全方位で能力を高めた2代目レンジャー
2代目へモデルチェンジした高性能ピックアップトラック、フォード・レンジャー・ラプター。ディーゼルエンジンのみのラインナップだった先代と比べて、全方位で能力を高めたようだ。
【画像】2代目へモデルチェンジ フォード・レンジャー・ラプター 競合ピックアップと比較 全110枚
新型ではV6ツインターボ・ガソリンエンジンを獲得し、アクティブエグゾーストも採用。アンサイレンスド・モードへ切り替えれば、排気ガスの浄化装置が機能していたとしても、かなり勇ましいサウンドが奏でられる。
それとは別に、レンジャー・ラプターで興味深いサウンドといえるのが、長いコイルの組まれたサスペンションが発するカチッというクリック音。路面へタイヤがしなやかに追従する仕事ぶりを、微かなノイズで教えてくれる。
北米大陸の砂漠を疾走するようなバハ・スタイルのピックアップトラックは、オーストラリアの荒野で開発が進められた。宙を舞う派手なジャンプにも対応する、可動域の広い足まわりが与えられている。
このカチッという音は、サスペンション・コントロールアームに取り付けられたセンサーが出している。大きくストロークした際、シャシーを統合的に制御するビークル・ダイナミクス・コントローラー(VDC)へ信号が送られるのだ。
つまり、タイヤが浮いた状態だと電子頭脳へ教えているわけ。するとVDCのユニットは、フォックス社のアダプティブダンパーの減衰力を高め、車重約2.5t、全長約5.3mのボディの着地に向けた準備を整える。
オフロードでは能力の高さに圧倒される
サスペンションを思い切り縮ませながら着地すると、速度や重量、慣性などがもたらす巨大なエネルギーは見事に吸収される。不自然にボディが歪むこともなく、リバウンドもほとんど生じない。すべてのストロークを使い切ることが、前提になっている。
「思う存分楽しんで。自分は1日中こんな感じで構わないよ」。と、ワイルドなオーストラリア人に励まされている気分だ。
オフロードでは、このピックアップトラックの能力の高さに圧倒される。新しいレンジャー・ラプターには、2基のロッキングデフとトランスファーギアを備えた、電子制御の本格的な四輪駆動システムが搭載されている。
ラダーフレームで、最低地上高は265mm。巨大なBFグッドリッチのマッドテレイン・タイヤも履いている。
ホイールベースは長いものの、複雑な地形や岩場を巧みに登り降りしていく。有能な足まわりは、オンロードも考えて適度に引き締められているが、タイヤを柔軟に上下させる。
トラクション・コントロールの性能も光る。驚くほどの勾配であっても、想像以上にたやすく走破していた。
一方でフォードといえば、ドライバーズカーのフォーカス STやフィエスタ STをお手頃な価格で提供している自動車メーカーだ。どちらもモデル末期へ向かっているが、レンジャー・ラプターのオンロード性能にも期待したくなる。
公道が最適な居場所だとは感じにくい
だが実際のところ、従来より魅力的なV6エンジンを獲得したとはいえ、アスファルトでドライバーに興奮を誘うロードカーとまではいえない。実際、今回の試乗会で指定されたルートは、殆どがオフロードでもあった。
まず、最高出力が若干乏しい。市場によっては400馬力近くまで開放されるようだが、欧州仕様は排出ガス規制の都合で292psへ制限されている。非力ではないものの、2454kgある車重のおかげで余裕までは感じにくい。
アクセルペダルを踏み込むと、かなりのボリュームのノイズが放たれる。それに伴う加速力は、そこまででもない。
組み合わされる10速ATの仕事ぶりは、メカ任せではさほど印象が良くない。マニュアルモードでドライバー自らギアを選べば直感的に運転できるものの、それでもマッスルカー級に速いわけではない。
そのかわり、乗り心地は素晴らしい。リジッドアクスルを備えたピックアップトラック特有の落ち着かなさは、レンジャー・ラプターでは無縁だ。
フォックス社のアダプティブダンパーは、初期の反応が滑らかで漸進的に動くため、一般道に存在する殆どの不整をフィルタリングするように鎮める。姿勢制御にも優れ、大きなボディでありながら正確にラインを選んでいける。
ステアリングホイールの感触も良いが、スポーツサルーンに乗り慣れたドライバーが満足するほどの、シャシーバランスやグリップは得ていない。サーキット前提のハイエンド・スポーツカーのように、レンジャー・ラプターも公道が最適な居場所だとは感じにくい。
能力を輝かせるには相応の環境が必要
フォードの高性能部門、フォード・パフォーマンスは、バッテリーEVのマスタング・マッハE GTでSUVの走りを追求しようとした。彼らの感心が、レンジャー・ラプターにも広げられれば、面白い仕上がりになるかもしれない。
現代の高性能モデルと同様に、秘めた能力を輝かせるには、相応の環境が必要になることはレンジャー・ラプターでも同様。実際に条件が許せば、本当に驚くほどの豪快な走りを見せつけてくれる。
砂漠のように広大な荒野や、ジャンピングスポットのある放棄された採石場、誰もいない林間のラリーステージなどが近所にあれば理想的だ。しかし、現実的には英国では叶えがたい。
ちなみにCO2の排出量は、V8エンジンを積んだBMW X5 Mよりも多い。最大積載量が1tを超えれば英国では商用車登録が可能になるが、レンジャー・ラプターはそれが難しいようだ。
オフロードでの能力は、驚くべき水準にある。そんな運転を日常的には楽しめないとしても、ワイルドなピックアップトラックを好んで選ぶような人は、何らかの理由を見つけて大金を支払うのだろう。
フォード・レンジャー・ラプター(欧州仕様)のスペック
英国価格:5万8900万ポンド(約977万円)
全長:5381mm
全幅:2028mm
全高:1922mm
最高速度:178km/h
0-100km/h加速:7.9秒
燃費:7.2km/L
CO2排出量:315g/km
車両重量:2454kg
パワートレイン:V型6気筒2956ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/5500rpm
最大トルク:49.9kg-m/2300rpm
ギアボックス:10速オートマティック
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