現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 【モータースポーツ特集】技術とテクニック、そしてヒューマンドラマが渦巻いている

ここから本文です

【モータースポーツ特集】技術とテクニック、そしてヒューマンドラマが渦巻いている

掲載 2
【モータースポーツ特集】技術とテクニック、そしてヒューマンドラマが渦巻いている

 いまでこそ「世界最高峰のモータースポーツ」として揺るぎないポジションを手にしたF1グランプリだが、1950年代から1960年代にかけては、現在の世界耐久選手権(WEC)につながるスポーツカーレースのほうが人気を博していた。

 それを覆したのは、かつてブラバムF1チームのオーナーで、F1製造者協会(FOCA)会長を務めたバーニー・エクレストンだった。彼はF1チームを代表してイベント主催者と交渉。テレビ放映権料の分配金などについてチーム側の権利を主張するとともに、世界のどの国を訪れても高いイベント・クオリティが保たれるように尽力した。現在のような一大帝国を築き上げたのである。

【CD取材ノート】ホンダの思い出は数々あるが、第3期のF1チャレンジ唯一の優勝「2006年ハンガリーGP」が印象的! by大谷達也

 F1は、こうして手に入れた潤沢な予算を背景にして、チームがドライバーに支払う契約金やマシン開発に投じる予算が高額化。結果的にドライバーとマシンの両面で他のシリーズを圧倒する環境が整った。これがさらなる資金の流入を呼び込み競技の緊迫感と華やかさを高める好循環を生み出していった。

 では、F1マシンの技術的優位性は、どのようにして実現されているのか? F1のFはFormula、つまりクルマの形式を定めている。そのまま捉えれば開発の余地はあまりないように思える。しかし、事細かに定められているのはパワートレーン関連が主で、それ以外のエアロダイナミクスやシャシー回りには工夫を施す余地が数多く残されている。

 そして細かに仕様が定められているパワートレーンにしても、ハイブリッドシステムはMGU-KとMGU-Hの2段構えという、極めて複雑で高度なシステムが採用されているのが特徴だ。

 このうちMGU-Kは量産車のハイブリッドと同じで、減速時には車両が持つ慣性力を電気エネルギーに置き換えるもの。一方のMGU-Hは排ガスのエネルギーをターボチャージャーの排気タービンで受け止め、その回転力を電気エネルギーに変換するという極めて特殊な技術だ。しかも、MGU-Hで回生できるエネルギー量には上限が設けられていない。このため、ここで回収するエネルギー量が勝敗を分けるほど大きな効力を有する。

 ただし、2026年から実施される新レギュレーションではMGU-Hが禁じられ、MGU-Kだけになる。とはいえモーター出力や許容される回生エネルギー量が大幅に上乗せされるため、エンジンとモーターの出力比は現状の8対2から5対5になり、電動比率はむしろ格段に高まることになる。 耐久選手権のWECは、F1と違いメーカーが主役

「走る実験室」という伝統を現在でも継承

 これほど高度な技術をマシンに用いているF1グランプリだが、もっとも栄誉がある賞典はドライバーズ選手権だ。チームに与えられるコンストラクターズ選手権はその次。さらにいえば、複雑なパワーユニットを開発・生産する自動車メーカーには何の栄冠も与えられない。この点は、F1グランプリの位置づけをよく物語っているといえる。

 国際自動車連盟(FIA)が定める世界選手権の中で、F1グランプリに次ぐ知名度を誇っているのはWECだろう。毎年20万人以上を集めるル・マン24時間を軸とし、世界中の耐久レースを転戦する。

 耐久レースは、総論で述べたとおり、自動車メーカーの“走る実験室”と位置付けられる。このため、主役となるのは自動車メーカーであり、最も栄誉ある賞典は自動車メーカーに贈られるマニュファクチュアラーズ選手権になる。マシンとドライバーの主従関係が、F1とは正反対になっているのだ。自動車メーカーの戦いであるWECは、さまざまなパワートレーンを受け入れる素地がある。かつてマツダのロータリーエンジンが優勝したり、一時はディーゼルエンジン車の戦いが繰り広げられていた。ハイブリッド・パワートレーンを受け入れた時期も早く、この傾向は現在も続いている。

 なお、自動車メーカーがプライドをかけて戦うのは通常、最高峰カテゴリー(現在はハイパーカー・クラス)だが、これに加えて量産車に近いマシンで競い合うGTクラスが用意されている。しかも、こちらはプロドライバーだけでなくジェントルマンドライバーにも門戸を開いている点もWECならではだ。

 同じFIAの世界選手権でありながら、主戦場がサーキットではなく一般道となる唯一のカテゴリーが世界ラリー選手権(WRC)。もっとも、一般道といっても未舗装路だけでなく、舗装路やときにはクローズドコースを走る場合もある。このため、WRCを戦うマシンは、サスペンションのセッティングを大幅に変更できる設計とされているほか、駆動系にフルタイム4WDを採用。

 さらにいえば、次々と迫り来るコーナーや刻々と変化する路面コンディションをドライバーに伝えるため、コドライバーが同乗する。1台ずつが順に走行して速さを競うタイムトライアル形式となることも、一般的なサーキットレースとは根本的に異なる。また、量産されるコンパクトカーをベースとした競技車を用いる関係か、ほかの世界選手権以上に観客の平均年齢が若いとされる点もWRCの特徴だろう。

 最後にインディカーはアメリカ生まれのフォーミュラカー・シリーズ。アメリカ国内ではインディカーよりも量産車に近いスタイルをしたNASCARのほうが人気は高いが、日本で馴染みが深いインディカー・シリーズについてご紹介しよう。

 インディカー・シリーズはインディ500を起源としており、その舞台となるインディアナポリス・モーター・スピードウェイは全長が2.5マイル(約4km)と異例に長いオーバルコース。このため予選では最高速度が380km/hに迫るほど超高速域での戦いとなる。しかも、インディ500は500マイル=約800kmをひとりで走りきるという耐久レース的な要素も含んでいる。インディ500は決勝日だけでおよそ30万人の観客を集める。賞金も高額で、2024年の勝者、ジョセフ・ガーデン選手には合計428万8000ドル(約6億7000万円)が贈られた。

 こうしてみてくると、同じ国際格式のレースでも競技のスタイルが大きく異なっていることに気づく。あなたがいちばん声援を送りたくなるレースカテゴリーは、どれだろうか?

こんな記事も読まれています

製造期間わずか[10カ月]!? 初代[シビック]のスポーツモデルである[シビック1200RS]が想像以上にヤバい
製造期間わずか[10カ月]!? 初代[シビック]のスポーツモデルである[シビック1200RS]が想像以上にヤバい
ベストカーWeb
【最新モデル試乗】期待のストロングHV登場! SUBARUクロストレックS:HEVの実力
【最新モデル試乗】期待のストロングHV登場! SUBARUクロストレックS:HEVの実力
カー・アンド・ドライバー
【羨望のSUV】メルセデスAMG・G63全方位試乗。「最新のG」は「最良のG」なのか?!
【羨望のSUV】メルセデスAMG・G63全方位試乗。「最新のG」は「最良のG」なのか?!
カー・アンド・ドライバー
ホンダの新SUV「CR-V」にはエンジンがない!? “燃料電池で発電”モーターで駆動! 欠点さえ許容できれば「全方位的に魅力的」
ホンダの新SUV「CR-V」にはエンジンがない!? “燃料電池で発電”モーターで駆動! 欠点さえ許容できれば「全方位的に魅力的」
VAGUE
誕生から現在へと続く、12気筒の系譜。
誕生から現在へと続く、12気筒の系譜。
LE VOLANT CARSMEET WEB
1度でいいから運転してみたい! 伝説の3座マクラーレン「F1ロードカー」から始まった「アルティメットシリーズ」を一挙紹介!!
1度でいいから運転してみたい! 伝説の3座マクラーレン「F1ロードカー」から始まった「アルティメットシリーズ」を一挙紹介!!
WEB CARTOP
「日産 GT-R  プレミアム エディション Tスペック」は、諦めない!不屈の国産スポーツカー、未だ一級品の証し【新型車試乗】
「日産 GT-R プレミアム エディション Tスペック」は、諦めない!不屈の国産スポーツカー、未だ一級品の証し【新型車試乗】
Webモーターマガジン
900万円の衝撃!! GT3でも物足りないツワものへ、ポルシェからの新提案
900万円の衝撃!! GT3でも物足りないツワものへ、ポルシェからの新提案
ベストカーWeb
新車が買えないレベルで人気沸騰中のメルセデス・ベンツGクラス! EVが売れない日本でも「G 580 with EQ Technology」ならバカ売れするか?
新車が買えないレベルで人気沸騰中のメルセデス・ベンツGクラス! EVが売れない日本でも「G 580 with EQ Technology」ならバカ売れするか?
THE EV TIMES
トヨタの「超凄いヤリス」登場! 1.6L直列3気筒ターボ搭載!? 公道でアクセル“ベタ踏み”!? 爆速で駆け抜けるRally2の現状は
トヨタの「超凄いヤリス」登場! 1.6L直列3気筒ターボ搭載!? 公道でアクセル“ベタ踏み”!? 爆速で駆け抜けるRally2の現状は
くるまのニュース
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実
THE EV TIMES
プアマンズポルシェの「914」が1億円以上の価値!? 理由は14台のみ生産された「914/6 GT」だったと聞けば納得です
プアマンズポルシェの「914」が1億円以上の価値!? 理由は14台のみ生産された「914/6 GT」だったと聞けば納得です
Auto Messe Web
グループAのころにゃなかったぞ! おじさんファンにはちんぷんかんぷんなイマドキ「レース用語」10選
グループAのころにゃなかったぞ! おじさんファンにはちんぷんかんぷんなイマドキ「レース用語」10選
WEB CARTOP
【最新モデル試乗】すべてがグレードUP! 理想の選択肢、三菱アウトランダーPHEVの驚く完成度
【最新モデル試乗】すべてがグレードUP! 理想の選択肢、三菱アウトランダーPHEVの驚く完成度
カー・アンド・ドライバー
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
「ホンダの時代が来た」 CEOが語るEVの未来 世界で存在感を示せるか
「ホンダの時代が来た」 CEOが語るEVの未来 世界で存在感を示せるか
AUTOCAR JAPAN
「えっ…!」1800馬力で最高速445km/h! ポルシェ×リマックが手がけた“新生ブガッティ”のハイパーカー「トゥールビヨン」ってどんなクルマ?
「えっ…!」1800馬力で最高速445km/h! ポルシェ×リマックが手がけた“新生ブガッティ”のハイパーカー「トゥールビヨン」ってどんなクルマ?
VAGUE
結局さぁ……日産[GT-R] とヒョンデ[IONIQ5 N]って結局どっちが良いの??
結局さぁ……日産[GT-R] とヒョンデ[IONIQ5 N]って結局どっちが良いの??
ベストカーWeb

みんなのコメント

2件
  • deb********
    どのカテゴリーでも面白いよ。
    好みが分かれるだけで。
    自分は、所帯をもってからは、長丁場の時間がとれないから、スプリントよりのF1でもダイジェストでの観戦になってしまう。
    若いときは、インディ500やルマン24時間を地上波で放送してたときは、スタートからゴールまで各チームの戦略や駆け引きを楽しみながらの観戦できたんだよな。
  • エガちゃんねらー
    見て面白いのは断然WRCだろう
    特にクラッシュしたマシンが帰ってきてからの
    修理の異常なまでの早さ、手際の良さには
    乗ってるヤツも大概なあたおかとは思ってたが
    メカのお前らもあたおかだったのか!となる
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村