この記事をまとめると
■自宅エリアから離れた新車ディーラーに行くと来店理由を聞かれる
お客様は神様……もほどほどに! やってはいけない新車ディーラーでのNG商談行為3つ
■ディーラーには基本的に担当エリアが決まっているためだ
■いまは情報が共有されているため同系列の近所のディーラー同士を競わせることはできない
自宅から離れたディーラーでも商談は可能だが……
筆者は仕事柄新車ディーラーへひんぱんに足を運ぶ。そして、自宅から離れた距離の店舗を訪れると決まって「なぜこの店へきたのですか?」といったような質問をセールスマンから受ける。このようなことを聞く背景には、多くのディーラーでは店舗ごとに“販売担当地域”というものが存在するためだ。80年代後期辺りまでは、新車販売は飛び込み営業も当たり前となる“訪問販売”が一般的とされていた。そして、とくに飛び込み営業を行う際に、各店舗の“テリトリー”というものを決め、そのエリア内について各々飛び込み営業を行っていたのである。ただし、テリトリー外のお客がお客の事情で店舗を訪れたり、既納客から紹介された場合などについては販売テリトリーの縛りは適用されなかったとも聞いている。
店頭販売が当たり前となったいまでは、仮に販売担当地域が決まっていても形骸化しているともいえ、どこの店舗で商談を行うのかはお客に任されているといっていいだろう。
前述したような質問をセールスマンがしてくる事情としては、他店のセールスマンとすでに商談を進めていないかをチェックするということのほうが大きくなっているようだ。過去にはフリーで来店したお客に、「お客様の自宅ですと、当店は担当地域ではございません」といって商談を断るケースもあったようだ。いまや販売担当地域というのは半ば形骸化しているのだが、“商談の優先権”というものはいまでも存在しているのである。
たとえば都市部では、生活圏内に同じ資本の同じメーカー系ディーラーの店舗が複数存在することが多い。そのような同資本同メーカー系列ディーラーの場合、同時に複数店舗で商談を進め、値引きなど購入条件を競わせることはできないのである。そして最初に商談を始めたセールスマンの商談を進める権利があることになる。このような確認は同資本同メーカー系ディーラーの店舗間では端末上の来店記録で確認することができるので、見積りを作成しに事務スペースへ行った時などに確認していることも多いようだ。
「お客様はすでに弊社他店で商談をされていますので……」と直接断るケースもあるようだが、明らかに購入条件を競わせるために確信犯的に複数店舗を訪れていると判断された場合は、最初に商談を行った店舗の担当セールスマンに連絡して進行状況を確認し、新たに商談を申し込んできた店舗のセールスマンが値引きなどの購入条件を押さえて、最初の店舗の商談に絞り込ませるように仕向けると言ったこともあるようだ。
正当な理由があればすんなり受け入れてくれる
ちなみに南カリフォルニアでは販売テリトリーのようなものは存在しないと聞いている。たとえば軽く日本での“首都圏”と呼ばれる地域に匹敵するような広大なロサンゼルス郡に住んでいれば、ロサンゼルス郡内のどのディーラーでも新車を購入することが可能である。アメリカでは在庫販売が原則であり、商談がまとまればそのまま新車を乗って帰ることができる。そのためディーラーは値引きなどの“特典”を強調しながら、在庫台数の多さも競って宣伝している。購入者も豊富な在庫のなかから好きなモデルを選びたいという気持ちもあるので、自宅から離れたディーラーで希望の在庫があれば買いに行くということも多いようである。
日本では手違いから、同じ店舗ですでにほかのセールスマンと商談中だとか、つきあいが例え薄くとも担当セールスマンが在籍している既納客と同じ店舗の別のセールスマンが商談してしまうと意外なほど大騒動になるとも聞いている。会社組織の一員として業務にあたっているものの、昔ほどではないがセールスマージンが支給される“歩合給”となるセールスマンは基本“一匹オオカミ”の世界。職場の同僚とはいえ、ガチのライバル関係となっているのである。
「なぜ自宅から遠いこの店舗にきたのですか?」と聞かれても、“買い物など日常生活でよく店の前を通るから“とか、“職場が近い”、“最寄り店舗周辺は渋滞もひどいなど意外に不便”、などと正当な理由があり、他店とすでに商談していなければ問題なく受け入れてくれる。すでに商談経験があっても“担当セールスマンとどうも波長が合わないので店を変えたい”といった理由があれば、これも問題ないようである。
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-1970年から来た営業ウルトラマン-