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【第3回】サイトウサトシのタイヤノハナシ ~トレッドデザインについて深掘りしてみた~

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【第3回】サイトウサトシのタイヤノハナシ ~トレッドデザインについて深掘りしてみた~

当てずっぽうで走るしかないスリックタイヤ

前回、スタッドレスタイヤのトレッドパターンを見ているだけでご飯3杯くらいイケる、なんて書きましたが、そのわりにトレッドデザインへの言及が少なかったので、今回もスタッドレスタイヤのトレッドパターンの話をしてみたいと思います。えっ、もうお腹一杯? まあそう言わずにお付き合いください。

【画像】写真で見るトレッドデザインノハナシ 全5枚

いきなりですが、スタッドレスタイヤにトレッドデザインがないとどうなっちゃうでしょう? つまりスタッドレスタイヤのコンパウンドで作ったスリックタイヤです。

実は私、そういうタイヤに実際に乗ったことがあるのです。

このタイヤは、グリップ性能は高いのですが、ハンドルを切った時の手ごたえに引っかかりがなく、うまく走らせるのに苦労しました。ただ、接地面積は最も広いデザイン(?)なので、グリップ性能は高いわけです。

氷盤路で走ると、なかなか速い旋回スピードを見せてくれます。ただグリップの手応えがほとんどないので、滑り出しの感触はなく、ほぼ……というか完全に予測。このくらいグリップしてくれるんじゃないか、とか、旋回スピードはこんなものだろう、と思える速度で走らせてみる。上手くいくと速い旋回ができるのですが、ちょっとした加減でタイヤが滑り出してしまい、外側に膨らんでいってしまいます。

フッと横Gが抜けるので、滑り出しの瞬間を知ることはできますが、手応えはほとんどありません。グリップは高いけれど、神経質で走りにくいのがスリックタイヤです。

縦も横も単体では溝の効果は物足りない

では縦溝を3本入れるとどうなるでしょう。

縦溝3本のみのトレッドパターンだと、直進状態から左右に握りこぶし1個分の手応えが明瞭になります。路面にタイヤが引っかかるというか、爪を立てるような手応えができ、その手ごたえは握りこぶし1個分ほど感じ取れますが、それ以上に切ると徐々に手応えが薄くなって、その先は手応えがなくなってしまいます。

ちなみにグリップ性能は、溝3本分だけスリックより少なくなります。接地面積溝3本分がはっきり感じられるくらいグリップ性能に違いが現れます。絶対的なグリップ性能はスリックに負けますが、引っ掻きグリップ力が加わるので、手応えがはっきりあるぶん、ハンドルを切り出して旋回に入るのがとても楽になります。

次に試したのは横溝のみのパターン。溝の間隔は接地面に溝が2本~3本かかるくらいのピッチです。

どうなったと思います?

縦溝パターンで感じられた直進から握りこぶし1個分の手応えがなくなってしまったのです。代わりに握りこぶし1個分切ったところから、舵角にして90度くらいまでの手応えが現れたんです。

ハンドルを切り出した時の手応えと引っ掛かりがないので、曲がり出しをスムーズにはやりにくいのですが、ハンドルを深く切ると手応えが現れます。曲がり出しもハンドルを切り足していくと少し手ごたえが出てくるので、前輪が外に逃げていく、いわゆるアンダーステアを出しながら強引に手応えと引っ掛かりを出して旋回に入ることもできます。

つまり横溝だけのパターンだと、ハンドルの切り出しの手応えはないけれど、ハンドルを45度くらい切った先から90度過ぎくらいまでの手応えが出てくるわけです。ハンドルを切った時に手応えがしっかり出てくるので、定常旋回がとてもやりやすいのです。

グリップ性能は、スリックよりも少なく、ほぼ縦溝パターンと同じでした。

氷雪路での決め手はサイプ

次に縦溝+横溝パターンを試してみました。 

まず感じたのは、グリップがずいぶん少なくなったということ。走り出すとかなり明瞭に、絶対的なグリップ性能の低下が感じられました。

けれどもハンドルの手応えは、切り出したところから舵角にして100度過ぎまではっきり感じられるし、タイヤが氷の路面に引っかかる感触が増し、クルマを曲げるところから旋回まで、さらには滑り出した時のコントロール性まで、タイヤが滑っていても氷の路面にエッジが引っかかってグリップを作り出している感覚があり、格段にコントロール性がよくなっているのです。グリップ性能は低いのですが、氷上を自由自在に走ることができる感覚がありました。

最後にスタッドレスタイヤを試してみました。

驚くべきことに、絶対的なグリップ性能はスリックよりも良いのではないかと感じました。

もちろん気のせいではありません。

しかもコントロールしやすいと感じた縦横溝のタイヤよりも断然コントロール性が良くなっているのです。滑り出しが穏やかで、タイヤが滑り出してもちょっとスピードを落とすとスーッとグリップが戻ってくるのです。

ポイントはスタッドレスタイヤに細かく刻まれたサイプ(≒極細溝)にあります。太溝で作られたトレッドブロックを、サイプによってさらに小さく切り刻むことで、柔軟性のあるスタッドレスタイヤのゴムが、グリップの小さな氷の路面でも適度に変形し、グリップ性能を高める働きをするわけです。

剛性が高いブロックは、滑り出しが唐突になりがちです。逆に、剛性が低いと滑り出しが穏やかになります。

もちろんこれは、氷の路面や圧雪路との剛性バランスが取れているとき、ということになります。むやみに剛性を低めれば、反応が鈍くなり操作に対する正確性は低くなります。

……というわけで、縦溝横溝の構成比、あるいは斜め溝の角度、サイプの数や刻まれている角度から、設計者がどんな性能を意図しているのか、なんとなく類推することができるわけです。もちろん実際に走らせたタイヤの印象と違うこともあるわけで、そうなると、その違いはどこから来ているのかを、また探りたくなってしまうのです。

ね、ご飯3杯くらい軽くイケちゃうでしょ?

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