■3列シート車を持たないメーカーの販売スタッフは「正直ツラい」と嘆く
2022年8月、スズキは「ランディ」をフルモデルチェンジしました。トヨタからのOEM供給モデルで、ベースは人気ミニバンの「ノア」です。
スズキはこれまでもOEMで3列シートのミニバンをラインナップしユーザーの需要に応えていましたが、もともと自社でラインナップしていたメーカーのなかには、ミニバンの製造自体を止めてしまったところもあります。
効率化による経営体質の改善も重要ですが、販売現場では「やはりミニバンが欲しい」とする反応も見られるようです。
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8月頭にフルモデルチェンジを発表したスズキの3列シートミニバンである新型「ランディ」。
もしかしたらあまり馴染みのない車名かもしれませんが、実は2007年から販売が続けられているモデルで、現行型で4代目となります。
とはいえこのランディはスズキが生産するモデルではなく、他メーカーからOEM供給を受けて販売されているもので、初代から先代モデルまでは日産のミニバン「セレナ」がベースとなっていました。
しかし4代目モデルは、新たにベース車を、2022年1月にフルモデルチェンジしたばかりのトヨタ 新型「ノア」に一新。
従来型もマイルドハイブリッド仕様はありましたが、新型では待望のストロングハイブリッド仕様もラインアップするものへと大きく変貌を遂げたのです。
これは2019年8月にトヨタとスズキが資本提携を発表し、協力関係を結んだことが影響しており、すでに日本国外ではトヨタとスズキが互いに車両をOEM提供し、補完し合っています。
さらに高い商品力を手に入れた新型ランディですが、同じくトヨタと協力関係にあるスバルやマツダといった3列シートミニバンを持たないメーカーはどう考えているのでしょうか?
各メーカーは、かつて用意されていた自社のミニバン廃止に対し“選択と集中”をキーワードにそれぞれの得意分野の車種に力を入れたとしています。
しかし、クルマを販売する現場にとっては売れ筋の車種は喉から手が出るほど欲しいハズ。
そこで今回は首都圏にある両社の新車ディーラーで実際のところを聞いてみました。
まずはスバル。スバルでは2018年まで3列シート7人乗りの「エクシーガ クロスオーバー7」(2015年4月までは「エクシーガ」)を販売していましたが、終売後は多人数乗車が可能なモデルはラインナップされていません。
首都圏にあるスバル販売店の営業スタッフは次のように話します。
「エクシーガの最終型をお買いになったお客さまも2度目の車検を迎える時期となってきており、後継車種となる3列シート車がないのは、正直ツラいところですね。
お子様が大きくなって3列シートが不要となったお客さまはSUVの「アウトバック」や「フォレスター」、またダウンサイジングでコンパクトSUVの「XV」などにお乗り換えいただくケースもありますが、まだ3列シートが必要というお客さまもいらっしゃいますので……」
ではノアがOEM供給されると嬉しいですか? という問いにはこう答えます。
「もちろん、ご案内できる車種が増えることは嬉しいですが、スバルを選ばれるお客さまは水平対向エンジンやシンメトリカルAWDといったメカニズムに魅力を感じて購入される方が多いので、そういった部分で期待に応えることができるかどうかが気になりますね」
このように「スバリスト」と呼ばれるようなコアなファンが多いスバルならではの悩みも見え隠れしていました。
■3列シート「SUV」をラインナップする「マツダ」の場合は
続いてはマツダの事情について考察します。
マツダでは現行モデルとして、3列シートを備えるSUVである「CX-8」(6人乗り及び7人乗り)が存在し、ミニバンではないものの、3列シート需要にも対応できるラインナップとなっています。
こちらも首都圏近県にあるマツダ販売店の営業スタッフに話を聞きました。
「ミニバンを検討されているお客さまのなかには、スタイリッシュなスタイルや心地よい走りに魅力を感じ、CX-8を買われる方も少なくありません。
そういったお客さまは『3列シートがあればスライドドアじゃなくても問題ないね』とおっしゃっていただけます」
このように、ミニバンと価格帯の近いCX-8は、十分対等に渡り合えていると誇らしげに語ってくれました。
しかし一方で次のようにも話します。
「ただこれはミニバンと比較検討されているお客さまの話であって、すでにミニバンに乗られているお客さまは、やはりスライドドアの利便性の高さや広い頭上高に魅力を感じされています。
そのため(マツダに従来ラインナップされていたミニバン)「ビアンテ」や「MPV」といった3列シートミニバンから、CX-8への乗り換えはそこまで多くないんです。
そうなるとやっぱりラインナップのひとつとして、スライドドア付きの3列シートミニバンは欲しいところですね。
もともとウチではトヨタさんのハイブリッド車も扱っていますし(商用バン「プロボックス」OEMの「ファミリアバン」)、ノウハウはスズキさんよりもあるんじゃないですかね。
ただ(箱型デザインの)新型ノアだと、最近のマツダのスタイリッシュな『魂動(こどう)デザイン』のテイストとは大きく変わってきてしまいますけど……」
両ディーラーとも自社のテイストと違う点は気になるといいつつも、やはりラインアップの層は厚いに越したことはない、というのが共通の意見となっていました。
確かにメーカー側の思惑はあれど、販売の現場は「クルマを売らなければいけない」という大前提があるため、ある程度安定した需要があるカテゴリーのモデルは用意しておいて欲しい! というのが本音のようです。
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