期待の48VマイルドHVが日本上陸!
遅ればせながらの電動化戦略、その第一歩であると同時に販売台数底上げの救世主として期待されているトナーレの日本販売がスタートした。
ミドルサイズSUVのアルファロメオ・トナーレに新グレードの「ヴェローチェ」を追加設定
アルファロメオは「2027年に全モデルをBEVにする」と宣言している。現在はハイブリッドを含めた電動化の波に乗り遅れているにもかかわらず、だ。昨今の欧州議会の迷走ぶりを見るにつけBEV化の行く末はどうなることやらといった状況だが、いずれにせよアルファロメオが大胆な戦略を採らなければいけない状態に追い込まれていることは確か。販売台数の落ち込みが激しいのである。だから、思い切ってすべてBEVという発想になる。ジャガーも同じだ。
トナーレは、世界的に人気のコンパクトなクロスオーバーSUV。2019年にコンセプトモデルが発表され、昨年欧州デビュー。約1年が経過して、ようやく日本市場に輸入された。アルファロメオ・ファンにとっては「待たされた!」というのが実感だろう。ちなみにトナーレのネーミングは、ステルヴィオと同様に峠の名称。イタリア北部、スイスとの国境にある「トナーレ峠」に由来する。
ともあれブランド初のハイブリッドモデルである。今後PHEVやBEVのグレードも登場予定だが、まずは前輪駆動の48VマイルドHV(MHEV)が導入された。
パワートレーンは最高出力160ps/最大トルク240Nmを発揮する1.5リッター直4直噴ターボと、20ps/55NmというMHEV用としては比較的高出力な48V電気モーター内蔵の7速DCT、さらには総電力量43.9Vのリチウムイオンバッテリー、BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)を組み合わせたもの。MHEVでありながら低速域、およそ15~20km/hまでは電気モーターが駆動を担当。負荷が大きくなるとエンジンが目覚める。さらに巡航時アクセルオフではコースティングモードになり、BSGがエンジン始動と回生ブレーキを担う。WLTCモード燃費は16.7km/リッターだ。
ベースとなったアーキテクチャーはステランティスグループのスモールワイドプラットフォーム。ブランドイメージに見合ったダイナミック性能を得るべく、専用設計のストラットサスペンションや高剛性シャシー、ワイドトラックといったチューンナップメニューが施された。
全長×全幅×全高4350×1835×1600mmのサイズはステルヴィオよりひと回り小さく、全長と全高はホンダ・ヴェゼルと同等。全高を抑えぎみにデザインしたのがポイントだ。それゆえスタイリングは見るからにスポーツムードがあふれており、個性的な前後デザインと伝統をモチーフにした造形によって、アルファロメオらしい雰囲気に仕上がった。激戦のコンパクトSUV市場にあって存在感を示すに違いない。
デザインには見た目の強いインパクトと、クルマ好きを惹きつける力がある。アルファロメオというブランド名の響きにもよく似合っている。まずはほしくなる造形だ。
あとはダイナミック性能にどこまでアルファロメオを感じられるか、なのだが、評価の分かれ目は、そんなブランドイメージそのものにもあった。
モーターを感じるドライブフィール。エンジンの刺激度アップに期待
正式グレードのヴェローチェとほぼ装備・仕様がオーバーラップするローンチモデル、エディツィオーネ・スペチアーレを借り出した。
走りはモーターフィールが濃厚。初の電動化モデルだけあって、その成果を強くアピールしたかったのだろう。とにかく実用域では、できるだけエンジンを止めてモーターを使おうと涙ぐましいまでの制御だった。それゆえ低速域ではときおり動きにぎこちなさが出る。速度に乗ってからもエンジンを切る(=コースティングに切り替わる)が、その頻度は煩わしいと思うレベルではない。緻密に計算されているように感じた。
ここまでは現代的なハイブリッド車ということで、アルファ・ファンも受け入れざるを得まい。前述した評価の分かれ目は直4エンジンが主役になってからのフィールにあった。
アルファロメオというと、活発なエンジン性能を期待するファンが多い。そういう人からすると、エンジンが掛かってからの刺激は、たとえドライブモードをD(ダイナミック)にしても、+αがほしくなるに違いない。パフォーマンス自体はクラス平均を超えているが、サウンドもフィールも抜きん出てはいない。
元来、アルファロメオのエンジン、とくに4気筒以下は至ってフツウだ。かつてのツインスパークを含め、ちょっと元気なだけの原動機だった。積極的に回してようやく適度な力を発揮するトナーレのパワートレーンは、古きよき時代のアルファロメオっぽい。濃い味付けのV6エンジンに親しんできた比較的新しいアルファ・ファンには物足りないかもしれないが、往年の4気筒コンパクトモデルに慣れたマニアはひざを打つに違いない。そんなエンジンフィールだ。
乗り心地は上々。同じプラットフォームを使った中では最上質だろう。ステルヴィオと同様にキレッキレのハンドリングも他モデルと明確に差別化が図られている。アルファロメオの新時代を告げるトナーレは、今後の成長も楽しみな存在である。
アルファ・トナーレ主要諸元
グレード=エディツィオーネ・スペチアーレ
価格=7DCT 578万円
全長×全幅×全高=4530×1835×1600mm
ホイールベース=2635mm
トレッド=フロント:1580/リア:1580mm
車重=1630kg
エンジン=1468cc直4DOHC16Vターボ(無鉛プレミアム仕様)
最高出力=117kW(160ps)/5750rpm
最大トルク=240Nm(24.5kgm)/1700rpm
モーター最高出力=15kW(20ps)/6000rpm
モーター最大トルク=55Nm(5.6kgm)/1700rpm
WLTCモード燃費=16.7km/リッター(燃料タンク容量55リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:13.2/18.2/17.8 km/リッター)
サスペンション=前後ストラット
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=235/40R20+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.8m
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