現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 事故のときに「国産車は変形」「輸入車は変形しにくい」という噂は都市伝説? 最新の安全への考え方とは

ここから本文です

事故のときに「国産車は変形」「輸入車は変形しにくい」という噂は都市伝説? 最新の安全への考え方とは

掲載 37
事故のときに「国産車は変形」「輸入車は変形しにくい」という噂は都市伝説? 最新の安全への考え方とは

 この記事をまとめると

■先進安全技術の採用などによって交通事故の数や死傷者数は減少傾向にある

ブレーキとアクセルペダルの踏み間違いは高齢者だけの問題じゃない! 「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」がまもなく義務化へ

■最新の国産車と輸入車はどちらもクラッシュテストによるボディの変形は少ない

■国産車が輸入車との事故の際大きく変形するのは重量が関係しているといわれている

 国産メーカーと海外メーカーのクルマ作りの違いとは

 世界中の自動車メーカー&ユーザーの願いは「交通事故がゼロになる」ことだろう。そのために障害物や車両、そして歩行者などを検知して自動的にブレーキをかける衝突被害軽減ブレーキなどの機能は日々進化している。

 それでも衝突してしまうような事故も数多く発生しているわけだが、ボディについても衝突安全性能は向上している。警察庁の発表している交通事故に関する統計においては、死亡交通事故における「状態別死者数」の推移を見ることもできるのだが、自動車乗車中の死亡者を2014年と2024年の上半期(1~6月)で比べると、2014年は689人だったのに対して、2024年は399人となっている。

 前述した先進安全機能などによって、そもそも重大事故が起こりづらくなっているだとか、各種の啓蒙によってシートベルト装着率が高まっているなどの要素もあるが、乗員を守るボディへ進化していることも大きなファクターとして貢献しているはずだ。

 といっても、ボディを強固にすればいいというものではない。ボディが潰れなさすぎると衝撃が乗員へかかってしまうからだ。なので、適度に潰れて衝撃を吸収することが理想といえる。ただし、そうした知識をもっていても、「欧州車は事故の際あまり潰れてなくて国産車は潰れている」という印象をもっている人も少なくないかもしれない。

 はたして欧州車は潰れにくいボディとなっているのだろうか。そして欧州車は国産車より安全性が高いのだろうか。

 最新のクルマは事故による変形が少ない傾向に

 まずは衝突安全性能に関するファクトから確認してみよう。ここでは欧州でも日本でもない中立的な地域ということで、北米・IIHSによる衝突安全試験の結果に着目したい。ちょうど先ごろ、同組織が実施した『ミッドサイズラグジュアリーSUV』における最新テストの結果が報告されている。

 これによると、同クラスにおいて最高水準の安全性能を満たしたことを示す「トップセーフティピックプラス」に認められたのは、日欧の3モデル。具体的にはBMW X5、ボルボXC90、そしてレクサスNXとなっている。

 YouTubeのIIHS公式チャンネルにて、それぞれのクラッシュテストを実施した際の動画が公開されているので、衝突時にボディがどのようになるのかを確認することもできるが、いずれもトップセーフティピックプラスに認定されるだけあって、明らかなキャビンの変形は見られず、クラッシュしたフロント部分の潰れ具合などでもパッと見てわかるような差はない。

 同じような事故がリアルワールドで起きたとして、それを見た一般ドライバーが「欧州車のほうが変形していない」と判断できるとは思えないくらいの違いだ。

 なお、このテストでは後席乗員の保護性能も評価されるため、シートベルトが腹部への攻撃リスクを有していると評価されたNXはA評価であり、X5とXC90が最高レベルのG評価を受けているのと比べると劣っているのは事実だが、それはボディの変形度合いとは違う話だろう。

 この3台の比較だけで結論づけることはできないが、少なくとも技術的に日欧の自動車メーカーで衝突安全ボディに関する技術レベルの違いがあるとは思えない。それでも日本国内で起きた車両同士の衝突事故において、国産車のほうが潰れやすいという印象があるとすれば、どのような違いがあるのだろうか。

 仮説として考えられるのは、車両同士が衝突した場合、物理法則的に「軽いほうが変形しやすい」ことが挙げられよう。

 ご存じのように、日本の自動車市場においては、軽自動車という文字どおりに軽いクルマが多く走っている。軽自動車も単体での衝突安全性能は登録車と同等レベルを実現しているが、車両同士の衝突における変形度合いでいうと、やはり軽いほうが大きくなりがちだ。

 軽自動車のみならず、コンパクトカーと呼ばれるカテゴリーにおいても、中心となるのは国産車であり、高価格帯になる輸入車は中型以上のサイズになりがちだ。そうなると、輸入車vs国産車の事故においては「重い輸入車と軽い国産車」の組み合わせとなる確率が高く、それも輸入車のほうが壊れにくいという印象につながっているかもしれない。

 ただし、重いクルマだからといって攻撃性があるわけではない。クルマ好きであれば『コンパチビリティ(両立性・適合性)』という言葉を聞いたことがあるだろう。簡単にいえば、大きなクルマが小さなクルマにぶつかったときに、大きい側が積極的に潰れることで小さなクルマを守ろうという安全設計思想だ。

 こうした考え方は、日欧ともに進められてきている。とくに欧州では2020年よりコンパチビリティ試験が導入され、大きく重いクルマの加害性を抑えることが求められている。この点においては日欧で変わりないといえる。

 コンパチビリティ思想の成果は、実際のデータとしても確認できる。少々古くなるが、日本国内の交通事故を調査する交通事故総合分析センター(通称:イタルダ)は、重いクルマと軽いクルマの衝突事故における死者数を調査したことがある。

 2001~2007年と2008~2017年の二期にわけて10万台あたりの死者数を調査した結果によると、前期では0.17人だったのに対して、後期では0.13人と減少していたという。これは軽く小さなクルマの安全性能の高まりと、重く大きなクルマのコンパチビリティ性能の向上によるといえるだろう。

 ちなみに、この調査における重いクルマ同士の事故における同死者数は、前期が0.09人、後期は0.05人となっていた。リアルワールドの事故データからすると、重く大きなクルマの安全性能は、軽く小さなクルマより相対的に高いであろうということも確認できる。

こんな記事も読まれています

フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
AUTOSPORT web
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
AUTOSPORT web
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
ベストカーWeb
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
AUTOSPORT web
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
AUTOCAR JAPAN
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
AUTOSPORT web
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
AUTOSPORT web
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
AUTOSPORT web
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
AUTOSPORT web
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
AUTOSPORT web
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
AUTOCAR JAPAN
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
Auto Messe Web
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
AUTOCAR JAPAN
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
レスポンス
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
AUTOSPORT web

みんなのコメント

37件
  • ********
    テスラサイバートラックの事故が良い例でしたね。
    カローラとぶつかって、カローラはフロントが潰れたものの乗員は無傷。
    サイバートラック側は少し凹んだものの乗員がケガ。

    これが全てを物語りますね。
  • dar********
    大昔のアメリカ車は車体が大きくて鉄板が分厚くてとにかく頑丈に出来ていたので、ぶつかってもあまり壊れない感じだったのは確かです。それに比べ日本車は5ナンバーサイズで小さくて鉄板も薄くてぶつかった時はかなり変形していた。しかし時代が変わって「衝突安全性」が重視されるようになり、衝突時にボディーが変形して衝撃を吸収するという考え方になったので最近の車はちょっとぶつかっただけでもかなり変形して修理にカネがかかるようになった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村