南フランスにひっそりと佇む廃車たち
観光ガイドでは、南仏のプロヴァンス地方はどこまでも広がるラベンダー畑や何kmも続く海岸線を見ることができるロケーションとして紹介されている。
【画像】フランスで見つけた廃車、元の姿は?【ミニやフィアット128、ルノー4などを写真で見る】 全105枚
しかし、マウンテンバイク(またはハイキングシューズ)で人里離れた場所に行ってみると、自動車の歴史に彩られたこの地方の知られざる一面を発見することができるのだ。
秋になると、廃車はシャントレル茸のように旬を迎える。その一つ一つにユニークな物語がある。
今回は、フランスの田園地帯で、ゆっくりと自然に還っていく「隠れた名車(廃車)」の数々を紹介したい。
オースチン・ミニ
1959年から2000年まで製造された初代ミニは、わずか3mの車体に4つのシートと使い勝手の良いトランクを備えており、歴史に残る傑作として広く認識されている。
この個体のオーナーは、車体をもっと短くしたかったのか、それともトーテムポールにしたかったのかはわからないが、とにかく真っ二つに切った車体を積み重ねている。レストアは不可能だが、机やソファなどにすると良さそうだ。
シトロエン2CV
初代ミニやフィアット500など、いわゆる「ピープルズカー(大衆車)」と呼ばれる多くのクルマと同様に、1948年に発売されたシトロエン2CVも、自動車文化の枠を超えた魅力を持つコレクターズアイテムとみなされている。
クルマにあまり興味のない人にも人気があり、2010年代には価値が急上昇した。しかし、1950年代に製造されたとみられるこの個体(バンタイプ)は、あまりに傷みが激しいためか、レストアされることはなかった。ルーフパネルはリベットで固定されており、何十年も森の中に放置され、木も倒れてきている。
ちなみに、サイドウィンドウはオリジナルのものではない。リアウィンドウはオリジナルだが、サイドウィンドウは自動車修理の漠然とした知識しかない人が付けたものである。珍しい仕様(Glacauto)とは異なる。
シトロエン・アミ6
シトロエンは、つつましい2CVと大型で高級なDSの隙間を埋めるため、1961年にアミ6を発表した。すぐにフランスでベストセラーとなったが、当然のことながら、フランスの田舎に最も多く捨てられているクルマの1つでもある。
この個体は、小川にキャブレターの奥まで埋まっていた。形はほぼ保たれているが、事故でフロントが破損して放棄されたようだ。1時間か2時間かけて掘り出さないと、詳細はわからない。
シトロエン・アミ8
2CVと非常に近い関係にありながら、アミ8は最近までほとんど愛されてこなかった。何千台も乗り潰され、フラットツインエンジンのために部品を取られた後、鶏小屋にされたり、この個体のようにただ山の斜面に突き落とされたりしている。
アミ8はどちらかというと存在感が薄いため、クラシック・シトロエンとしては比較的安価ではあるが、この個体に乗るには大金がかかりそうだ。
シトロエンGSA
マルセイユの郊外にひっそりとたたずむこのシトロエンGSAは、機械的な部品から登録番号のような識別用のものまで剥ぎ取られている。どこかで盗まれ、分解され、捨てられた可能性が高い。また、GSとGSAは非常によく似ているが、プラスチック製のドアハンドルやリアハッチなどの特徴から、この個体が後者であることがわかる。
シトロエン・トラクシオン・アヴァン
1934年に発売されたトラクシオン・アヴァンは、フランス語の車名どおり前輪駆動で、しかもユニボディ構造の画期的なモデルだった。シトロエンがどのように前輪を駆動していたのか、この荒れ果てた個体を見れば仕組みがよくわかる。トランスミッションはエンジンの前に設置され、エンジンはファイアウォールを背にして搭載されていた。
DAFダフォディル
フランスで見かける廃車のほとんどがフランス車であるのは当然だ。イタリアの田舎ではイタリア車だろう。だから、1960年代にオランダで製造されたDAFダフォディル(Daffodil)がアルプスの小さな町で見つかるとは思ってもいなかった。
保存するには傷みが激しいし、部品取り車にもならないような状態だが、森の中でひっそりと佇むファミリーカーには不思議と心を奪われる。登録番号から、この個体は地元のものであり、元オーナーが車庫から引っ張り出した後、捨てられたものと思われる。
ダットサン・チェリー
ハッチに貼られたディーラーのステッカーは、この1980年代のダットサン・チェリーがあまり良い人生を送れなかったことを示している。新車で売られた町から川を挟んで反対側の森に捨てられていたのだ。
チェリーは比較的珍しいクルマであり、走行可能かどうかにかかわらず、フランスのこの地方で見た唯一の個体である。リアランプをはじめ、内部の部品が多数欠落しているので、少なくとももう1台はあるはずだ。
フィアット128
赤いストライプが目を引くこのフィアット128は特別仕様車か何かに思えたが、よく見るとアフターパーツに凝った人が所有していた平凡なセダンであることが分かる。フロントウイングにウインカー用の穴がないことから、1976年以降の第3シリーズであると考えられる。
この128は、川のそばにある盗難車の墓場の入り口付近に佇んでいた。数十年もの間、墓場を守り続けたのだろう。2010年代に入り、地元当局が1台ずつ撤去を始めたが、どうやらその網の目を潜り抜けたようだ。
フォード・タウナス
この逆さまのフォード・タウナス(TC2)は、骨格以外にあまり残っていないことから、部品取りとして使われたものと思われる。奇妙なことに、位置からして、この場所で部品を剥がされたようだ。トラクターや四輪駆動車などで反転させれば、リアアクスルなど手が届きにくいパーツも安全に取り外すことができる。
ラーダ2102
廃車(または廃車の部品)を特定するために、何時間もかけて手がかりを探すことも珍しくない。今回の場合、当初はフィアット124エステートなのかラーダ2102なのか、よくわからなかった。
ラーダ2102はフィアット124をベースにしており、見た目も中身もほぼ同じだったため、何十年も河川敷で朽ち果てていた個体では、ほとんど見分けがつかない。今回は、エンジンルームにラーダのプレートがあることに気づき、予想以上に早く調査を終えることができた。
オペル・カデット
このオペル・カデットBのオーナーは、牛の囲いを終の住処に選んだ。傷だらけで凹みも多く、決して楽な人生ではなかったことが伺える。フロントガラスに貼られた登録ステッカーは、1988年以来、道路を走っていないことを物語っている。特にアルプスの奥深く、人里離れた場所に駐車されていることから、その後、移動したとは考えにくい。しかも、4つのドアはすべてロックされている。
プジョー204
プジョー204の香りがするミネラルウォーターはどこから来るのだろう?気になって調べてみたところ、アルプスの小さな小川がその源であることがわかった。冗談はさておき、この204は、小川の真上に積まれた鉄くずの山から落ちてきたような格好で、その場に留まっていた。1960年代に製造されたものだが、最後に走ったのはいつなのか、その痕跡はもう残っていない。
プジョー205
比較的新しい部類に入る車種でも、古いクラシックカーと一緒に野原や納屋に放置されることが多い。1980年代に製造されたこの2ドアのプジョー205は、衝突事故でフロントを損傷した後、部品取り車として扱われたようだ。その後、長い間手をつけられていない。
プジョー304
ハイキングコースと川の間に埋もれていた、へこんで錆びたルーフだけが確認できるこのクルマ。掘り起こすまでもなく車種を特定できた。リアハッチのヒンジから、プジョー204か304のどちらかであることがわかり、ボディに残されたグリーンのペイントのかけらから後者であることが確認された。1976年から1980年の間に製造されたものである。
プジョーJ7
1970年代のプジョーJ7の両側面に貼られた色褪せたステッカーから、一時期、窓ガラスの施工を行う会社が所有していたことが判明。最も近い隣人が蜂の巣であり、広い貨物室がスズメバチに占領されているのは、ちょっと皮肉な話だ。
ルノー4CV
プロヴァンスを離れ、パリに小旅行。路上駐車が禁止された今、古いクルマを見かけることはほとんどないが、街の地下駐車場には数多くの逸品が隠されている。
なかでも、1940年代後半から1950年代前半に製造されたこの4CVは、20年以上も日の目を見ていない。完全無欠のレストアにぴったりな個体で、しかも非売品。オーナーは定期的に駐車場代を払い続け、何度も手放してほしいという申し出を断っているそうだ。
ルノー4
再びプロヴァンスへ。1961年から1994年まで製造されたルノー4は、大量に生産され、大量に破壊された。廃車制度、致命的な錆の問題、無慈悲なオーナーによって、その数は激減してしまった。
そして、2010年代後半までは、街中で見たいとも思わない、捨てられていくクルマと考えられていた。それゆえ、1980年代前半に製造されたこの青い個体も、畑に放置されていたのだろう。本国では価値が上がってきており、レストアして再び走らせることも可能だ。
ルノー4 F4
実は、編集部はこのルノー4 F4の前を何年も通っていたのだが、裏の家が売りに出されるまで、じっくり見ることはなかった。電話で問い合わせ、その家に興味があるのではなく、このクルマに興味があることを伝えて「見学」することに。
1986年モデルで、やや傷みが激しく、怪しげな(危険なほど)改造が施されているが、思ったほど車体が錆びていないことに驚いた。果たして、このクルマはレストアできるのか?AUTOCARの英国編集部が購入したので、機会があればお知らせしよう。
ルノー12
アルプスの奥地にある小さな町が、1980年代に12台ほどの廃車を集め、それを使ってダムを建設したという話を聞いた。数年後に崩壊したが、地元の人によると、何台かはまだ残っているとのことだった。
長いドライブと長いハイキングを経て、編集部はこの1970年代のルノー12を目の当たりにした。ダム建設に使われた他のクルマよりはるかに保存状態がいい。
ルノー16
1999年を最後にエンジンを停めたこのルノー16は、事故でフロントが破損した後、納屋の裏に駐車されていた。ハンドルなどの部品が取り外されている。
アルプス地方は冬になるとものすごい雪が降るのだが、初めて訪れたときはルーフまで雪に埋もれていたため、見逃してしまった。この16だけでなく、すぐ近くにルノーのエスタフェもある。
ルノー18
クルマ探しは、畑の端から始めること。「自動車考古学」を志す人へのアドバイスだ。畑の端というのは、農家がしばしば石や不要な建材、パレット、金属くずなどを運んでいる場所である。
1970年代に作られたルノー18は、農家の廃棄物の山でその生涯を終え、ゆっくりとブラックベリーの茂みに飲み込まれようとしている。シルエットはほぼ維持されて、事故に巻き込まれたようには見えないが、長い間風雨にさらされていたため、内装はあまり残っていないようだ。
ルノー・ドーフィン
このルノー・ドーフィンは、錆びつき、へこみ、フレンチアルプスの僻地にゆっくりと沈んでいっている。クルマというより抜け殻だが、自動車考古学的な調査により、製造が始まった1956年3月から1957年5月の間に出荷された初期型であることが判明している。
どうやって調べたか?藪をかき分けると、4CVのようなスチールホイールに対応する5本のハブを備えていることがわかる。ルノーは製造開始から1年ほどでこのハブを廃止し、3本ハブに変更した。
ルノー・フエゴ
このルノー・フエゴは、うまく底面を下にして「着地」している。1980年代のフエゴをアルプスの渓谷に捨てた人は、発見されないように、特定されないように、相当なエネルギーを注いだようだ。文明のある土地から何kmも離れており、登録に関連するプレートやステッカーはすべて取り外されている。
ルノー・モナカトル
編集部が旅先で見つけた最も古いクルマの1つが、このルノー・モナカトルで、おそらく1932年に製造されたものと思われる。アルプスの小さな町の廃屋に停まっていたもので、90年前のクルマとしては驚くほど良い状態である。
構造的にはほぼ完全な状態で、2分割のボンネットとガラスの一部が欠落しているだけで、重要な骨格部分は腐食していない。編集部はぜひフルレストアして道路に戻したいと思っているが、まだ所有者を突き止めることができていない。
シムカ1100
シムカが1100を発売したのは1967年。フォルクスワーゲン・ゴルフがデビューする7年前に、横置きエンジン、前輪駆動、4ドア、リアハッチを実現したモデルである。非常に革新的なクルマであったが、革新性だけでは生き残ることができなかった。
フロントガラスに貼られた登録ステッカーから、この1100が最後に走ったのは2006年であることがわかる。一見すると、バッテリーを交換し、ガソリンを入れれば火が入りそうな雰囲気。しかし、走行可能な状態にするのは大変な作業である。1100はよく錆びるクルマだが、例に漏れず、この個体も錆びだらけだった。
シムカ・アロンド
このライトブルーの2ドア、シムカ・アロンデP60は、1960年代初頭の新車時には、さぞかし見栄えのするクルマだったことだろう。錆びついたり、内装を剥がされたりして放置されているクルマのほとんどが、最初は誰かの自慢の愛車であったことを考えると、いつも感慨深いものがある。もし、この個体がアルプス山脈の古い倉庫跡に放置されているのを見たら、元オーナーはどう思うだろう?
トヨタ・セリカ
1970年代に製造されたこのトヨタ・セリカは、交通量の多い道路の脇に置かれているが、クルマで通り過ぎるだけでは決して見ることはできない。バンのような背の高いクルマに乗れば、その姿を目にすることができるだろう。
ボンネットのエアスクープ、ワイドフェンダー、ツートンカラーの塗装など、さまざまな改造が施されている(今は、その名残がある程度だが)。
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万が一引き上げるとしても朽ちてるし