2022年9月15日から販売が始まったマツダの新型SUV、CX-60の売れ行きが好調だ。マツダ初のFRベースのSUVで、新開発の直6クリーンディーゼルターボを含む4種類のパワーユニットを用意するなど話題性が高く、購入を検討している方も多いハズ!
そこで本稿では、CX-60の魅力、購入する前に確認しておきたい注意点をご紹介。さらにどのグレードが最もお買い得なのか? グレード選びについても解説していく。
えっ!? CX-60 のATシフト操作に要注意!?? マツダ最新SUVの魅力と注意点とはなにか
文/渡辺陽一郎
写真/マツダ、ベストカー編集部
群雄割拠の時代!! マツダ新型CX-60の長所と魅力に迫る!
マツダのラージ商品群の第一弾として登場する新型CX-60。マイルドハイブリッド車が2022年9月15日に販売を開始。ハイブリッド以外は12月以降の発売を予定
最近はエクストレイル、アウトランダー、ランドクルーザーといった定番車種から、bZ4Xやソルテラのような電気自動車まで、SUVの新型車が多く登場している。クラウンもSUV風のクロスオーバーに発展した。
SUVでは、厚みのあるフロントマスクや悪路の走破にも適した大径タイヤの装着により、外観に野性味が感じられる。背の高いワゴン風のボディだから車内も広い。荷室に3列目の補助席を備えたSUVもある。つまりSUVは、カッコ良くて実用的なことから人気のカテゴリーになった。
そして日常的に高速走行の多い欧州メーカーは、かつて重心の高いSUVの開発に消極的だったが、2000年以降は技術進歩と北米市場の旺盛な需要によって車種を増やした。SUVは価格の高いクルマを好調に販売できる数少ないカテゴリーで、ロールスロイスのような悪路が似合わないブランドまで、SUVを手掛けている。
日本のメーカーもSUVに積極的で、この傾向を特に強めたのがマツダだ。2012年に初代(先代)CX-5を発売して以来、SUVの車種を充実させている。そしてマツダの中で最も設計の新しいSUVがCX-60だ。
CX-60の一番の特徴は、後輪駆動のプラットフォームを新たに採用したことだ。後輪駆動をベースにした4WDも用意される。パワーユニットは、直列4気筒2.5Lのガソリン、このエンジンを使ったPHEV(充電できるハイブリッド)、直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボ、ディーゼルのマイルドハイブリッドという4種類をそろえる。
CX-60の長所と魅力は、この新開発された後輪駆動のプラットフォームと、直列6気筒ディーゼルにある。まず後輪駆動の採用で、前後輪に加わる重量のバランスが良くなり、走行安定性を高めやすい。エンジンを縦置きにしたことで、フロントピラー(柱)と前輪の間隔が広がり、ボンネットの長い外観も自然な印象に仕上がった。
この2つの特徴は、マツダのスカイアクティブ技術と「魂動デザイン」が、以前から目指していたクルマ造りでもある。従来は前輪駆動だったから、フロントピラー(柱)と前輪の間隔が狭く、ボンネットを無理に長く伸ばしたデザインだったが、CX-60は後輪駆動になったから外観のバランスも向上している。
前後輪の重量配分も50:50に近付いた。後輪駆動になると、操舵に対する反応をさらに正確に仕上げ、カーブを曲がるときに旋回軌跡が拡大する挙動も抑えられる。運転感覚をスポーティにすることも可能になった。
直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボは、燃費効率の追求も、開発の目的に含まれている。最高出力は231馬力(4000~4200回転)、最大トルクは51kg-m(1500~3000回転)と余裕があり、8速ATの採用もあって、2WDのWLTCモード燃費は19.8km/Lと優れている。
いっぽう、CX-5が搭載する直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボの性能は、200馬力・45.9kg-mで、2WD/6速ATのWLTCモード燃費は17.4km/Lだ。つまりCX-60の直列6気筒3.3Lディーゼルは、CX-5の直列4気筒2.2Lディーゼルに比べて、動力性能と燃費が両方とも優れている。
以上のように効率の優れた直列6気筒エンジンを開発できたが、前輪駆動のプラットフォームを使って横向きに搭載することは寸法的に困難だ。そこでエンジンを縦向きに搭載して後輪を駆動する、新しいプラットフォームを開発した事情もある。後輪駆動の採用には、複数の理由があるわけだ。
CX-60のメリットを整理すると、走行安定性や操舵感の優れた後輪駆動の採用、動力性能が高く燃費も優れた直列6気筒3.3Lディーゼルの搭載、付加価値としてボンネットが自然に長いボディスタイルも挙げられる。
意外と多い? CX-60を購入する前に確認しておきたい注意点
CX-60のボディサイズは全長4740×全幅1890×全高1685mm、ホイールベース2870mm
逆に欠点と注意点には、ボディサイズがある。CX-60の前後席や荷室の広さはCX-5に近いが、全長は4740mmだから、CX-5に比べて165mm長い。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2870mmだから、CX-5を170mm上まわる。CX-60は後輪駆動の採用で、前輪の位置がCX-5よりも前側へ移動したから、車内の広さは同程度でも全長とホイールベースは伸びている。
CX-60のボディ後端のピラーは太めにデザインされ、後方視界が良くない。その代わり後輪駆動だから前輪の最大切れ角は大きく、最小回転半径は5.4mに収まる。CX-5の5.5mに比べて、小回りの利きは良い。
CX-60では乗降性にも注意したい。SUVとあって着座位置は適度だが、後席側のドアは、開口部の上端部分が少し下がっている。そのために後席に乗り降りする時は、頭を下げる姿勢になる。
運転感覚は前述のとおり後輪駆動のメリットを味わえるが、CX-60には個性もある。カーブの手前でブレーキペダルを踏んだ時に、前輪が前側へ下がる姿勢変化を抑えたことだ。ボディが水平に近い状態を保って沈み込み、ボディの前後方向の揺れを抑えた。この制御によって同乗者は体が前後に揺られにくく快適だが、ドライバーの受け取り方は異なる。
カーブに進入する前の減速で、車両の前側が下がらないと、前輪に荷重が加わっていないように感じてしまう。その結果、実際には安定して曲がるのに、旋回軌跡を拡大させるような不安が生じるのだ。
CX-60には、Miドライブという機能も採用される。ノーマル/スポーツ/オフロードといった走行モードを設定して、好みや運転状態に応じて選択できる。スポーツモードでは、アクセル操作に対するエンジンの反応が機敏だ。
このようなセッティングは珍しくないが、以前のマツダは、運転感覚が不自然になるという理由であまり採用しなかった。CX-60は、先に述べた車両の前側が下がるのを抑える制御も含めて、以前のマツダとは運転感覚が少し異なる。制御の介入を少し強く意識させるようになった。
このほかの欠点や注意点として、乗り心地も挙げられる。特に時速50km以下で路面の荒れた街中を走ると、細かなデコボコを伝えやすい。試乗車はXDハイブリッド(ディーゼルのマイルドハイブリッド)で、タイヤが20インチ(235/50R20)だったから、さらに不利になった面もある。18インチ(235/60R18)なら、空気の充填量も多く、もう少し快適に感じられる可能性が高い。
ノイズは全般的に静かだが、そのために1500回転以下では、ディーゼルエンジンの音質が耳障りに感じる面もある。夜中に時計の音が妙にうるさく感じるのと同じ理屈で、遮音を入念に行ったから、ディーゼルの粗い音が目立ってきた。
操作性についてはATレバーに注意したい。操作は逆L字型で、P(パーキング)レンジからD(ドライブ)レンジにシフトするときは、一度レバーを左側に動かしてから手前に引く。慣れの問題だが、最初は戸惑いやすい。
どのグレードが最もお買い得? PHEVモデルは? 内装の質とグレード選びのコツ
最上級のプレミアムモダンやプレミアムスポーツの内装は、欧州の上級ブランドを思わせる高級感が漂う。一方で、ベーシックなSパッケージになると、インパネが硬い樹脂仕上げになる
内装の質とグレード選びにも注意が必要だ。CX-60のグレードは多岐に分かれ、最も安価な25S・Sパッケージ・2WD(299万2000円)から、最上級のPHEVプレミアムスポーツ&モダン(626万4500円)まで、価格には約2倍の開きがある。
内装の質も大きく異なり、プレミアムスポーツ&モダンは欧州の上級ブランドに近い印象だが、Sパッケージ以下はインパネも硬質の樹脂仕上げだ。上級とベーシックグレードの造りは、価格と同様に格差がある。
従って上級グレードを試乗して、価格の求めやすい仕様を購入すると、納車された時に落胆しかねない。購入するグレードの内装を確認しておきたい。
価格にも違いがある。最も買い得なパワーユニットはディーゼルだ。Lパッケージ同士で比べると、ディーゼルの価格はガソリンに比べて58万8500円高いが、シースルービューパッケージとマイコクピットパッケージは標準装着される。このオプション価格を差し引くと、ディーゼルとガソリンの価格差は42万9000円に縮まる。さらにディーゼルは購入時に納める税金も13万3000円安く、最終的な実質価格差は29万6000円だ。
そこでレギュラーガソリン価格が1L当たり160円、軽油が140円で計算すると、約7万kmを走れば燃料代の節約で29万6000円の実質価格差を取り戻せる。しかもディーゼルの最大トルクは51kg-mで、ガソリンの2倍だから、動力性能も大幅に向上する。そうなるとディーゼルが最も買い得だ。
ディーゼルにマイルドハイブリッドを加えたXDハイブリッドは、上級グレードに限定されて駆動方式も4WDのみだ。従って価格は500万円を超える。装備の違いを補正してマイルドハイブリッドの正味価格を割り出すと39万6000円で、この金額はフルハイブリッドに匹敵するから、CX-60のマイルドハイブリッドは割高だ。
PHEVは、ベースとなったガソリンエンジン車に比べると、同様に装備の違いを補正して177万6500円高い。一般的にプラグインハイブリッドの価格は150万円前後が上限だから、CX-60のPHEVには割高感が伴う。
そうなるとCX-60の場合、モーター駆動を併用するマイルドハイブリッドやPHEVは割高だ。買い得なベストグレードは、直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボを搭載して、内装も相応に上質なXD・Lパッケージになる。価格は400万4000円(2WD)だ。
一番のライバル車は、上級SUVで人気の高いハリアーになる。ハリアーの買い得グレードはハイブリッドGで、価格は411万9000円(2WD)だから、CX-60もこれを意識してXD・Lパッケージの割安感を強めた。
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みんなのコメント
何でまぁ
こうもヒューマンエラーを考慮しない 設計にするかなぁ・・・
そして、高級感をうたっておきながら
MX-30と同じチープなシフトなんだと萎えた。