4つのボディバリエーションや、これまでのFR(FRベースの4WD)から、全車FFベースのAWDにするなど、67年に渡るクラウン史上においても大革新となった、16代目新型「クラウン」。
新型クラウンの衝撃はかなりのものだったが、実はクラウンは以前にも大改革を行っている。それが12代目となる180系クラウン、いわゆる「ゼロクラウン」だ。
新型クラウンも見習った!? 20年前の名車大改革!! 「ゼロクラウン」が変えたクラウンの歴史
今回はクラウンの歴史上で大きく時代を動かした、12代目「ゼロクラウン」について振り返りつつ、新型クラウンの今後について考えてみよう。
文/吉川賢一、写真/TOYOTA、ベストカー編集部
■「これまでのクラウン」を覆したゼロクラウン
2003年に登場した12代目トヨタ クラウン。広告のキャッチコピーから「ゼロクラウン」の通称で親しまれ、いまだ中古車人気も高い
2003年から2008年まで販売されていた12代目クラウン、通称「ゼロクラウン」。2003年12月~2005年10月の前期型と、2005年10月~2008年2月の後期型に大別され、ラインアップは、伝統的なラグジュアリーサルーンの「ロイヤル」と、先代から復活設定されたスポーティグレード「アスリート」の2つ。
ロイヤルとアスリートの大きな違いは、フロントグリル(ロイヤルは伝統の横基調のルーバー)と、テールランプ(アスリートは丸目4灯)、インテリア(ロイヤルはウッド調、アスリートはブラックを基調)のデザインなどだ。
プラットフォームを先代から一新し、ボディ剛性を向上したほか、サスも4輪ダブルウィッシュボーンからリアをマルチリンク式へ変更。クラウンとして初めて電動パワーステアリングを採用したのもこのモデルだ。そのおかげもあり、ハンドリングはずいぶんと軽やか、かつシャープになった。
また、クラウンへ伝統的に搭載されていた直列6気筒エンジンは、V型6気筒エンジンに。ロイヤルとアスリート共通で、V6の2.5L(4GR-FSE型)と、3.0L(3GR-FSE)の2種類。
トランスミッションは前者が5速AT、後者は6速シーケンシャルシフト付きATだ。後期型では、3.0L・V6エンジンが、3.5L・V6エンジン(GR-FSE型)へと変更、さらにパワフルで切れのある加速が可能となった。
デザインもスポーティで若々しいスタイリングへと生まれ変わり、これまでのクラウンのイメージを一新させるものに。
筆者は2005年ごろ、当時最新の180系クラウンをベースとしたパトカーに、恥ずかしながら取り締まりを受けたことがある。当時筆者は、20代。切符を切られている最中、この180系クラウンのパトカーを目の前にして、不謹慎ではあるが、「かっこいいなぁ」と見とれてしまうほど、かっこよかった。
■100%成功とはならなかったがクラウンのイメージを変えた
若い世代に訴えかけるスポーティーグレードとして先代で復活したアスリートは12代目でも継承(写真右)
「ゼロクラウン」のキャッチフレーズは、「ZERO CROWN――かつて、このクルマはゴールだった。今、このクルマはスタートになる」(このキャッチフレーズから「ゼロクラウン」と呼ばれるようになった)。
このキャッチコピーには、日本人の価値観が変わってきたことに対する、トヨタの「危機感」が現れているように思う。
ゼロクラウンが登場した2000年代前半といえば、職業や働き方、ライフスタイルなどが多様化し始めたころ。若くして成功する者も増え、様々な年齢層で、好きなクルマを手に入れるようになった時代。
1980年代や1990年代のように、カローラ、マークIIとクルマをステップアップしながら乗り継ぎ、ようやく頂点にあるクラウンに乗るという、「いつかはクラウン」のシナリオが受け入れられなくなりつつあった。
トヨタとしては、確固たる地位を築いていた「クラウン」ブランドの未来に、「危機感」を覚えたのだろう。
デザインをスポーティに見せたり、3.5Lのハイパワーエンジンを投入したりと、これまでのまったり高級クラウン像とは決別するかのような「アスリート」グレードを用意(もちろんそれまでのクラウンを望む方にはロイヤルは残している)するなど、顧客を若返りさせたいというトヨタの思惑は、残念ながら100%成功とはならなかった。
しかし、確固たるブランドを崩そうと、チャレンジをした180系クラウンの姿は、今回の新型16代目クラウンにも通じるものがある。
セダンが受け入れられず、FRの価値も求められなくなり、また、急速に進む技術の進化や、環境性能が高い次元で必要となっているいま、クルマにおいて、これまでの「価値」は通用しなくなっている。
「セダン」であることやFRであること、そして伝統をもつモデルであることを武器にして生き抜いてきたクラウンにとって、この変化は特に厳しい。
この多様性の時代に、トヨタは、クロスオーバーやスポーツSUV、エステート、セダンと、多様な選択肢を用意することで、クラウンの可能性を探ろうとしているのだろう。
■新型ではパワートレインのバリエーションも豊富となるはず!!
2022年登場のトヨタ クラウンクロスオーバー。これまでのクラウンのイメージを一新させたゼロクラウンから、さらにもう一度生まれ変わろうとしている、クラウンの二度目のイノベーションだ
いよいよこの秋から、クラウンクロスオーバーが販売開始となる。続いてスポーツ、エステート、セダンが、1年半の間に続々と登場する計画だ。
この3車種はクラウンクロスオーバーと同じく、ハイブリッドのパワーユニットとなるのか、プラグインハイブリッドも出すのか、バッテリーEVになるのか、はたまた水素燃料車となるのか、現在全貌はわかっていないが、「選択肢を増やす」ため、極力バリエーションを増やしてくるだろう。
ここまでは、盛り上げることに成功している新型クラウンだが、本番はこれからだ。しかも、グローバルに広げていくという世界戦略車でもある。新たなステージに突入したクラウン。今回の「革命」は成功するのか、今後に注目だ。
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みんなのコメント
それまでのクラウンは、オジサンの乗り物でしたから。