2016年7月21日から発売する年次改良のレヴォーグに、一足早く試乗してきた。注目は新たに加わったレヴォーグのトップグレード「レヴォーグSTI-Sport」だ。
<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
■ポジションニング
レヴォーグは発売されてから2年経ち、今回で2回目となる年次改良でCタイプとなった。レヴォーグはデビュー当初、国内専用モデルとして発売され、レガシィユーザーからの乗り換え需要に応える役目を担いデビュー。販売台数の約半数近くが乗り換えユーザーというデータがあるように順調な滑り出しと言える。この先も国内販売における恒常的なボリューム維持のための主力商品という位置づけに変わりはない。
発売から約1年後に欧州での販売も開始し、鮮度を優先して国内仕様と同等の仕様でデビューさせている。その後、欧州からの要望に応える形で改良を加え、今回の年次改良のタイミングでCタイプに反映しているわけだ。具体的には、欧州は日本と比較して速度域が高いこと、多岐にわたる路面状況がある、などの違いから安全性の強化、静粛性の向上、質感の向上といったところに手が入った。これが今回の年次改良のポイントというわけだ。
ボディサイズには変更はなく、全長4690mm、全幅1780mm、全高1490mm、ホイールベース2650mmで、今回新たにラインアップに加わった1.6L STI-Sportが323万円、2.0L STI-Sportは365万円となっている。
■年次改良は欧州からの要望を反映
安全性の強化では、例えばフロント側突強化のためにフロントドアビームを強化し、また後席はシートベルトにプリテンショナー機構を追加、後席の乗員保護、拘束性を高めるためにシートクッションの変更などが改良された。
静粛性では、リヤ・クォーターガラスの板厚を3.1mmから3.5mmへアップ。ウエザーストリップの二重化、荷室回りに制振材の追加などを行ない、静粛性を向上させている。質感では17インチの空力を考慮した新デザインのアルミホイールを追加、Sパッケージの内装が黒だけだったものに、明るいブライトパールを追加するなどの変更が行なわれた。
そしてCタイプからトップグレードに「STI-Sport」が新たに加わった。この新グレードは1.6L、2.0Lそれぞれのトップグレードに位置し、静的質感、動的質感ともに最上級となるモデルだ。とりわけ動的質感はSTIが中心となった共同開発で、スポーティさを強調している。
STI-Sportはコアユーザー向けの「S」、「tS」シリーズとは異なる立ち位置で、スバルの量産ラインから生産されるモデルで、イメージキーワードは「モア・クオリティ」「モア・スポーティ」としている。
■ダンパーにビルシュタインのダンプマチック2を採用
具体的にSTIが担当した動的質感では、ダンパーとスプリングのチューニングがメインだ。ダンパーはビルシュタインのダンプマチック2という倒立タイプの、乗り味や滑らかさといったものに注力したダンパーだ。また、フロントスプリングのばね定数に変更はなく、ダンパー減衰を下げる方向のチューニングになっている。一方、リヤのスプリングレートは下げ、ダンパーの減衰は上げる方向にチューニングしている。
ダンプマチック2の特徴と狙いは、微低速時のフリクションを減らすもので、コンフォートバルブあるいは、微低速バルブと呼ばれるものでチューニングをし、乗り心地が良くなり、滑らかでしっとりとした乗り味になることを狙っているダンパーだ。そしてダンパーの外装はビルシュタインイエローでスプリングはチェリーレッド塗装のスプリングを装着する。
また、ステアリングギヤボックスをクロスメンバーに取り付けるブラケット板厚を2.9mmから4.0mmへとアップし、剛性をアップ。操舵のスムーズさやダイレクト感に影響するチューニングを行なった。
最上級のグレードということで、このSTI-Sportの内外装にも専用品が装備されている。外装では18インチアルミホイールを履き、フロントバンパー、グリルが専用デザインで、フォグランプやフォグランプカバーなどを装置する。リヤまわりでは専用のマフラーカッターが装着され、また、STIロゴが採用されている。内装では、シート&トリムにボルドー色の表皮を採用、また赤ステッチや夜間照明の赤色化なども専用装備としている。
■インプレッション
試乗したのは2.0L、1.6LともにSTI-Sportの新グレードで、富士スピードウエイのショートサーキットと構内路を使っての試乗だった。
ドアを開け、目に飛び込んでくるのはボルドーカラーと黒とのコンビネーションシート。落ち着いた色の組み合わせで大人な雰囲気がある。ステアリングはフラットボトムタイプの形状で、スポーティさがある。
走り出すとしっとりとした乗り味を感じる。これは欧州プレミアムクラスが得意とする乗り味の世界だ。入力に対して丸く、しっとりとした乗り味は高級感があり気分がいい。だが、2.0Lモデルでは40km/h程度での走行で、ピッチングではなくひょこひょこした動きがあった。これは1.6Lモデルではこの動きは出なかった。ある特定の速度域、条件に限られるものなのかもしれない。
ハーシュネス、大きな凸凹やガツンとした入力はどちらのモデルも上質な乗り心地を維持し、いなし方のうまさを感じる。また、車内の静粛性も高く高級感を得られる静かさだ。
サーキットで走行してみると、1.6Lの軽快さが際立つ。エンジン自体の重量差はほとんどないが、CVTの重量差が20kgほどある。2.0Lと比較してノーズの入りがよく、切り替えしのコーナーではヒラリ、ヒラリと走れる愉しさがあった。開発者によれば、フロントの重量差に起因するものということだ。
ただ、こちらの1.6Lモデルは乗り味の上質さ、という点では2.0Lモデルに一歩譲る。いわゆるザラツキ感があるのだ。2.0Lモデルでは感じない、という不思議な印象の違いがある。もっともこの試乗時のように乗り比べというシチュエーションでなければ、なかなか感じにくいレベルのものではある。
ステアリングの操舵フィールや応答性など、レヴォーグはもともとの素性がいいので、特に際立つ変化ではないが、おそらくオーナーであれば、操舵感における剛性感やしっかり感といったものの違いを感じるかもしれない。このCタイプ単体での評価でいうと、ステア操作したときのしっとり感は高いレベルにあると思う。この日、BRZの試乗も兼ねていたのだが、BRZよりは断然上質な操舵フィールに仕上がっていて、この試乗に向かう時に乗って行ったBMW320dとの違いも大差なく感じられた。反面、BMWよりは敏感に反応する印象はあり、俊敏性や応答性への強いこだわりを感じる一面でもあった。
静粛性については、やはり前モデルとの比較がしたいところだが、Cタイプ単体での評価でいえば、ロードノイズも抑えられ静かだ。高速道路の走行が今回できなかったので、評価しづらいが、日常使用のレベルでは、前モデルよりは静かになっているのだろう。
CタイプのSTI-Sportでは、直進からの遅れのないリニアに反応する操舵応答性というのは開発目標の一つでもあるので、十分な達成率だと思う。さらにビルシュタインのダンパーなどのチューンでは、高速での強い車線変更でもロールがぐらつかない安定性というのも目標の一つにある。これは、サーキットでの切り替えし場面で、はっきりと違いがあり全体の剛性感やしっかり感、といったフィーリングをドライバーは常に感じられるため、安心感のあるロールフィールと言える。
このSTI-Sportの走行フィールは欧州車のプレミアムモデルとも遜色のない仕上がりだと思う。18インチという大径のタイヤも履きこなし、乗り心地もいい、ステア操作のフィールも高級で好印象だ。
あとはレヴォーグ全体として、情報の多いメーターパネルやセンタークラスター、ステアリングに装備されるスイッチ類も効率よく整理されれば、より大人なモデルになるのではないだろうか。
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