スズキの営業利益、前期比33.7%減
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】日本では売っていないスズキ車6選&2020年3月期の決算説明会 配布資料【くわしく見る】 全100枚
やはり、スズキの当期決算は厳しい結果となった。
5月に入り、自動車メーカー各社が決算報告をおこなっているが、新型コロナウイルス感染拡大の世界各地への影響が色濃く出ている。
スズキも同様の傾向が出ることは予測されていたが、スズキは他の日系メーカーとは違う課題を抱えている。
それが、インドだ。
今回の発表では改めて、スズキにとってインドが最重要市場であることがわかる。
2020年3月期の売上高は、前期比9.9%減の3兆4884億円となり、スバル、マツダを抑えて、日系メーカー第4位の座をなんとか守った。
営業利益
減収は3期振りだ。営業利益は33.7%減(営業利益率6.2%)で、2期連続の減益に甘んじた。
2015年に発表した、新中期経営計画「SUZUKI NEXT 100」(2015年度~2020年度)で掲げた2019年度目標は、売上高3兆7000億円、営業利益率7.0%だった。
売上高
売上高では2018年3月期(3兆7572億円)と2019年3月期(3兆8715億円)と目標値をクリアしていたが、当期は目標に届かなかった。
営業利益率
営業利益率では、2017年3月期(8.4%)、2018年3月期(10.0%)、2019年3月期(8.4%)だったが、こちらも当期は目標値に届かず。
スズキによると、売上高の減少の原因は「インド四輪市場の回復遅れ、為替影響、そして新型コロナウイルス影響等」としている。
コロナより先に、インド市場での四輪動向がスズキ事業全体を直撃したのだ。
日本の2倍売るインド・マーケット
インドでの動向を見るため、まずスズキの事業構成の全体像を確認する。
売上高で見ると、全体の90%が四輪事業、6%が二輪事業、その他はマリン事業の船外機および電動くるまいす事業などだ。
前期比で売上高は、四輪事業が10.6%減(営業利益35.1%減)、二輪事業が4.9%減(80.9%減)と大きく落ち込んだ。
一方、マリン事業等では高齢者の免許返納などの社会背景により電動くるまいすの販売が好調で5.4%増(1.6%増)となった。
では、四輪事業の内訳を生産台数で見る。
世界生産は296万7000台。このうち、53%がインドで、日本は31%。次いで、アジア(インドネシア、パキスタン、タイ、中国、ミャンマー)が9%、残りが欧州となる。
販売で見ると、総数285万2000台のうち、海外輸出が少ないインドが50%で最も多く、日本は海外輸出分があるため23%と、製造における世界比率より数値が下がる。
このように、スズキはインドで日本の2倍以上の新車を売っている。
軽自動車ベースから、小型車Aセグメント、Bセグメント、Cセグメント、さらに商用車を含めて10車種以上を投入している。
このインドで販売台数が前期175万4000台から当期143万6000台へと18.1%減少した。
モデル別で見ると、販売価格が低い軽自動車ベースの減少度合いが最も大きい。
背景には、インド経済における根本的な課題がある。
インド政府の国民車構想に参加
インドは人口が日本の10倍以上の約13億4200万人で、中国に次ぐ第2位だ。
人口分布では若年層が多いため、2025年には、政府による1人っ子政策や高齢化が進む中国を抜いて人口最多国になる可能性が高い。特徴としては、文化の多様性がある。宗教は、主に6つ(ヒンドゥ教80%、イスラム教13%、仏教0.8%等)あり、言語は22の公用語と1600以上の方言がある。
そうした、日本とは社会環境が大きく違うインドで現在(2020年5月)、スズキ以外に世界各メーカーが現地生産をおこなっているが、乗用車市場のシェアの約半数がスズキが占める。
なぜなのか?
理由は、1980年代前半、インド政府が国民車構想で海外自動車メーカー各社に共同事業を打診したところ、最も熱心にインド側の話を聞いたのがスズキだったからだ。
対応したのは、鈴木修(現会長)だ。
鈴木会長はこれまで、各種メディアでの取材で当時の思いについて語っている。
低価格をウリに市場開拓を狙ったアルトなどで四輪事業の拡大を目指しても、四輪後発メーカーでは他社に対抗することは難しく、社員の意気を上げるためにも「どこかでナンバーワンになるべき」という判断があったという。
1981年、インド国営のマルチ・ウドヨグ社が設立され、翌82年にスズキはインド政府と国民車生産に関する合弁事業に正式調印した。
インド経済成長に陰り 負の連鎖に
インド市場が本格的に成長したのは、1996年の乗用車参入規制が撤廃されてからだ。
2000年代に入ると、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が経済新興国と呼ばれ世界からの投資が集まり経済が急成長を始める。
インドは96年の規制緩和から10年間で、自動車市場規模は2.3倍になった。
スズキは、国民車「マルチ800」の生産を立ち上げたニューデリー郊外のハリアナ州グルガオン工場をインドでのマザー工場とし、2007年には同州内にマネサール工場の稼働開始。
近年では2017年2月、インド北西部のグジャラート州で新工場が稼働した。
インド自動車工業会は、2030年のインド市場規模が1000万台になると予測しており、そうした未来への投資としてスズキはインドでの生産能力を拡大してきた。
だが、2019年に入りインド経済成長に陰りが見えてきた。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、問題は国営銀行などの金融機関で積み上げている不良債権だという。
自動車ローンに関する金融機関の貸し渋り、自賠責保険料の値上げ、燃料価格の上昇などが、自動車販売に負の連鎖を生んでいる。
これまでの経済成長を支えてきた、モディ首相が2019年5月に第二期政権となり、経済対策をどう舵取りするのか、というタイミングでのコロナ禍である。
インド頼みのスズキ、正念場である。
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みんなのコメント
安くても良いクルマが揃ってる。米国頼みのスバル、イメージ悪すぎの三菱、国内軽視の日産、N-BOX頼みのホンダ、トヨタの下請でしのぐダイハツとトヨタ以外少なくとも国内市場ではスズキが一番タマが豊富だし致命的な問題も無い。インドが仮に転けても東南アジア、欧州にシフトしやすい。大体コロナでどこも赤なのにスズキだけじゃ無いでしょ。インドが持ち直せば問題無くなる訳だし。
インドのスズキ車は現地に合わせた仕様だけど、日本でも売って欲しいのがある