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【麻薬と不正利用 ロータスの関与】デロリアンDMC-12 開発と倒産の裏話 後編

掲載 更新 2
【麻薬と不正利用 ロータスの関与】デロリアンDMC-12 開発と倒産の裏話 後編

コーリン・チャップマンと試作車を運転

text:Richard Bremner(リチャード・ブレンナー)

【画像】デロリアンDMC-12 EV版も 全38枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

マイク・キンバリー ロータスCEO

当時のロータス・カーズは、デロリアンDMC-12の量産モデルの開発検討を依頼された。「夜のアリゾナで、エンジニアリングに関与できるかどうか、コーリン・チャップマンと試作車を運転しました」 と前ロータス社CEOのマイク・キンバリーが思い返す。

「フェニックス試験場での運転は、とても疲れました。サーキットに留めて走らせることも大変でした。車内は暑く息苦しく、基本的な形状としてはクルマでしたが、完成したモデルではありませんでした」

「エンジンは正しいものでしたが、パワー不足。とてもプロトタイプと呼べる状態ではなかったですね。かなり失望しました。自動車試験場という条件は、このクルマには適していないと判断しました。そこで翌日、高速道路を走らせました」

「ところが追い越し車線を走行中、燃料系統で故障しストップ。不名誉にも、警察車両に押して救援してもらったんです」

そんな経験にも関わらず、チャップマンとキンバリーは、ロータスでデロリアンの開発を進めることを決定。しかも、英国政府がジョンZデロリアンとが結んだ条件を満たすには、残り18カ月でクルマを完成させる必要があった。

「当時のロータスには、2つの技術者チームが存在していました。 VARI(真空補助樹脂注入)ボディとバックボーン・シャシーの開発に、382名が関わっています」 と話すキンバリー。

ロータスが望んだ、ガルウイングの不採用

チャップマンとキンバリーは、クルマの基本構造の一部を変更するため、ジョンZデロリアンを説得した。ハンドリングを向上させ、開発も容易にすることが目的だった。

最も強くロータスが望んだ内容は、ガルウイング・ドアを採用しないことだった。「代替案を提案しましたが、話が通じませんでした」 結果、リアエンジンとステンレス製のボデイのスポーツカーが完成した。

一方でキンバリーは、デロリアンの開発期間の短さを強調する。「まったく白紙の状態から、2年2カ月から4カ月の期間で、生産へと移行しています。これは自動車業界としては最速で、今も記録は破られていないと思います」

「プログラムとしては、ロータスにとっては大きな成果にもなりました。今まで目にしたクルマでベストといえるモデルでした。悪くない、妥当なクルマだったと思います」 と言葉を選ぶキンバリー。

「始めは好調でした。ですが1982年には、1台も売ることができませんでした。2度目のオイルショックです。トヨタですら、6億ドル(648億円)も失ったのです。アメリカではガソリンが手に入りませんでした」

しかも、オイルショック以前の1981年の半ばには、ディーラーは充分な新車を用意できずにいた。そこで工場はシフト体制を組んでボディと組み立てを進めていた。

ところが一気に景気は後退。ロータスとデロリアン社との関係も悪化し、1982年の8月には、英国政府からの資金も途絶えたのだった。

トライアンフを用いた2台目の計画

バリー・ウィルズ 購買部門ディレクター/破産管財人責任者

バリー・ウィルズは、デロリアン・モーター・カンパニー創業当初からの従業員。そして最後にデロリアン社を退職した人物でもある。ちなみに彼は、ジョンZデロリアンとわたし、と題した本を出版したばかりだ。

1978年10月に購買部門のディレクターとして入社し、1982年5月には、破産手続きに伴う最高責任者となった。それと前後するように彼は、成功する可能性が高かった、救済計画を立案している。

ウィルズのビジネス計画の1つは、2台目のモデルを投入することだった。ブリティッシュ・レイランド(BL)カーズが、トライアンフTR7とTR8の生産終了を1981年に発表。それを利用し、低コストで2台目を実現する機会が訪れたのだ。

「わたしたちはオースチン・ローバーと、TR7とTR8コンバーチブルの買収に関する協議を進めていました。西ミッドランズの支援も受けていました。2台のクルマを組み合わせることで、デロリアンを救えると考えたのです」 と話すウィルズ。

既存スポーツカーのボディを、低コストに一新したモデルの計画だった。「BLカーズはトライアンフやTRの名称利用は認めなかったため、ジェフリー・ヒーリーの承認を得て、ヒーレー・ブランドに改める計画でした」

事業に対するサッチャー首相との亀裂

「ヒーレー3500にはV8エンジン、ヒーレー2000は2.0Lエンジンが搭載されたでしょう。デロリアン・モーター・カンパニーの名称は、ダンマリー・モーター・カンパニー、DMCへと改名されました」

「この事業には、2000万ポンド(27億円)の資金が必要でした」 多くは投資銀行や、外部の投資家からの資金だったが、北アイルランド庁を通じて政府からも8万ポンド(1080万円)を得た。

「当時のジム・プライアー大臣は計画に協力的でしたが、サッチャーと対立していたトリー・ウェットは異なりました。プライアー大臣は、サッチャー首相と一度、問題をクリアにする必要性を理解していました。

「状況を検討する閣議も開かれず、とてもスピーディに話が進んでいました。しかしサッチャー首相は、DMCが組む英国コンソーシアム計画には資金が不足しているという印象を受け、混乱していたようです」

「首相は、DMCがより多くの資金提供を求めていると勘違いしたのです。プライアー大臣が、首相へのプレゼンテーションに失敗したと聞きました」

「求めていたのは承認だけでしたが、首相はプライアー大臣の質問に耳を傾けることはありませんでした。もっとDMCには仕事に取り組んで欲しいし、もう政府の資金はない、と首相は計画を跳ね返したのです」 

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みんなのコメント

2件
  • 名車って性能だけでは誕生しない。
    性能とスタイリング、そして歴史と逸話
    デロリアンは性能はイマイチですがそれ以外は完璧。
    歴史的価値ある名車だと思います。
  • ※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。


    記事に関してコメントをしているのだから大いに関係しますよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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