現代のクルマはセンサーの塊だ。なかでもフロントバンパーにはアダプティブ・クルコンや駐車支援などに使うセンサーがあれこれ付いている。そんなバンパーを万一ぶつけてしまったら法外な修理費がかかるのでは? 笑えない現実を取材してみた!
文/高根英幸、写真/高根英幸、ベストカーWeb編集部、AdobeStock(トップ画像=kai@AdobeStock)
バンパー擦って100万円ってマジですか!! センサー満載の最新車の修理代がえげつない
■年々高くなるクルマの修理代
フロントバンパーのセンサー例(カローラクロス)。エンブレムの裏にレーダー、バンパー両脇にセンターセンサーとコーナーセンサーが埋め込まれている
最近のクルマは車両価格が高額になった。軽自動車でも200万円を超えるモノが珍しくないし、SUVの上級グレードやハイブリッドなら400万円台が普通という状況。快適装備や燃費向上のための燃焼技術に変速機、電動化技術などを盛り込んでいることもあるが、安全装備の充実ぶりも大きな要因だ。
そして購入時や年間の維持費だけでなく、万が一交通事故を起こしてしまうと、修理代もその分上昇する。
最近のクルマは衝突安全性を高めるためにボディ骨格の衝撃吸収性を高めていて、特に前面衝突ではボディの損傷が大きく、その時点での車両金額によっては簡単に全損扱い(修理金額が車両金額を超えてしまうこと)になってしまう。
そうなると満足な修理が出来ないばかりか、クルマを買い替えようにも資金不足に陥ってしまうことにもなりかねない。
だから自動車保険を契約する際には、通常の対人対物人身障害+車両保険だけでなく、弁護士費用特約や全損特約や車両費用超過特約、全損時諸費用特約などの特約にもしっかり加入し、過失相殺(お互いの過失分を相殺して保険金の支払いを抑えること)によって足りなくならないように自衛することが大事だ。
そこまで被害が大きくなくても、ちょっとした追突事故や自損事故でフロントバンパーを損傷してしまうことは、そう珍しいことではない。
寒波も襲来している昨今、深夜の路面凍結や降雪によってクルマのコントロールを失うと、ゆっくり走っていても衝突まで速度が落ちないから、バンパーはかなりの損傷を受けてしまうこともある。
そもそもバンパーは衝撃を受け止めて吸収する部品だから、キズついたり壊れたりすれば交換できるようになっている。
しかし昨今のクルマの高機能化は、バンパー交換を複雑で高額な作業にしてしまうこともある。というのもバンパーには駐車時などに周囲の障害物との接近を知らせる超音波センサーが組み込まれているものが多いが、それだけでなくミリ波レーダー装置などもバンパーにマウントされるケースが増えているからだ。
ミリ波レーダー装置にもダメージが及べば、当然交換となるので高価となるのは当然だが、ミリ波レーダーには影響のない損傷であっても、バンパーを脱着する作業となればミリ波レーダー装置も脱着する必要がでてくる場合もある。
ADAS(先進運転支援装置)のセンサー類を脱着、交換した場合、エーミングという作業が必要になる。これはセンサーをECUに認識させるキャリブレーション(補正)だけでなく、センサーが正しい位置と向きに取り付けられているか確認して調整するものだ。
センサー類の脱着や交換を行なっても、エーミングをしないで向きや角度に狂いが生じたまま走行させると非常に危険だ。
これまでには急な下り坂から上り坂へと差し掛かったところで前面道路を壁と認識して衝突被害軽減ブレーキが誤作動してしまったり、隣の車線を走っている車両を目の前の車両と誤認識してしまうケースが報告されている。
■修理工場も新たな対応に追われている!
取材にお邪魔した千葉県松戸市のケイ・ボディーサービス
修理する業者の方もクルマの進化に対応する必要に迫られている。クルマの修理は年々複雑化していて、街の整備工場や板金修理業者は資格取得や必要なツールの導入コストといった負担増大で悲鳴を上げている状況なのだ。
そこで東京近郊の千葉県松戸市の板金整備工場、ケイ・ボディーサービスを営む佐々木克文氏に、最近の板金整備事情を訊いてみた。
「これまでは分解整備事業者、いわゆる認証工場の資格を持っていれば車検整備や修理をすることが問題なく出来ていたんですけど、これからは特定整備事業者の資格も取得しなければ、クルマの整備で行える作業が限定的になってしまうんですよ」(佐々木氏、以下同)。
特定整備事業者、正確には自動車特定整備事業者という資格は、まだ耳慣れない読者も多いだろう。
この資格は2020年4月から開始された自動車特定整備制度によって定められたもので、衝突被害軽減ブレーキなどのADAS関連の調整や整備を「電子制御装置の整備」として、整備事業者は必要な作業エリア、ツールや作業者を確保して認証を受ける必要がある。
これはADASを装備しているクルマが対象で、対象車両は自動車メーカーがリストを作成し、国土交通省のHPで公表している。
対象車両では、バンパーの脱着などでADASのセンサーも脱着する必要がある場合、特定整備業者の資格を取得しなければ、この先整備ができなくなってしまう。
現在は平成6年4月1日までの移行期間の経過措置として、分解整備事業者でもバンパーの脱着などは行えるし、ミリ波レーダー装置の脱着もできるが、ミリ波レーダー装置のエーミングに関しては特定整備事業者に依頼する必要がある。
「エーミング自体はディーラーに委託しています。今のところ作業工賃は2万円くらいですね。エーミングツールを揃えるとなると100万円単位で費用がかかるので、ウチでは今のところ導入は考えていません」。
移行期間終了後は特定整備事業者でなければバンパーの脱着すら不可能となり、ディーラーなどの有資格事業者に作業を丸投げするしかない。これはバンパーだけでなく、レーザーセンサーやカメラが備わっているフロントウインドウなども同じことだ。
ケイ・ボディーサービスはすでに特定整備事業者の資格は取得しており、移行期間終了後もバンパー交換やミリ波レーダー装置の脱着なども行えるが、エーミング作業はディーラーなどに外注する方針なのだ。
エーミングには4輪ホイールアライメント装置とADAS関係のエーミングツールが必要だ。自動車メーカーや搭載するセンサーやシステムによってエーミング作業に用いるターゲットや作業手順も異なるため、相当な準備と作業が必要になる。メーカーごとにディーラーに外注した方が効率がいいと考えるのも頷ける。
■電子制御化が進むクルマはスキャンツールが必須に
修理に入庫していたアウディA4。ミリ波レーダーのエーミングが必要で修理費は35万円ほどだとか
2024年10月からは、車検時にADAS関連の検査も行うことになる。これはOBD(車載故障診断装置)ポートを使ってスキャンツールで診断するもので、特定整備事業者は車検前にシステムを点検する必要が出てきた。
普通に車検整備をするにも、最近のクルマはスキャンツールを使って診断しなければ、何もできないようになっている。ケイ・ボディーサービスでも国産車用と輸入車用で2種類のスキャンツールを使い分けて対応しているそうだ。
それでも同店のように家族経営の板金修理工場は、ディーラーに修理を依頼するより安く上がることから、地元以外のユーザーからも修理の依頼が舞い込んでくるようだ。
話を聞きに行った当日も他県ナンバーのアウディA4が、ちょうどバンパー修理に入庫していた。このクルマは超音波センサーだけでなく、フロントグリルのエンブレム部分とバンパーの両サイドにもミリ波レーダーを内蔵しており、ダメージ次第ではミリ波レーダーユニット交換となる可能性もある。
そのA4の場合はバンパー交換とフェンダーの板金塗装で済むようだ。
ただしコーナー部のミリ波レーダー装置は脱着の必要があるのでエーミング作業も必要で、保険会社の見積もりでは修理代金は35万円ほどらしい。佐々木氏によると、最近はこういう修理が増えているそうだ。またミリ波レーダーも交換する場合、国産車でも修理代が100万円を超えてしまうケースもあるらしい。
ドライバーの運転操作ミスなどもカバーしてくれるADASは、重大な交通事故を激減してくれた便利なシステムである一方、避けきれない事故もあり、クルマが損傷を受けたり、経年劣化などでセンサーユニットが故障すれば修理代は跳ね上がることになる。便利な装置にはそれなりの代償が必要なのだ。
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みんなのコメント
さすがにバンパーこすって100万はない。
昔は外品や輸入格安ガラスが使えたが
今はカメラが付いてるので基本純正ガラスでの交換です
昔なら数万円なのに今は20万円を超えてくるのが普通になった
部分補修のリペアもアイサイト等は禁止エリアがあって問答無用で交換となる
バンパーの交換後のエーミングも外車ディーラー等は持ち込みの作業を断ることがあり
町工場は困ってる
安全装備満載で人に優しいかもしれないが財布にはとても厳しい
EV化もあり設備に対応できない町工場は全滅してそのうちディーラーしか残らない