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中嶋悟総監督の溢れるドライバー愛+伊沢拓也監督の細かなプロ意識。新体制ナカジマ・レーシングの大きな手応え

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中嶋悟総監督の溢れるドライバー愛+伊沢拓也監督の細かなプロ意識。新体制ナカジマ・レーシングの大きな手応え

 今年のスーパーフォーミュラでは新しい顔ぶれのドライバーの参戦とともに、組織体制を変更したチームも多い。その中でもオフテストで好結果を残したTCS NAKAJIMA RACINGの注目度が上がっている。今年は中嶋悟総監督に加え、伊沢拓也氏が監督として就任。参戦2年目の佐藤蓮、そして2度のチャンピオンに輝いた山本尚貴の布陣の中で伊沢監督はどのような役割を担うのか。中嶋総監督、そして伊沢監督それぞれに話を聞いた。

 まずは中嶋総監督に、スーパーフォーミュラでの伊沢監督起用の意図について聞く。

【動画】中嶋悟とエプソンの物語。40年にわたって続くパートナーシップを当時の映像とともに振り返る

「現実的に考えればまだ僕も現場にいるわけですし、今までと同じで変わらないですけど、伊沢は十分なキャリアがあってドライバーとのコミュニケーションの部分、そして年齢も僕より山本、佐藤に近いですし、今時の話がしやすいんじゃないかと(苦笑)。チーム全体を考えた時にも、そういう役割がいいんじゃないかなと」と中嶋監督。

 もちろん、山本、佐藤の両ドライバーのパフォーマンス、そしてチームとしてのリザルト向上が一番の目的はであるが、70歳となった中嶋監督のこれからのドライバー、そして国内レース界の今後を見据えての狙いもあった。

「あとは彼(伊沢)の将来的に、未来永劫ドライバーとして走り続けられるわけではないので、彼が今後どのような道に進むかわかりませんが、このような仕事をしてみて、性に合うかどうか、試してもらえればと思っています。このような仕事もひとつの選択肢になるのか、ならないのかとか、これを機に全部お前に任せるというわけではないです。引き続きGTの方ではドライバーとしてやってもらいますからね」

 長年に渡ってホンダの若手ドライバー育成組織であるSRS-F(現HRS-Suzuka)の校長を務め上げ、そしてJRP(株式会社日本レースプロモーション)会長を今年の春に退いたといえども、中嶋総監督の国内レースへの熱量は変わらない。

「ドライバーを作るだけ作って、それで『さよなら』はないと思うので。ドライバーを最後まできちんとサポートしないと、とは思いますね」

 改めて言うのも憚れるが、中嶋悟監督も今後のレース界への思いは強く、特にドライバーへの愛情は熱い。伊沢の今後を見据え、そして当然、現役であるドライバーにもサポートを惜しまない。チャンピオンとしてナカジマ・レーシングに移籍してこの2年、なかなか思うように結果の出なかった山本尚貴を常に励まし、山本の意向に沿う形で、マシンの様々なパーツの交換や購入を後押しし、サポートしてきた。

「(この2年、山本の意向に応えてきた)そうですね。やっぱり、あれだけのキャリアを持っていて、もともと彼がウチに来てくれた時には、いい成績を出してもらえる、そして若いドライバーへのアドバイスを含めてやってほしかったわけですから。彼のいろいろな考えの中で『あれが』『これが』というのがあれば、対応できるものはしてきたつもりです。やはり、ドライバーが嫌いなクルマに乗って結果を出せというのは、F3ならともかく、このカテゴリーではね。だからドライバーが心ゆくまで、やれる範囲でやっているというところですね」

 その山本の復活、そして2年目の佐藤蓮のパフォーマンスを最大限に引き出す役割のひとつのきっかけとして、伊沢拓也監督に就任を要請した。

「僕は僕で年齢的にも頭の回転が早くはないから、そういう意味では本当の現場での会話がしやすいだろうなと。山本、佐藤にとってもいいんじゃないかなと思った次第です。やってくれと。いや違うな、やって頂けますか? と(苦笑)」

 一方の伊沢も、その言葉を受けたわけではないが、中嶋総監督の意図と自分の役割に同調する。

「肩書きは監督になっていますけど、中嶋さんが総監督なのは一緒なので、僕の認識では昨年までやらせて頂いていたアドバイザーとしての延長と考えています。監督となることで、エントラントミーティングや他のチームとのやりとりなど仕事も増えますし、今年で中嶋レーシングが40周年になることで、ここからその先を考えて続けていきますよという体制だと勝手に解釈しています」

 一昨年にTEAM MUGEN、昨年はTEAM GOHでアドバイザー経験がある伊沢だが、その2年を踏まえて、実質3年目のアドバイザーとしての役割をどのように感じているのか。

「レース、特にスーパーフォーミュラののようなフォーミュラレースは特にドライバーとエンジニアがいればレースはできて、チームの仕事は回るんですよね。明確に監督、そしてアドバイザーとしての決まった役割というのはレースではないんですよ。いなくても回る存在だからこそ、ドライバー、チームにとってマイナスにはなりたくないですね」

「自分もこれまでドライバーとしてやってきて、国内のレースでアドバイザーという立場の人がいてやったことはない。ここ数年でできてきた新しいポジションだと思うんです。特にスーパーフォーミュラでその役割が特に多くなってきたと思っています。ですので、今までやってきた人のやり方を引き継いでというのではなくて、自分でチーム、ドライバーにプラスになるものを考えて、探さなければいけないという難しさがあります」

 アドバイザーという役割については、伊沢にとっても欧州経験が反面教師になっている面もある。

「おそらくF1とかヨーロッパのレースではこのような立場の人は多いと思います。自分も一時GP2に出ていた時、そのクルマに乗った経験がないようなスタッフが指示してきて、もちろん言葉の問題、文化の違いもあって、当時の僕は受け入れづらかったのを覚えています。その点、一応、今の自分はSF19までは乗った経験があってダラーラのシャシーの流れは理解しているので、ドライバーと同じ立場でのイメージはしやすいですよね」

 その伊沢監督(兼アドバイザー)、今年のドライバーふたりとチーム体制、そしてこのオフの出来栄えには、かなりの手応えがあるようだ。まずは2年目の佐藤蓮について聞く。

「ポテンシャルとしては、誰もが認めるスピードがあるのは間違いない。山本選手もある意味、気づいていると思います。ドライビングスタイルも言い方として特殊なところもあったりするんですけど、それがゆえに速い部分もある。山本選手が参考になるようなところもあると思います。ドライビングスタイルという面ではお互いにプラスになっているのではないかなと思います」

 2年目の佐藤には、コース上でのドライビング以上に、伊沢が伝えたいことがある。それは、プロドライバーとして心の持ちようや姿勢といった、メンタルの部分だ。

「厳しいことを言うつもりはないのですけど、レースでは速く走ることと、いい結果を出すと言うことは別だと思っています。蓮選手も比較的フォーミュラの経験が少ない中でスーパーフォーミュラまでステップアップしてきたので、山本選手、野尻(智紀)選手(TEAM MUGEN)レベルでいきなりできるとは思っていません。そこはチームのみんなでサポートしてあげて、彼のスピードがうまく結果に繋がるように、彼自身も意識改革が必要だと思います」

「僕がいつも言いたいことは、このスーパーフォーミュラに上がるまではたしかに大変だけど、ある意味、ここまでは自分のスピードの評価だけで来ることができるカテゴリーなんですよ。ですので、ここに来ることよりも、このカテゴリーで5年、10年、生き残ることの方が何十倍も大変なことだと思っています」

「プロのレーシングドライバーとして生きていく、生き残るために、ここから何をしなけれないけないのか。チームに雇ってもらって、お金をもらって職業としてプロ選手として成り立たせるということを学んでもらえれば。それには結果だけでなくて人間性や人気、スポンサー(お金)を持ち込むことも含めてのチームへの貢献など、プロのドライバーとして続けていくためにはいろいろな要素が必要になります」

 一方の山本には、若手の佐藤とは違った、伊沢なりのアプローチでサポートを試みている。

「山本選手とは比較的ずっとコミュニケーションをとってきている選手ですし、ナカジマ・レーシングでの2年間についてもなんとなくは状況は把握できています。僕がチームとはスーパーGTで一緒でしたので、チームスタッフの特徴や特性も見てきていますからね」

「山本選手は実績もある選手ですので、いいモノ、いい環境を与えることができれば、絶対に結果が出せると思って疑いません。もちろん、レーシングドライバーはいつもいい時ばかりではないので、うまく行っていない時に、少しでもいい方向に修正させるために、多少は誰かが悪者にならなければいけない時も出てくる。それをドライバーがやるとさらに面倒になる場合がある。ドライバーが言いづらいことを言うのも自分の役割のひとつだと思っていますし、昨年からの修正は少しはできていると思います」

 今年のナカジマ・レーシングは、昨年から担当エンジニアを入れ替えるなど、今年に向けてのアプローチを早い段階から進めてきていた。その背景には伊沢監督の意図があったことは言うまでもない。

「自分は昨年のルーキーテストからチームに入っていますが、去年のルーキーテストでチームも山本選手のやりたいこと、蓮選手の走りの特性を掴むことができて、今年のテストでそれをしっかりチームが表現することができた。このオフのテストを見てきて、ウチの出来が一番いい流れでできていると思っています。手応えはあります」

 改めて、実質アドバイザーの仕事には「面白いですよ。面白ですけど、自分のひと言で流れを崩してしまう可能性があることを考えると、怖いです」と、本音も明かした伊沢監督。今年で40周年の節目を迎えるナカジマ・レーシング、伝統ある名門が中嶋総監督+伊沢監督の強力な新体制で2023年のシーズンを迎える。

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