン24時間デビューを果たした彼女は、今季に向けIron Lynx teamと契約してELMSへのフル参戦プログラムを確定。2012、2013年シーズンにはDTMドイツ・ツーリングカー選手権のサポートイベントに組み込まれていたフォルクスワーゲン・シロッコのRカップにも参戦しており、このTCR規定ツーリングカーが前輪駆動マシン初体験……というわけではない。
それでも、ここ数シーズンでドライブしてきたフェラーリ488GTEとは「ドライビングの面で感覚的に大きな飛躍が必要」だと続ける。
「これまでプジョーに乗ったことはないけれど、2年間戦ったシロッコのワンメイク・シリーズのことは鮮明に覚えている」と語ったガッティング。
「私がELMSでドライブするフェラーリと比べると、それは明らかに異なる次元の乗り物だと言わざるを得ない。でも、このTCRでのレースを本当に楽しみにしているし、聞くところによると本当に許容範囲が広くてバトル向きのようね」
一方、選手権の有力候補として期待されていたスウェーデンのTPR Motorsportとキャスパー・エルガードのFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRは、チーム側がデンマーク国境を越える際の入国制限や保険の問題を解消できず、開幕戦のグリッドに並ぶことが事実上不可能な情勢に。
またレースの週末は無観客で行われ、ゲストのパドック入場も不可に。チームは各車両に対し、ドライバーと4名のクルーのみ作業要員としての登録が許可されている。
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