新型ランクル300の日本発売から約2ヵ月後の10月14日にワールドプレミアとなった新型レクサスLX600。2021年11月25日から先行予約が開始され、日本での正式発表は2022年1月12日に予定されている。
新型LXのグレードは標準(1250万円)、OFFROAD(1290万円)、EXECUTIVE(1800万円)の3種類。標準、OFFROADが5人乗りと7人乗りの2種類を用意、EXECUTIVEは4人乗りのみの設定で、5人乗りと7人乗りの価格差はない。
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搭載されるパワートレインは、3.5L、V6ツインターボの1種類で、415ps/650Nmを発生する。新型ランドクルーザー300にあるディーゼルエンジンの設定は今のところなし。
さて、レクサスLXといえば盗難件数が多いことでも有名だ。トヨタは新型レクサスLXの盗難防止対策をどう講じてきたのだろうか?
文/加藤久美子、写真/加藤博人
[gallink]
■新型ランクル300に続いて新型レクサスLXにも指紋認証システムを標準装備
2021年11月25日から予約受注がスタートし、2022年1月12日に発表予定の新型レクサスLX。価格は標準グレードが1250万円、OFFROADが1290万円、EXECUTIVEが1800万円
新型LXの指紋認証システムの説明
新型ランドクルーザー300の指紋認証スタートスイッチの説明
2022年1月12日に発表が予定されている新型レクサスLXはすでに11月25日から先行予約が始まっている。LXといえば、1000台のうち50台(2020年)が盗まれた盗難率の高さでも有名だ。
愛知県ではとくにLXの盗難が多く2020年の盗難台数は119台。県警の発表によると県内で登録されているLXの5台に1台が盗まれた計算になるという。他の車種が軒並み大幅に減少するなか、LXだけが突出して多くなっている。
さて、そのLX。2022年1月12日に発表される新型にもランドクルーザー300で日本初採用された指紋認証システムが搭載されている。
装備を紹介するページに以下の説明が書かれているが、同じシステムなのにLXとランクル300では微妙に表現が異なっているのが興味深い。比較してみよう。
●レクサスLX600【指紋認証スタートスイッチ】
指紋センサーにタッチし、車両に登録された指紋情報と一致しなければエンジンが始動しない、セキュリティに配慮したスイッチです。
※指紋の状態によっては指紋登録ができない場合があります。
※指の状態によっては登録した指紋を認証できない場合があります。その場合は電子キーを指紋認証スタートスイッチにかざすことでエンジン始動が可能となります。
●トヨタランドクルーザー300【指紋認証スタートスイッチ】
スタートスイッチの中央に指紋センサーを搭載した、指紋認証による始動システムです。スマートキーを携帯し、ブレーキを踏みながら指紋センサーをタッチすると、車両に登録された指紋情報と照合。指紋情報が一致しなければエンジンが始動しないため、より高いセキュリティ性を発揮します。
(※指紋の状態~以降は同じなので省略)
比べてみるとランクル300のほうが説明や使い方が丁寧だ。LXのほうには「スマートキーを携帯し、ブレーキを踏みながら指紋センサーをタッチすると、車両に登録された指紋情報と照合。」としか記載されていないが、ランクルには「ブレーキを踏みながら~」など、使い方まで詳しく記載されている。
LXの「セキュリティに配慮した」に対して、300は「より高いセキュリティ性を発揮します」とあり、LXは控えめな印象でランクルのほうが力強い印象だ。
ランクル300には「GX」を除く全グレードに標準装備されるが、LX600は全車標準装備となる。ちなみに、以前もベストカーwebで書いたが、CANインベーダーやコードグラバーなどの最新の盗難手口では指紋認証は全く役に立たない。
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■アメリカ仕様のLXには指紋認証がない!
アメリカ・ラスベガスで2021年11月に開催されたSEMAショーに出展していた新型レクサスLX
ナビゲーションのディスプレイ左下がプッシュエンジンスタートスイッチだが、日本仕様で用意された指紋認証システムはなかった
アメリカではランドクルーザー300の販売はないが、新型LXはすでに販売がスタートしている。お披露目の場所として選ばれたのはラスベガスで開催される世界最大のアフターマーケットの見本市『SEMA SHOW』のレクサスブースだった。
筆者は2021年11月上旬、SEMAに取材で足を運んだが、レクサスブースの目玉となる展示でランクル300の発売がないぶん、新型LXに期待するところが大きいのだろう。プレゼンには多くのクルマ業界人(SEMAは業界関係者オンリーのトレードショー)が集まっていた。
展示車両は室内に座ることができたので、さっそくエンジンスタートのスイッチを見てみたが……指紋認証のリーダーはついていなかった。
日本とは比べものにならない盗難大国であるアメリカにおいてLXはそれほど盗まれていないのか? 指紋認証がないのはどんなことが理由だろうか? ブースのスタッフに聞いてみた。
「日本で販売されるLXには全車標準装備だと聞きましたが、アメリカ市場向けのLXには採用されませんでした。その理由としては、アメリカでは重要視されていないんでしょうね」。
ん?「重要視されていない」とはどういうことなのか。その後、周辺取材を重ねた結果、以下の結論を得た。
要するにアメリカではLXの盗難比率が低い。日本では突出した盗難率だが、アメリカでは他のクルマの盗難台数があまりにも多く、目立った存在ではないようだ。
2020年に最も多く盗まれた乗用車はホンダシビックで、その数3万4144台。乗用車の1位~6位まですべて日本車で2位はアコードの3万814台、3位カムリの1万6915台。対する日本は1位プリウスが517台、2位ランドクルーザーが395台、3位LXが286台……。アメリカの盗難台数は日本とは2ケタも違うのだ。
そしてアメリカで盗難被害に遭うのは20年以上前の古いクルマが主流となる。盗んだ後にバラシて「部品」と流通させるニーズを見込んで盗むのだ。
つまり、新車のニーズがそもそも低いので、指紋認証のような新しい防犯システムはあまり重要視されない、という意味に解釈できる。
しかし、近年カナダではレクサスLXの盗難が急増している。カナダの保険会社の調べによると、カナダ・オンタリオ州においては2019年と2020年型のLXがなんと5台に1台盗まれたという。
そして、カナダで盗まれたLXはバラされることなく、そのままの形で大西洋をわたって海外に密輸されている現状がある。日本の状況と酷似しており、盗難の手口としてもCANインベーダーやコードグラバーが主流だという。とくに、コードグラバーが急増しているそうだ。
コードグラバーとはどんな手口で、なぜレクサスに多いのか?
■日本でも海外でも、LXの盗難手口で多いのは?
ロシアの販売サイトに掲載されていたCANインベーダー。見た目はモバイルバッテリーそのもの。販売していたWebサイトには操作方法のマニュアルや動画、対象車種まで載っていた
LXを含むレクサスの盗難手口とし日本や海外(カナダやロシアなど)で急増しているコードグラバーとは本来、スマートキーを紛失した際にディーラーなどで再作製する際に使う方法である。
これを悪用し、オーナーがスマートキーを操作するタイミングを狙ってスマートキーから発生する電波を受信し、特殊な専用機械でIDコードを読み取る。そしてスマートキーそのものを複製してしまうのだ。最新の機械では1km以上離れた場所からでもIDコードを読み込める機能があるというから恐ろしい。
「コードグラバー」をはじめ、CANインベーダーなど最新の盗難手口に精通するカーセキュリティプロショップFIVE WIRE(大阪府豊中市)代表の竹島氏に現状を聞いた。
「コードグラバーが使えるのは狙ったクルマのオーナーがスマートキーを使ってドア解錠などの操作を行うタイミングに限られるため、成功するにはいくつかの条件が必要です。
しかし、コードを読み取って完璧に複製するため、キー登録さえしてしまえば持ち主がいなくてもいつでも安全に盗めるのが窃盗犯にとっての利点でしょう。
また、リレーアタックは自走で盗んだあと一度エンジンを切るともう始動できません。コンピューターを入れ替えるなどの手間が必要です。しかし、コードグラバーなら紐づけされたキー(複製)を持っているのでそのままばらさずに海外に売却できます」。
竹島氏の話によると、関西方面ではとくにレクサスをばらさずにそのままの形で日本海側の港から海外に密輸されるパターンが多いという。
また、LXをはじめとしたレクサスがコードグラバーで盗まれる最大の理由について、衝撃的な事実を教えてくれた。
「コードグラバーは、キーを紛失したときなど応急用の機能を悪用する手口ですが、その機能を使いやすく、コードグラバーがやりやすい(つまりはセキュリティが緩い)のが主にトヨタ/レクサスです。
そして、トヨタ/レクサスの盗難が多いのはセキュリティ性能が低いという理由のほかに、何よりも世界中で高く売れるからなんです。
盗みやすくて世界中で高いニーズがある……、だからこそ盗まれているんだと思います。指紋認証などのセキュリティシステムを導入しても、純正である以上はコストや利便性のニーズに縛られます。窃盗のプロにしてみれば突破は不可能ではありませんので、盗まれやすいという状況は変わらないと思います。」
盗みやすくて高く売れるのであれば窃盗団にとってはとてもおいしい獲物になる。LXやランドクルーザーのオーナーはどうやって愛車を守ればいいのだろうか。
■新型ランクル300のオーナーが続々とセキュリティショップを訪れている
日本仕様に装備される指紋認証スタートスイッチ。このシステムで盗難は防げるのだろうか?
新型ランドクルーザー300が発売されて数ヵ月が経過した。セキュリティの取り付けについてはどんな状況だろうか? 以前もCANインベーダー対策についてお話を伺った、セキュリティプロショップA2Mの撹上氏に最新の状況を聞いてみた。
「新型ランクル300が続々入庫してきています。新しいLXにも指紋認証が装備されるとのことですが、もちろん簡単に盗まれていくでしょうね。
先月、埼玉県、栃木県からLX570の新車が入庫しましたが、どちらの方も2021年4月にシャッター付きガレージから盗まれて、車両保険を使って購入したLXが2021年11月に納車されたという状況です。
シャッターの閉まったガレージの中から盗むのですから……本気ですよね? 新型LXも本気で盗りに来るでしょう!
今一番の問題はCANインベーダーですから、そこに対応できるようセキュリティを取り付けます。メインECUがエンジンを始動しようとしてもその先で配線を切断してエンジン始動を不可能にします。
CANに入り込み、エンジン始動を防ぐものもいくつかありますがA2Mではアナログの強みを活かして対策をしていきます。
この辺りはレクサスディーラーの優秀なサービスマンやセキュリティシステムパンテーラのメーカーであるユピテルの現場の方々と話して決めました。CANインベーダーがアップデートされた時でも盗まれないように対策を講じています」。
ちなみにA2Mを訪れるランクル300オーナーが、入庫時にまず質問するのは『指紋認証を設定しても良いですか?』ということだそう。
エンジンが掛からなくなることを心配しているそうだが、「スマートキーでボタンを押してしまえば問題なく始動できるので設定していただいております」(撹上氏)とのこと。カタログにも書いてあるように、指紋認証がダメでもスマートキーさえあれば始動できるシステムなのである。
間もなく販売が始まる新型LXも、窃盗団が早急に解析して盗まれてしまうのだろうか? いや、システムとしてはランドクルーザー300と同じだから、もう解析も終わっているのかもしれない。
盗まれやすいクルマを守るには純正セキュリティに100%頼るのは危険だ。今回お話を伺った、FIVEWIREやA2Mのような信頼できるセキュリティショップで防犯対策を講じるのがベストな守り方といえそうだ。
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みんなのコメント
結局は電子キーのデータあれば動くって事ね。
そうだよな~、車検とかあるもんね。
始動時だけチェックする指紋認証やスマートキーと違って、運転中常にチェックが効くし、所有者が座ってないとアクセル踏んでも動かないとかだと盗むのは面倒そう。
まあそれでも盗まれるんだろうけど。