温故知新 500eやクーパー Eと同じ立ち位置
ルノーのCEO、ルカ・デ・メオ氏が温故知新を意図した「ルノーリューション」を掲げてから4年。その軸になっていたのが、半世紀前に発売された小さなハッチバック、「5:サンク」の復活だった。
【画像】電動で蘇った「サンク」 ルノー5 E-テック 競合クラスのバッテリーEV 半世紀前のオリジナルも 全129枚
フランスへ手頃な移動手段を提供したオリジナルの役割を、バッテリーEVの時代に再現しようというアイデアだ。フィアットにおける500eや、ミニにおけるクーパー Eと同じ立ち位置が想定されてもいる。
先行してお披露目されていた、5のコンセプトカーはカッコよかった。そして、開発が急ピッチで進んだにも関わらず、量産仕様もカッコいい。見た目に相応しい中身を宿しているのか、試乗で確かめる時がやって来た。
スタイリングは、オリジナルの特徴を巧みにモダナイズしたもの。全長は3920mmで、全幅は1770mm。現行のルノー・クリオ(ルーテシア)より幅が狭く、全高は1500mmあり高い。それでも、地面に低く構えたような雰囲気が好ましい。
凛々しくシャープな容姿は、5ターボと重なるよう。選べるボディカラーは、鮮やかな5色が用意された。
プラットフォームは、AmpR(アンペア)スモールという名の、バッテリーEV専用アーキテクチャ。フロントサスペンションはストラット式で、ルノー・キャプチャー譲り。リアは、グループ内のダチア・ダスター由来のマルチリンク式を採用する。
華やかで現代的なインテリア 後席は狭め
インテリアは、華やかで現代的。初代5を想起させるスタイリングと、しっかりコーディネートされている。運転姿勢は快適で、シートの掛け心地もバッチリ。座面が低く、包まれ感がある。
後席側は、足元の空間がやや狭い。平均的な身長のドライバーの場合、後ろの空間は制限されてしまう。5ドアだから、乗降性は良いけれど。
荷室容量は277Lと、このクラスでは広い方。クーパー Eは210Lだ。ただし床面の位置が高く、重い荷物を載せるのは少し大変かもしれない。
試乗車のダッシュボードは、ブルーのデニムで仕立てられていたが、イエローも用意されている。10.0インチのタッチモニターとメーター用モニターが据えられていても、車内の主役はそれではないのが好ましい。
インフォテインメント・システムは、グーグルの技術を利用したもの。入力への反応は素早く、現在のシステムでは完成度が高い部類に入るだろう。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには、無線で対応する。
車載機能の多くはタッチモニターを介して操作するが、ヒーターや運転支援システムなどには、実際に押せるハードスイッチが用意されている。このバランスも良好だ。
ステアリングホイールやパワーウインドウのスイッチは、クリオからの流用。内装の下の方は硬い樹脂のままだが、普段目につく領域は素敵だし、コストと耐久性を考えれば納得できる。
普段使いで驚くほど快適な走り アルピーヌ仕様も
パワートレインは、119psの駆動用モーターに40kWhの駆動用バッテリーという組み合わせと、150psに52kWhの組み合わせの2択。航続距離は前者で305km、今回試乗した後者で402kmがうたわれる。
運転体験はホットハッチ的ではない。硬めの乗り心地ですばしっこいというより、普段使いで驚くほど快適。市民の足になるハッチバックとして、悪い設定ではないと思う。
動力性能は、過不足ない水準。フロントタイヤがむずがるほど、鋭い加速は披露しない。0-100km/h加速は8.0秒で、80km/hを過ぎると勢いは低下していく。
ブレーキの反応は素晴らしい。ペダルの感触は一貫性が高く、筆者が試乗したバッテリーEVの中でも最高水準だろう。回生ブレーキと摩擦ブレーキの協調性が高く、引き継ぎはシームレスだ。
乗り心地は非常にしなやか。アスファルトが剥がれた穴も、速度抑止用のスピードバンプも、滑らかに乗り越える。同時に、高速道路での安定性も素晴らしい。AUTOCARが2024年のベスト・コンパクトカーに選んだ、ルーテシアと共通する強みだ。
操縦性は軽快で、漸進的なステアリングを活かし、市街地を爽快に駆け回れる。ただし、速度上昇とともにアンダーステアが強くなり、回頭性が緩く感じられるようになる。高めの速度域では、クーパー Eの方が楽しい。
とはいえ洗練性は高く、運転がつまらないわけではない。追って、218psのアルピーヌ仕様も控えている。専用サスとブレーキでシャシーを強化し、ホットに仕立てる余地は充分にある。
現実の航続距離は320km クーパー Eのライバル
筆者が試乗したのはデンマーク郊外だったが、過ごしやすい天気での航続距離は約320km。気温の違いでどう変化するのか、改めて確かめる必要はありそうだ。
トリムグレードは、エボリューション、テクノ、アイコニックの3段階。インテリアのカラーは、グレードによって決まるという。
英国価格は、エボリューション・グレードで約2万3000ポンド(約442万円)からが見込まれる。クーパー Eは約3万ポンド(約576万円)からだから、お手頃に設定されるようだ。
特別仕様として、テニスの全仏オープンとコラボレーションした、ローラン・ギャロス仕様も発表済み。テニスコートをイメージした色の、カーペットが特徴となる。
歴史的で象徴的なモデルを、巧みに現代へ蘇らせたルノー。AUTOCARでは、このアプローチを高く評価したいと思う。
魅力的なデザインと快適性重視の走りは、非常に好ましい。心地良いシートや、内装とタッチモニターとのバランスも良い。普段使いのクルマとして、過度にスポーティである必要はないだろう。
クーパー Eの本当のライバルが、いよいよ登場した。ブラボー、ルノーリューション!
◯:優れた乗り心地 コストパフォーマンスの高さ インテリアデザイン
△:やや短めの航続距離 高速域での動力性能の低下 狭めのリアシート
ルノー5 E-テック・エレクトリック 150HP コンフォートレンジ・テクノ(欧州仕様)のスペック
英国価格:約2万7000ポンド(約518万円/予想)
全長:3920mm
全幅:1770mm
全高:1500mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:8.0秒
航続距離:402km
電費:6.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1449kg
パワートレイン:AC同期モーター
駆動用バッテリー:52kWh
急速充電能力:100kW
最高出力:150ps
最大トルク:24.9kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
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みんなのコメント
横からのデザインとかいいのに。サンクの面影もある。
ライトは少しクセあるけど。