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ホンダ「ノビオPM50」で出かければ、そこはヨーロッパの街角。ペダルでも走れるモペットスタイル

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ホンダ「ノビオPM50」で出かければ、そこはヨーロッパの街角。ペダルでも走れるモペットスタイル

2ストロークエンジンを搭載したファミリーバイク

 ホンダ「ノビオPM50」(1973年新発売)は、ペダル付き原動機付自転車(原付)です。通称「モペット(モペッド)」と呼ばれるバイクで、もともとはペダルを漕いで走る自転車の車体に、補助エンジンを取り付けた乗りものでした。

【画像】ホンダ「NOVIO PM50K1」(1974年型)の詳細を画像で見る(10枚)

 現在の感覚で言えば「エンジンが付いていればペダルは不要」と思いますが、ヨーロッパの一部の国では、ペダルがある事で免許不要や税金などの優遇があり、手軽なモビリティとして大流行していた時期がありました。

「ノビオ」はそんな1970年台に発売されていますが、日本では原付免許が必要でした。ペダルはエンジン始動時だけに使用し、ほとんどエンジンで走行していたと思われます。そのため自転車よりもバイク的な車体構成となっています。

 それでも当時のバイクの中では最も優しい運転操作で乗れるため、「自転車に乗った経験があれば誰でも気軽に乗れる」と宣伝されていました。

 それでいながらバイクとしての快適さ、安全性や耐久性などはホンダ流で、さらにそれらのメカニズムを意識することなく走りを楽しむことができました。

 ホンダは「ノビオ」登場に際し、女性やお年寄りでも市街地のアパレルショップやコーヒー店まで走り、簡単操作で乗れるので何軒も寄り道したり、坂道でも楽に登れるので郊外まで出かける、というようなヨーロッパ風のオシャレなバイクライフを提案していました。

 車名の「ノビオ」は、スペイン語で「男性の婚約者」の意味です。乾燥重量42kgで自転車なみの気軽さ、自転車よりも大きく行動範囲を広げてくれる「ノビオ」でした。

 エンジン始動は、メインスタンドを立ててペダルを踏みます。左手元のデンコンプレバーを使うとエンジン内の圧縮が抜けてペダルが軽くなり、さらに始動が楽になります。

 ハンドル右のアクセルを回してスピードを調整するのはバイクと同じですが、変速やクラッチ操作はありません。ブレーキは自転車と同じでハンドル左右のレバーで操作するため、初めての人でも簡単に乗れました。

 ペダル部分にある切り替えボタンで、ペダルを漕いでの自転車走行も可能でした。しかもエンジン側とは別に、自転車走行専用のチェーンも装備しています。

 さて、マニアックな視点で注目したいメカニズムは、2ストロークエンジンです。「ノビオ」が発売される前年の1972年、モトクロスレース専用競技車の「エルシノアCR250M」が2ストロークエンジンを採用して発売され、話題となりました。

 当時は4ストロークエンジンこそがホンダの特徴だったため、開発現場や広告にハリウッドスターが登場する2ストロークエンジン開発は、伝説的なストーリーとなっています。

 1973年1月に、ホンダの創業当時以来、久しぶりの公道用2ストロークエンジンを搭載して「ノビオ」が発売され、同年5月に公道用オフロードスポーツ車「エルシノアMT250」が登場しています。

 つまり、当時からホンダにとって「2ストロークはオフロードだけの特別なエンジン」ではなく、手軽なモペット用としても同時に開発する企業的バランス感覚があった、ということを「ノビオ」は教えてくれます。

 そのエンジン部分には、コンロッドの大端部と小端部にニードルベアリングを、大端部には直接給油方式を採用し、耐久性を確保するなどの配慮も行き届いています。

 フロントにはボトムリンク式、リアにはスイングアームとピボット部に近づけられた2本ショックを装備し、自転車とは格段の快適さも備えています。

 一方、ハンドルやシート(サドル)の高さは自転車のように調整する事もできました。

 写真の「ノビオ」は、ホンダコレクションホールに展示された「PM50K1」と呼ばれる1974年に発売された後期型です。フランス映画に登場するモペットのようなフロントバスケットを装備し、エンジンまわりの回転部分をフルカバーしてより安全性を確保しました。

 また、シートやプーリーカバーに花柄プリントを施すなど、オシャレテイストも追加されました。

「ノビオPM50」シリーズはこの「K1」までで終了しますが、1976年には同様のコンセプトでペダルを廃した「ロードパル」が登場します。

 ホンダ「ノビオPM50」(1973年型)の当時の販売価格は5万5000円、後期型の「ノビオPM50K1」(1974年型)は7万6000円です。

■ホンダ「ノビオPM50」(1973年型)主要諸元エンジン種類:空冷2ストローク単気筒総排気量:49cc最高出力:1.8PS/4000rpm最大トルク:0.36kg-m/3000rpm全長×全幅×全高:1655×605×1010mm始動方式:ペダル式車両重量:45kg燃料タンク容量:3Lタイヤサイズ(前後):2.00-17(2PR)

【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)※2023年12月以前に撮影

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みんなのコメント

1件
  • 藍流頓瀬奈
    本来はこれこそが原付。技術革新は50ccでも人ひとり運ぶには十分すぎる動力性能をもたらした。
    あわてて免許制度やヘルメット義務化、環境性能…でがんじがらめに。
    今また電動機つき自転車やキックボードでそれを繰り返そうとしている。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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