■全然スポーツカーじゃないけど…「パっと見スポーティ車」が増えた?
国内新車市場での売れ筋ジャンルは、軽自動車、コンパクトカーやミニバンが過去20年ほど大きな変化なく人気です。
そして、過去5年ほどで急激に存在感を出しているのがSUVジャンルです。ジャンル毎にはこれらのモデルが人気を博していますが、一方でスポーツカージャンルはかつてほどの勢いはありません。
しかし、新車を購入するユーザーの多くは「スポーティ」を重視する傾向は現在も変わっていないようです。いったい、どういうことなのでしょうか。
国産スポーツカーの全盛期は1980年代から1990年代といわれ、各社からさまざまなモデルが登場しました。
トヨタ「スープラ」「セリカ」「MR2」、日産「スカイラインGT-R」「フェアレディZ」、ホンダ「NSX」「シビック」「インテグラ」、マツダ「ロードスター」「RX-7」、三菱「ランサーエボリューション」、スバル「インプレッサ WRX STi」など挙げきれないほどのラインナップです。
しかし、これらの多くのモデルは「平成12年排出ガス規制」により、2002年に生産終了となり、姿を消しました。
その後、スープラとGT-Rは共に復活を果たしていますが、走行・安全・快適などあらゆる機能が向上したことにより、価格帯は大幅に上昇。かつてほど手軽に手に入るスポーツカーではなくなっています。
また、スポーツカーはほかのジャンルと比べて販売台数を稼ぐものではなく、多額の開発費を掛けても中々回収しきれないものでもあり、ブランドイメージをけん引する存在ながら昨今では「選択と集中」といった戦略により、新たなスポーツカーが登場しづらい環境です。
しかし、現在新車の購入を検討するユーザーのなかには、高い走行性能を特徴とするグレードを希望する人や、純正エアロを装着する人など「スポーティさ」を重要視する人は少なくないといいます。
トヨタの販売店スタッフは、次のように話しています。
「最近の傾向では程よい『スポーティさ』を求める人が多い印象です。そのスポーティのなかには、オラオラ顔と呼ばれるようなメッキ加飾も含めます。
最近では、アルファードやルーミーなどが純正モデルでスポーティなメッキ加飾が施され、デザイン面における人気の要因となっています。
また、現行ハリアーは先代モデルよりもスポーティかつスタイリッシュなデザインを採用したことで、これまでとは異なるユーザーを獲得しています。
さらに、スポーティという意味では、トヨタ車の多くに純正エアロパーツとしてラグジュアリー風な『モデリスタ』とスポーティな『TRD』、最近では『GRパーツ』が設定されており、お客さまのカスタムニーズに合わせて提案しています。
そのなかで、アルファードでは新車販売時にモデリスタパーツの装着を希望されるお客さまが一定数おります」
また、アルファードのモデリスタのエアロパーツの購入者は30代から40代が多く、平均年齢は純正モデルに対して10歳近く若返るといいます。さらに、一般的なアフターパーツの装着率は5%を超えるとビジネスとして成功とされますが、アルファード用のエアロキットの装着率は約20%となるなど、ミニバンながらもスポーティなエアロパーツを求めるユーザーは多いようです。
では、日産車のユーザーはどうなのでしょうか。首都圏の販売店スタッフは次のように話しています。
「GT-RやフェアレディZを購入検討される人は本当にスポーツカーに関心がある人がほとんどです。
しかし、日産車には多くのモデルにスポーティな『ニスモ』やラグジュアリーな『オーテック』というブランドが設定されており、マーチやノートといったコンパクトカーにも設定されています。
とくに、先代ノートのニスモ仕様はそれなりに台数も出ていました。しかし、新型ノートに関しては現時点でニスモ仕様に関するアナウンスがないので、先代ノートのオーナーからは『ニスモ仕様は出ないのか』などの問合せを頂いております」
※ ※ ※
実際に、SNS上では「本当はMT車に乗りたいが、家族もいるのでミニバンに乗っている」、「愛車はノーマルヤリスだけど、GRヤリスが欲しかった…」、「家族もあるのでハリアーに乗っているけど、唯一のわがままでモデリスタのエアロを付けた」というような意見が出ており、出来ることならスポーティにしたいという人は現在も一定数いるようです。
■軽自動車でもスポーティを重要視!?
最近の軽自動車では、全長1700mm以上かつ後席スライドドアを備えた「軽スーパーハイトワゴン」が人気です。
人気の背景には、軽自動車の維持費の安さに加えて余裕のある室内空間の居住性、スライドドアの使い勝手が重要視されることが挙げられます。
そうした、日常使いにマッチする以外に人気の軽スーパーハイトワゴンには、スポーティなデザインを採用するホンダ「N-BOX カスタム」、スズキ「スペーシアカスタム」、ダイハツ「タントカスタム」といったカスタム仕様が設定されています。
こうしたカスタム仕様について、ホンダの販売店スタッフは次のように話します。
「N-BOXのカスタム仕様は、ノーマル仕様だと物足りない人やほかの人と被りたくない人などが検討される傾向にあります。
とくに、ホンダ車では純正アクセサリーを扱うホンダアクセスというブランドがあり、スポーティな物から可愛らしい物まで設定されています。
N-BOXは売れているクルマでもあるので、少し変化を付けたい人などは純正アクセサリーを購入されるケースもあります」
※ ※ ※
売れるモデルほど、ほかの人とは被りたくないというニーズから個性を演出するアフターパーツを求める傾向にあるようです。
さらに、本格的な昨今のスポーツカーは、前述のように価格面や使い勝手面において敬遠される傾向にあるため、昨今ではそうした手の届かない人のニーズも合わさることで、よりパっと見スポーティなモデルが増えたといえます。
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