フォルクスワーゲンは2020年9月25日、本社のあるウォルフスブルグでオンライン形式でMEBプラットフォームを採用した電気自動車シリーズ第2弾となるEV SUV「ID.4」を発表しました。
メルセデス・ベンツ CLS「MBUX」を標準装備するなど一部改良
モデル概要
このID.4は走行中の排気ガスゼロであることはもちろん、生産もCO2排出を抑制したカーボンニュートラルなツヴィッカウ工場で生産されることもアピールポイントです。ツヴィッカウ工場はヨーロッパ市場、先進国市場を担当し、中国では仏山、安平工場で2020年末に生産を開始します。そして2022年からは、フォルクスワーゲン・エムデン工場とチャタヌーガ工場(アメリカ)でもID.4を生産する計画となっており、まさにグローバル電気自動車として展開されることになっています。
ID.4は世界最大のボリュームを持つCセグメントに投入されるSUVです。すなわちヨーロッパ市場にターゲットを絞ったCセグメント ハッチバックのID.3とは異なり、ID.4はグローバル市場向けの初の電気自動車と位置付けられ、このモデルによりe-モビリティ専用に開発されたMEB(モジュラーエレクトリックドライブマトリックス)プラットフォームを世界中に本格的に展開する役割を担っているわけです。言い換えれば、フォルクスワーゲンの電気自動車攻勢の先頭に立つモデルということができます。
フォルクスワーゲン・グループでは、ID.4をベースにしたSUVをアウディとシュコダ・ブランドでも発売する予定です。
RR駆動と大容量バッテリー
ID.4は、フォルクスワーゲンが市場に導入する最初のSUVモデルの電気自動車で、広いスペースや高い拡張性など、世界中の顧客がSUVに求める優位点をすべて盛り込んでいます。
そのためオールラウンドな特性のクルマであり、スポーティでありながらも、運転しやすく、快適に走行することを目指しています。バッテリー容量は最大77kWh(正味電力・グロス82kWh。オプションで52kWhも設定される予定)で、航続距離は最大520km(WLTPモード)と電気自動車として最長レベルになっています。
バッテリーは乗員コンパートメントの床下に搭載されているため、低重心が実現し、優れたダイナミック性能を実現。永久磁石同期式の駆動モーターはリヤアクスル上に搭載されるRR駆動方式を採用しています。モーター出力は1204ps(150kW)の出力を発生し、0-100km/h加速は8.5秒、最高速度は160km/hと動力性能の高さもアピールポイントになっています。
後輪駆動による高いトラクション性能と210mmという最低地上高により、SUVモデルとして卓越した走破性能も備えています。また引き続き、フロントにもモーターを搭載した4WDモデルも追加され、4WDモデルはトータル306psを発生するパワフルなモデルになります。
デザイン
ID.4のエクステリアは、きわめてシンプルかつモダンなデザインとし、アスリートを思わせるプロポーションとしています。クリアで流れるようなデザインは自然からヒントを得たもので、Cd=0.28という非常に優れた空気抵抗係数を達成。高速電費を向上させるために空力性能が極めて重要なため、ハイレベルのCd値を追求しているわけです。
ホイールは最大で21インチサイズで、空力重視のデザインを採用しています。
ヘッドライトは、標準バージョンでも多数のLEDを使用し、テールライトは全モデルがLED式となっています。最上位バージョンは、最も先進的な環境対話(インタラクティブ)という画期的な機能を備えた「IQ.ライト」と呼ばれるLEDマトリクスヘッドライトが装備されています。
このヘッドライトは、回転式のレンズモジュールが動いて乗員が車両に乗り込むのを歓迎する表情にしたり、路面に照射するビームは高度に制御されています。このヘッドライトと組み合わせて、リヤには新しい3D LEDテールライトが装着されます。このテールライトは、非常に均質で明るい赤い光が特長です。
パッケージングと装備
ID.4の全長は4584mmm、全幅1852mm、全高1631mm、ホイールベース2771mmでCセグメント+のサイズであり、ティグアンに近似したサイズとなっています。なお、車両重量は2124kgです。
MEB(モジュラーエレクトリックドライブマトリクス)プラットフォームを採用しており、その結果乗員/ラゲッジスペースが最優先され、キャビンとコンポーネンツは革新的な手法で分割されています。
そのため、従来のSUVカテゴリーで考えると、ひとクラス上に相当する広い室内スペースが実現しています。ラゲージ容量は543Lで、リヤシートバックを折りたたむことによって1575Lにまで拡大します。
インテリアカラーと素材は、現代的でありながらも、自宅のリビングにいるような落ち着きも感じさせるデザインになっています。
ID.4は、電動式テールゲート、ルーフレール、けん引用ブラケットなどを装備しています。そして室内の操作系は、従来タイプのボタンやスイッチをなくした、新たなコンセプトが採用されています。操作は、2つのディスプレイを介して行ない、そのうちの1つは最大12インチのディスプレイで、タッチ機能に加えて、「ハローID.」と呼ばれる日常会話に対応したボイスコントロール機能を備えています。
新しいID.ライト(フロントウィンドウ下の細いライトストリップ)は、ドライバーを直感的にサポートします。AR(拡張現実)テクノロジーを採用したオプションのヘッドアップディスプレイでは、現実に見える風景に様々な情報を重ね合わせることができます。例えば、右左折の際には方向を指示する矢印が適切な車線の路面に投影されます。
「ディスカバープロ」ナビゲーションシステムは、「We Connect Start」オンラインサービスが組み込まれています。「IQ.ドライブ」アシストシステム、とくにトラベルアシストは、リラックスした状態でのドライビングを実現しています。
ID.4に搭載される車載ソフトウェアとハードウェアは、完全に新しいアーキテクチャーに基づいて設計されており、車両の購入後にユーザーが通信を通してアップデートすることが可能なOTAも搭載しています。
充電
フォルクスワーゲンは、「ID.」モデルの発表に合わせ「We Charge(ウイチャージ)」と呼ぶコネクテッド機能を備えた充電パッケージを市場に導入しています。これによって、自宅でも、外出先でも、あるいはロングドライブの旅先でも、あらゆる状況で最適な充電を行なうことができます。
ID.4は、高圧直流の高速充電ステーションを利用することにより、約30分で320km(出力125kW急速充電器を使用)を走行できる容量を充電することができます。200Vの交流・普通充電は最高11kW充電に対応しており、従来より高速の充電が可能です。
これと並行して、フォルクスワーゲンは、「ID.」の各モデルを中心とした、持続可能なe-モビリティのエコシステムの構築にも取り組んでいます。ID.4は、カーボンニュートラルな工場で生産されています。さらにユーザーがグリーン電力を充電に使用することも注力しています。
今回の発表では、価格は発表されていませんが、価格面でもグローバル規模のモデルであることを前提に、従来の内燃エンジン車に近い価格となることが予想されます。
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