22年間も販売された自動車界のシーラカンス
近年はモデルチェンジのサイクルが多少長期化する傾向がありますが、一時期は4年に1度が当たりまえという時代も存在しました。しかし、三菱初代「デボネア」は、基本設計やデザインを変更することなく、22年間も製造販売された「走るシーラカンス」と呼ばれる希少な車両です。そんなデボネアを所有し続けて50年。気付いたら「ミスター・デボネア」と呼ばれるほどの愛情を降り注ぐ、山添さんとその愛車をご紹介します。
三菱「デボネア」はフィアットとの提携でお蔵入り寸前だった!?「走るシーラカンス」は「クラウン」「セドグロ」と渡り合う志の高いクルマでした
初代ミニカから始まった三菱車生活
佐賀県嬉野市塩田町で開催された「塩田津で【勝手に】旧Car」で、歴史の重みを感じさせる1台の三菱「デボネア」が来場していた。オーナーは山添さん。三菱重工の社員だったことがきっかけで、三菱初代LA21型「ミニカ」を購入。そこから、家族が増えるたびに三菱車を乗り継いで、最終的に6人乗りが必要に。現在のようにミニバンなんて存在しない時代であり、しかも職業柄で三菱車限定という縛りあり。その中で見つけたのが、デボネアだった。
「私は三菱重工で、火力発電所などを設計するプラントエンジニアとして勤務していました。当時は、三菱の社員は三菱車に乗らなければいけないという規則が厳しくて。私が三菱車に乗り続けたのは、それが理由です(笑)」
定年まで勤め上げた山添さんは、最後まで乗り継いできたそう。そのなかでも長年連れ添ったデボネアに対する愛着が、もっとも深いのだ。
50年乗り続けたデボネア、現在の愛車は3台目
乗車定員が6名の三菱車という理由で、この初代を選んだ山添さん。当時は、三菱系列の企業の重役クラスが乗る車両というイメージだったが、ファミリーカーとして活用していたことで、愛着も深まった。最初に乗ったデボネアはサビなどで車体が酷くなったこともあり、2台目へと乗り換え。購入当初にその2台目のエンジンの不具合が発生したため、修理を依頼。しかしその時に修理担当店舗での作業ミスが発生し、エンジン不動というトラブルに巻き込まれてしまった。
「あの当時、私はオイルプレッシャースイッチの交換依頼をしたのですが、シリンダーブロックを留めるボルトを正しく入れずに、斜めに強引に締め付けたようで。それが原因でブロックが破損してしまったんですね。当初はその部分を修理してもらって乗り続けようと思ったのですが、最終的には代替え車を探してもらうことになりました」
そこで見つかったのが、今でも所有し続けるこの1975年式。前オーナーは、取引先の下請け企業の社長さんだったようで、走行は2万kmほど。エンジンがOHVからOHCへと変更された、サターン6を搭載した最上級グレード、KUだった。
「手に入れてから50年。大がかりなレストアはせずに、基本的に消耗品の交換だけで乗り続けています。現在は部品取りも含めて数台所有しており、それらのパーツを使えば3台は同じ車両が作れると思います」
販売当時は不人気車だった初代デボネアも、ライバル車にはない重厚感やデザイン性が受け入れられ、今では旧車好きにはたまらない存在だ。山添さんにとっては、入手するきっかけは会社の都合だったとはいえ、一生の伴侶となる愛車に50年も前に出会えたことが、偶然ではなく必然だったのだろう。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)
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