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昭和に生まれ、平成を生き抜き、令和の海へと漕ぎ出したトヨタ「クラウン・クロスオーバー」に息づく日本の流儀

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昭和に生まれ、平成を生き抜き、令和の海へと漕ぎ出したトヨタ「クラウン・クロスオーバー」に息づく日本の流儀

コンサバなサルーンデザインから大胆な変身を遂げた新型はすべての面で「クラウンらしさ」を問われることになった。

純国産技術で開発された最初の量産乗用車として、初代クラウンが登場したのは67年前の1955年。まだ自動車を所有することなど夢の夢と思っていた日本人に、自家用車のある生活を明確に示し、以来15世代にわたり国内専用の高級セダンとして国内マーケットをリードしてきた。つねにトヨタブランドの頂点として、ひいては“日本車の憧れの中心”としてマーケットをリードしてきたクラウン。それが2022年7月、「クロスオーバー」を筆頭に「セダン」、「スポーツ」、「エステート」の4つのモデルが並べ、16代目へと世代が変わると、各方面、あらゆる世代から色んな思いが噴出。その中心には「クラウン、これでいいのか?」という、懸念を伴ったある種の“ざわつき”があった。シリーズの第1弾として販売されている「クロスオーバー」も、ようやく街で見かけるようになった今だからこそ、見えてくるものがあった。

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プレミアムブランドは醸成される

仕事柄か、親子ほどに年の離れたスタッフたちと仕事をすることが多い。ある日、愛車に彼らを乗せ移動しているとき、自分の趣味を押しつけては少々申し訳ないな、と思いつつも、いつも一人で聞いている曲を流していた。

「若者のウケ狙いですか?」と、一人の編集者が冗談交じりに、私をいじってきた。車内は、フォークもあれば和製ロックもあり、もちろんアイドルソングもありの、いわゆる「昭和歌謡」のオンパレード(このワード自体、昭和……)であった。最近は、昭和歌謡が流行っていて、むしろ快適だったというのだが、そんな最近の流行を私が察して曲を流していたと取ったのかもしれない。確かにテレビ番組で、昭和歌謡の詩の奥深さに感動する平成生まれがかなりいるという現実は了解していた。

「おいおい、いま聞いているのは全部、俺たちがライブで聞いてきた曲ばかり。流行すたりではなく、自分の人生にしっかりと刻み込まれたものばかりで、ウケなんか狙っていないよ」と、少しばかり興奮気味に反論してしまった。だが彼らにとって、私たち世代のそんな思いなど、どうでもいいのである。ただただ心地よく響いてくる昭和のメロディと詩に、心を浮き立たせていただけなのである。冷静さを取り戻し、彼らのそんな思いが垣間見えてくると、どんなに世代を経ても「いいものはいい、ただそれだけ」となるのである。

そして本稿の本題、クラウン・シリーズの先陣を切って発売された「クロスオーバー」のステアリングを握りながらのテスト・ドライブにも、青春が詰まったメディアを持ち込んで、街に乗り出したのである。

セダンとSUVとのクロスオーバーという立ち位置にあるスタイルは、5メートル近い全長とクーペのような伸びやかなルーフライン、そして少し腰高なスタイルとのコンビネーションだ。結構スタイリッシュで、ビジネス街やブランド街でも映える。だいぶ見かけるようになったクルマとはいえ、最近のニューモデルの中では圧倒的に注目度が高いこともあり、視線はまだまだ熱く注がれるのである。うん、悪くない。ゆったりとしたプレミアムカーのドライブが続いていく。

これまでは国内市場がメインだったクラウンも、今後は世界40の国と地域で販売され、グローバルマーケットでの競争力も試される。それからするとこのクロスオーバーのエレガンスは、決してライバルに引けを取るようなものではない。正直いってカッコいいと思う。果たしてこのスタイル、世界の人にはどう見られるのだろうか? 一瞬不安になったのだが、実はもっとも気に掛けなければならないのは、後述する、ドメスティックな国内市場のことである。

令和の流儀を身に纏って、飛躍するクラウン

多分、クラウンのデザインは世界でも十分に受け入れられ、競争力を保つはずである。一方で、67年もの間、クラウンの世界観を肌で感じ続けてきた日本人の感性にどう響くかの方が、もっとも気に掛けなければいけないことなのかもしれない。だが時間が経つにつれ、そんなかすかな懸念は晴れていった。電子部品を始めとした部品のサプライチェーンが回り出して、市中をたくさんの新型クラウンが走り回れば、このスタイルは当たり前に受け入れられるかもしれない。 

そんな思いを後押ししてくれたもうひとつの要因は「クロスオーバーG・advanced」の走りである。FFベースの4WDはバランスもよく、ごくごく普通に走る限り安定感があり、実に心地いい。186馬力の2.5L、4気筒エンジンに、フロント119.6馬力、リア54.4馬力を発生するモーターを組み合わせたシステム出力234馬力の通常モデルというハイブリッドシステムは、いかなる時も騒々しくもなく、ハイブリッドとしての躾けが行き届いていたのである。スルスルッと大人しく、しかしトルクフルに加速していく感覚はかなり好印象だ。おまけに燃費を見れば22.4km/l(WLTCモード)と、さすがはハイブリッドで一日の長を持つトヨタらしい仕上げである。おそらく今クラスでこれほどのエミッションを達成している車はそれほど多くないと思う。スポーティな走りで言うなら、遅れて登場した2.4Lターボエンジンのハイブリッドで、システム最高出力349馬力を発生する「RS」に刺激では譲る。だが個人的には、ドライブしている2.5Lの方が新型「クラウン・クロスオーバー」にふさわしく感じていた。

確かに時折、エンジンが存在感を主張するような場面もあるものの、静粛性やスムーズネスにおいては十分に許容の範囲に収まっている。そんな空気感が支配するキャビンを見渡せば、これまたトヨタ流儀というか日本車ならではの仕上げの良さや心遣いがそこここに見て取れるのである。スーパープレミアムほどの素材感はもちろんないのだが、だからといって安普請では決してない。考え抜かれ、コストとのバランスをギリギリまで追い求めたところで答えを出し、こうして形にしているのである。これならば、クロスオーバーに続いて登場予定のサルーンにも、期待が高まってくる。

そんな満足感に包まれながらハイウェイを流す。4WDによって路面への追従性もよく、安定していてなんとも走りは平和だ。すると穏やかな時間の中に吉田拓郎の「人生を語らず」が流れてきた。

そうだクラウン、お前はようやく世界へと出たばかりじゃないか、まだまだ未来にやるべきことがあるはずだ。流れてくるセンテンスをつまみ食いしながら、自分勝手な解釈を加え、クラウンとダブらせていく。すると今度は同じく拓郎の「イメージの詩」が流れてきた。

昭和に生まれたクラウンが平成を生き抜き、そしていま、令和の流儀を身に纏って、大きく飛躍しようとしている。新しい海の怖さを知りつつも、新たな海へとこぎ出せ、クラウン! やっぱりお前は日本の流儀の中で生まれ育ってきた立派な名車。きっと若い人たちにも、そして世界の人たちにもその思いは伝わるはずだ。

クーペのようななだらかなルーフ。全長4930mm、ホイールベース2850mmの大柄ボディながら前輪と逆方向に後輪を操舵する4WS(4輪操舵)を採用して最小回転半径は5.4mに納めた。

隅々にまで神経が行き届いていることを感じさせる上質なインテリア。インターフェースのよさから、慣れた人ならマニュアルは不要かもしれないほど解りやすい。

スイッチ類も見ただけでなんの機能のものかが理解しやすく、そしてシンプルでゴチャゴチャ感はない。

レザーパッケージのシートだけに華やかな配色。ホールド性も高くスポーティな走りでもしっかりとサポート。ファブリック仕様もサラッとして魅力的だ。

ルーフラインから見て頭上の空間は少ないように感じるが、窮屈感をあまり感じないほどゆとりが確保されている。足元スペースも十分な広さを実現。

カップホルダー横にストレートにレイアウトされた動作はエレクトロシフトマチックのシフト。操作性はシンプルで使いやすい。

燃費指向で、どちらかと言えば穏やかでスムーズな直列4気筒2.5LエンジンとE-Four(後輪独立モーター/空冷式で230V)を組み合わせた4WDシステム。

クラスとしては平均的なスペースとはいえ、トランクスルーなども備わり実用面ではスクエアで使いやすいトランク。ハッチバックではなく、トランクフードが開くタイプ。

ラゲッジスペースの壁に100V/1500Wのソケットを備えている。

(価格)
車両本体価格:5,700,000円~(CROSSOVER G “Advanced・Leather Package/税込み)

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,930×1,840×1,540mm
車重:1,790kg
最小回転半径:5.4m
駆動方式:4WD
トランスミッション:無段変速
エンジン:直列4気筒ターボ2,487cc
最高出力:137kw(186PS)/6,000rpm
最大トルク:221Nm/3,600~5,200rpm
モーター:永久磁石式同期電動機
フロント:最高出力:88kw(119.6PS)
最大トルク:202Nm
リア  :最高出力:40kw(54.4PS)
最大トルク:121Nm
WLTCモード燃費:22.4km/l
問い合わせ先:トヨタ 0800-700-7700

TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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