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なぜタクシーはガソリンでもディーゼルでもなくLPG対応エンジンを採用したのか!?

掲載 更新 35
なぜタクシーはガソリンでもディーゼルでもなくLPG対応エンジンを採用したのか!?

 走行距離に加え走行時間の長いタクシーは、LPG(液化石油ガス)に対応したエンジンを使うのが主流となっている。同じように燃費に有利なディーゼルエンジンもあるが、トラックはディーゼル、タクシーはLPGと二分化している。

 時々タクシーしかいないスタンドを見かけることがあるが、これがいわゆるオートガスステーションといわれるLPG給油施設だ。

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 それでは、なぜLPGがタクシー燃料の主流となったのだろうか。LPGの優位性を考察する。

文/片岡英明、写真/ベストカー編集部

【画像ギャラリー】隠れた大ヒット車!? 新時代のタクシー車両 ジャパンタクシーを写真で見る

■ジャパンタクシーもLPG仕様のハイブリッド!

2017年に登場したジャパンタクシー。LPG燃料を使用するハイブリッドだ

 日本のタクシーは、ここ数年で大きく様変わりしている。

 都市部で主役を務めているのは、ユニバーサルデザインを採用したハイトワゴン型のジャパンタクシーだ。コンパクトミニバンのシエンタをベースに、後席に座って快適なタクシーに仕立てている。

 ジャパンタクシーは、2017年秋に発売されるや瞬く間にタクシー業界を席巻し、隠れたヒット作となった。注目はパワートレインで、1.5Lエンジンにモーターを組み合わせたトヨタ自慢のハイブリッドシステムだ。しかも使用燃料は、LPG(液化石油ガス)なのである。

 ジャパンタクシーが登場する前の主役は、トヨタのコンフォート(クラウン・コンフォート)とXS10系クラウンセダンだった。

 小型タクシーとして開発されたコンフォートは、1995年にデビューしている。そのときの主役は2Lの直列4気筒OHVで、もちろんLPG仕様だ。また、2.4Lのディーゼルターボも設定し、こちらも人気が高かった。

ジャパンタクシー登場前のタクシー業界の主役はクラウン コンフォートだった

 タクシー業界で人気を二分していた日産も、この時期にはセドリックのほか、小型タクシーのクルーを用意している。

 トヨタと同じように直列6気筒のガソリンエンジンもあったが、主役は2L直列4気筒のLPG仕様だ。タクシーだけでなく自動車学校の教習車にもLPG仕様が多い。ぜいたくな2.8Lの直列6気筒ディーゼルもラインアップしていたが、これは少数派だった。

 それ以前に誕生したクラウンやセドリックのタクシー仕様も、中心となっているのはLPG仕様だ。

 この時代は一般の乗用車をLPG仕様に改造する人も少なからずいた。LPG仕様は1960年代からあるが、一緒に市場を開拓してきたディーゼル車を蹴落としてタクシーの主役になっている。ディーゼルエンジンより静かで振動も少ないからだ。ガソリンエンジンと比べても経済性において優れている。

■安価な燃料代と優れた環境性能で実はエコなLPG

クラウン コンフォートと人気を二分していた日産 セドリック

 LPG仕様のタクシーは、近くにオートガスステーションと呼ぶ専用のガススタンドがあれば、LPGを充填することが可能だ。

 液化石油ガスはプロパンを主成分としているが、ブタンなども入っている。圧縮することにより常温で簡単に液化できる気体状のガス燃料だから、燃料補給も簡単に行うことができる。タクシー事業者によっては自前のオートガスステーションを持っているところも少なくなかった。

 タクシー業界からLPGが好まれるのは、燃料代が安いからである。

 家庭用の燃料にも使われているから、ガソリンのように高い税率にすることができないのだ。そのためガソリンの3分の2ほどの価格だし、オイル交換の必要もない。燃費は少し前までは同等だった。だが、最近の日本車は燃費が良くなっているから燃費に関してはLPG仕様の方がちょっと不利と言えるだろう。

 ただし、主成分はプロパンなどの気体だから環境性能もそれなりに優れている。ディーゼルエンジンのようにNOx(窒素酸化物)やPMと呼ばれる粒子状物質の排出に頭を痛めることがない。燃料価格に加え、エミッションに関しても他の燃料より有利だ。

全長が短いジャパンタクシーは大きなLPGタンクの積載場所に苦労したはずだ

 弱点は、ガソリンエンジンよりパンチがないことだ。だが、最新のLPG仕様はスペック的に見劣りしていない。

 それよりも普及を妨げているのは、LPGを充填できるオートガスステーションが少ないことだ。全国には1500箇所くらいあるが、年を追うごとに減少している。地域によっては都や県をまたいで遠征しなければならない。長距離を走るときは不安になる。

 加えて、ガソリンスタンドのように無人化やセルフ化が認められていないのも泣きどころの1つだ。消防法令の厚い壁がセルフ化を阻んでいる。

 また、LPGのタンクはかなり大きいから、コンパクトカーには向かない。タクシーにセダンが多かったのは、トランクにタンクを積みやすかったからだ。全長が短いジャパンタクシーは、パッケージングに関して苦労の跡が見られる。メンテナンスなどの費用が高いのも弱点だ。

■販路拡大で逆風を吹き飛ばせ

一般にまで販路を広げてくれたら買いたい人もいるだろう

 LPGには逆風が吹いているが、その未来はディーゼルエンジンほど悲観的ではない。

 ジャパンタクシーの登場に加え、プリウスをLPG仕様に改造したタクシーも増えてきた。ハイブリッドシステムにLPGの組み合わせは、環境性能において魅力的だ。CO2の排出量は少ないし、燃費もグッと良くなる。充填する回数は、かなり少なくてすむはずだ。

 燃費の良さがオートガスステーションの廃業に大きく影響していることは否定できない。だが、LPG仕様のバリエーションがもっと増え、一般のユーザーの認知度が高まってくれば流れは変わっていくだろう。

 かつてのクルーやコンフォートのように、ジャパンタクシーの販路を一般の人にまで広げれば欲しがる人は多いはずである。また、ノアやセレナなどのミニバンにLPG仕様を設定すれば、買いたいと思う人が増えるだろう。

 乗用車だけでなく走るエリアが決まっている小型トラックなどもLPG仕様にすれば魅力を増す可能性がある。自動車メーカーだけでは飛躍は期待できないが、省庁やLPガス協会などを巻き込んでいけば飛躍の可能性はあると思うのだが……。

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