ABB FIAフォーミュラE世界選手権シーズン9の第2戦がサウジアラビア・デルイーヤで開催された。前回の開幕戦ではポルシェ・パワートレインがワン・ツーフィニッシュで、アバランチ・アンドレッティのジェイク・デニスが優勝、2位にタグ・ホイヤー・ポルシェのパスカル・ヴェアラインが2位だったが、このサウジアラビア2連戦の初戦は奇しくも、同じ顔ぶれで順位が入れ替わり、優勝がヴェアライン、2位デニスという結果になった。
サウジアラビア・デルイーヤはストリートコースで開催され、昨年と全く同じレイアウトで開催。全長2.495kmを39周で競う。エントリーは11チーム22名だが、開幕戦でアプトのフラインスがクラッシュのアクシデントで手首を骨折し欠場。代わりに南アフリカ出身でドイツDTMで走るファン・デル・リンデンが初出場した。
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今季からマシンはGen3に代わりタイヤもミシュランからハンコックへと変更。またチームも大幅に代わり、ドライバーの移籍も激しく変更されている。中でも注目はNissanだ。シーズン8まではニッサン・eDamsで参戦し、チーム国籍はフランスだったが、今季シーズン9からは国籍が日本になり、Nissanワークスとして参戦している。ドライバーは2022年まで国内スーパーGTに参戦していたサッシャ・フェネストラズが23号車を駆り、22号車はノーマン・ナトーを起用している。
Nissanのサシャ・フェネストラズ予選
さてサウジアラビア2連戦の初戦は予選を昼間に行ない、決勝レースはナイトレースというスケジュールで行われた。予選フォーマットはほぼシーズン8と同様で、グループ予選をA、Bにわけ各12分間を300kWの出力でタイムを競う。そして上位4台ずつがデュエルスに進む。
デュエルスは1周のみ350kWの出力が使える方式でベスト8、ベスト4、そして決勝という方式でポールポジションを決めている。
そのグループ予選ではA組を新人ジェイク・ヒューズが1分10秒942でトップ通過。ヒューズは今季からフォーミュラEに参戦した28歳で、新人がトップタイムをマークするというこれまでにない順応の速さを見せていた。ちなみにチームはマクラーレンでNissanのパワートレインを採用している。マクラーレンチームはシーズン8までのメルセデスEQチームで、運営をマクラーレンが引き継いでいるチームだ。
そして2番手にマヒンドラへ移籍したオリバー・ローランド、3番手になんとNIOのダニエル・ティクタムが入り、4位にマヒンドラへ移籍したルーカス・ディ・グラッシの4名がグループ予選を通過している。ここではやはり中国のNIOの速さが注目だ。長年フォーミュラEに参戦してきたものの、常に下位グループを走行し戦闘力の低さは否めなかったが、今季は目を見張る速さがある。ティクタムだけでなく、セッテ・カマラも上位を脅かす速さがあり、マシンの性能アップは間違いない。
NIOのダニエル・ティクタムグループB予選ではトップ通過は1分09秒942でジャガーのベテラン、サム・バード。2番手に久しぶりにエンビジョンへ移籍したセバスチャン・ブエミが入った。そして3番手がジャガーのミッチ・エバンス、4番手にマクラーレンのレネ・ラストという4台だ。
これら8台がデュエルスに進出し、準々決勝ではティクタムVSローランドで、はなんとNIOのティクタムが勝ち上がる。そしてディ・グラッシVSヒューズでは新人ヒューズが大ベテランのディ・グラッシを破った。
そしてブエミVSエバンスではブエミが勝ち上がり、バードとラストではバードが勝ち上がった。迎えた準決勝では、ティクタムVSヒューズ、エバンスVSブエミでは、ヒューズとブエミがそれぞれ勝ち上がり、ヒューズは参戦2戦目にしてデュエルス決勝に進出する快進撃を見せた。
がしかし、ファイナルではベテラン、ブエミがポールポジションを獲得。ブエミはなんとシーズン5以来のポールポジションで通算15回目の獲得となった。ちなみに、ブエミはこのレースでフォーミュラE参戦100戦目という記念のレースだった。
この結果、ポールはブエミ、フロントローにヒューズ、3位バード、4位ティクタム、5位ラスト、6位エバンス、7位ディ・グラッシ、8位ローランド、9位ヴェアライン、10位キャシディで、ここまでがポイント圏内の順位となった。
ポールを獲得したセバスチャン・ブエミ決勝
決勝レースはナイトレースになるが、LEDライトで照明されたストリート・サーキットは昼間と変わらぬ明るさで、逆に光の演出ができるメリットが目立つ決勝レースとなった。
オープニングラップ1コーナーはブエミがホールショットを決めたが、後続のダ・コスタ(ポルシェ)が押し出されて壁にヒット。すぐさまSCが導入される展開で始まった。このクラッシュにはローランド(マヒンドラ)も巻き込まれたようでピットに戻っている。
再開されたレースは3周目にバード(ジャガー)がヒューズを抜いてブエミ(エンビジョン/ジャガーPT)、バード、ヒューズ(マクラーレン/NissanPT)の順。バードはその後もスピードがのりブエミを猛プッシュし、7周目にブエミを交わしトップにたった。
11周目、Nissanの23号車サッシャがピットイン。アタックモードを使うためにアクティベートゾーンにアプローチした際、フロントノーズを壊した様子だ。交換をしてすぐにレースに復帰した。また12周目にアプト(マヒンドラPT)のミュラーもピットに入っている。
15周目。トップがバード(ジャガー/ジャガーPT)、2位ブエミ(エンビジョン/ジャガーPT)、3位ヒューズ(マクラーレン/NissanPT)、4位ヴェアライン(ポルシェ/ポルシェPT)、5位ラスト(マクラーレン/NissanPT)、6位デニス(アバランチ・アンドレッティ/ポルシェPT)という順。
18周目、アクティベートゾーンへ飛び込んだヒューズをラストが交わし、新人ヒューズは次第に後退していく。
注目の新人ジェイク・ヒューズ一方、予選9位スタートのヴェアライン(ポルシェ/ポルシェPT)が好調で20周目には3位にまで浮上している。トップはバードで一歩リード。バッテリー残量もほぼ同等の展開となっていた。そのヴェアラインが2位をいくブエミにプッシュを開始。また4位ラスト、5位ヒューズの団子に6位にあがったデニスもプッシュをする。デニスも予選11位からの追い上げだ。
そして24周目にヴェアラインがブエミを交わし2位に。28周目はデニスがヒューズを抜き、キャシディも続く。30周目にはトップをいくバードをヴェアラインが交わしてついにトップにたった。デニスもラストを交わし4位に。ポルシェのパワートレインを搭載する2台が終盤に速さを見せている。
この時ポルシェのヴェアライン、ジャガーのバード、ポルシェPTのデニス、ジャガーPTのブエミという上位4台になった。そして34周目にデニスがバードを交わし、開幕戦の再来で、ポルシェパワートレインのワンツー体制になった。
最後はヴェアライン(ポルシェ/ポルシェ)が優勝、2位にデニス(アバランチ・アンドレッティ/ポルシェPT)、3位バード(ジャガー/ジャガーPT)となり、開幕戦のワンツーが入れ替わった順位となった。
第2戦はヴェアラインが勝利を飾った注目のNissanはサッシャが17位、ナトーが12位でポイント圏外に終わった。また今季速さをみせていた中国のNIOのティクタムが14位、セッテ・カマラも15位、脅威の新人ヒューズも8位に終わった。
また昨年のチャンピオン、ヴァンドーンも今季DSペンスキーに移籍したが、11位フィニッシュ。DSでシリーズチャンピオンを2回獲得しているヴェルニューは7位と健闘。
シーズン9はまだ始まったばかりだが、ここまでみるとポルシェの決勝での速さが光る。エネルギーマネージメントの良さなのか、翌日に開催される第3戦も注目だ。さらにメルセデスEQチームを引き継いだマクラーレンも参戦初年度ながら常にトップ争いを演じ、名門チームらしい活躍を見せている。
開幕戦で3位に入ったマヒンドラのディ・グラッシは今回精彩を欠き13位フィニッシュ。もう一台のローランドも最下位の19位、マヒンドラ・パワートレインつまりZFパワートレインを搭載するアプトも初参戦のファン・デル・ラインが16位といいところがなかった。
今季から参戦するマセラティ(前ヴェンチューリ)も苦戦。ギュンター、モルタラともにグループ予選でクラッシュし、ギュンターは決勝までに修復できず欠場。モルタラも決勝リタイヤとなっている。
第3戦は翌日1月29日に同じディルイーヤのストリートコースで開催される。サクラカラーのニッサンの活躍に期待したい。
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