フランスのラグジュアリーブランド「DSオートモービルズ」が、新たなフラッグシップモデルとなる「DS9」の日本導入を発表した。新型車はブランド初となるオールニューセダンであることが最大の特徴だ。
セダン離れが叫ばれる今、高級車の王道を独自の世界観でアレンジし、攻めるアバンギャルドなブランドDSの最新モデルについて紹介しよう。
かつては爆売れだった!! バブル時代に生まれた心焦がしたセダン4選
文/大音安弘、写真/ステランティスジャパン
■新フラッグシップは王道のセダンに!
ステランティスジャパンは2022年3月17日、DSオートモビルズのラグジュアリーサルーン「DS9」を発表し、同日より販売を開始した。全車右ハンドル仕様となり、価格は630万~787.9万円となる。
DSブランドの新たなフラッグシップモデル「DS9」が日本上陸。ブランド初のセダンとなる
DSオートモビルズは、2009年にシトロエンのサブブランドとして誕生。その立ち位置は、本家のシトロエンよりも上の高級ブランドであった。往年のシトロエンの名車「DS」の名を冠したブランドだけに、単なる高級車ではなく、DS独自のアバンギャルドな内外装デザインを売りとした個性あふれるモデルを送り出した。
日本でも、2010年よりファーストモデルとなるコンパクトハッチ「DS3」の導入を皮切りに、クロスオーバーの「DS4」と「DS5」が導入された。
2014年より、シトロエンから独立したブランドとして「DSオートモビルズ」が誕生することが発表され、2015年より、シトロエンDSからDSに改めたモデルの販売を開始した。
最新ラインナップは、コンパクトな「DS3クロスバック」とミッドサイズの「DS7クロスバック」というふたつのクロスオーバーモデルだけであったが、そこに新フラッグシップの「DS9」が加わったというわけだ。
DSには、中国市場向けのセダン、「DS4」ブランドの新フラッグシップモデル「DS5LS」が存在したが、完全新設計のセダンは、このDS9が初となる。
■フレンチモデルらしい煌びやかなエクステリア
伸びやかなスタイルのボディは、全長4940×全幅1855×1460mmと大きめ。ホイールベースも2895mmを確保している。これはプジョーの4ドアクーペ「508」よりもひと回り大きなもの。
ベースとなるプラットフォームは、同じEMP2なのだが、その最新バージョンであり、ホイールベースも最大で、DS7クロスバックよりも長いほど。フラッグシップにふさわしい堂々たる風格を備えているのだ。
全長4940mmと2895mmのロングホイールベースが生む伸びやかなプロポーションは、フラッグシップらしい優雅さを放つ
そのスタイリングは、流麗なルーフラインこそ描いているが、正統なセダンのもの。大型のテールゲートを持つプジョー508とは異なり、完全に独立したトランクを備えるのも特筆すべきところ。
高級サルーンにふさわしい大型のフロントグリルの左右には、「DSアクティブLEDビジョン」と呼ばれるLEDライトユニットが備わるが、開錠時にLEDモジュールが、パープルの光を放ちながら、180度回転する演出を行い、オーナーを出迎える。
上質さを表現するべく、アクセントとなるメッキパーツが使われているが、その配置も独特。ボンネットの上にも配置され、その表面にはピラミッド模様が多数刻まれた精密な紋様が施されているなど、フランスの高級アクセサリーを彷彿させる仕上げとなっている。
華やかな演出はテールランプにも施されており、レーザー彫刻技術を用いたダイヤモンドカットのレンズデザインとなっている。インパクトも持たせながらも、ムードを壊さない上品さへの配慮が感じ取れるのは、DSらしい魅力だろう。
ダイヤモンドカットのテールレンズもDSの特徴。華やかだか、上品であることも大切にしている
■まさにサロンと呼びたくなるキャビン
インテリアは、まさに贅沢で快適な移動空間として構築されている。時計のベゼルデザインを取り入れたレザーシートは全車に標準化。ダッシュボードには、最新式のデジタルメーターと大型のタッチスクリーンを備えた現代的なものであるが、スイッチやメッキアクセントにローレット加工を施すなど、細部まで丁寧にデザインされている。
さらに現代車では、高級車の証といえるアナログ時計が、ダッシュボード上部に備わるが、これはフランスのラグジュアリー時計ブランド、「B.R.M」のアナログ時計。これには回転収納式のギミックが備わる凝りようだ。
緻密な装飾が優雅さを演出するコックピット。もちろん、先進機能も充実している
快適装備としては、SDナビゲーションシステム、ハイエンドオーディオメーカーFOCALの14スピーカー&515Wのサウンドシステム、フロントシートヒーター&ベンチレーション機能、スマートフォンワイヤレスチャージャーなどを全車に標準化。
最上位となる「オペラ」では、リアシートが「DSラウンジ」となり、後席左右のヒーターとベンチレーション機能、シートなどの操作機能付きの専用リアアームレストなどが追加され、エグゼクティブの快適な移動をサポートする。
ロングホイールベースが生むゆとりのキャビン。そのデザインもお洒落だ
■ガソリンとPHEVの選択が可能に
駆動方式は、前輪駆動仕様のみとなるが、パワーユニットは、ガソリンエンジンとPHEV「E-TENSE」の選択が可能だ。いずれも1.6L直列4気筒ターボエンジンを搭載するが、チューンが異なる。
まずPHEV「E-TENSE」だが、エンジン単体で最高出力200ps/6000rpm、最大トルク300Nm/3000rpmを発揮。これにモーターが組み合わされる。その性能は、最高出力110ps(81kW)、最大トルク320Nmと力強いもの。トータル性能は、250ps/360Nmとなる。
EVモードの最高速度は、135km/hなので、日本の道路事情ではEV感覚で使うことも可能。その航続距離は、61km(WLTCモード燃費)と実用的。搭載される15.6kWhのリチウムイオンバッテリーは、200W普通充電は3kW出力で約5時間、6kW出力で約2.5時間なので、簡単に満充電にすることができる。ハイブリッド状態の燃費は、14.0km/L(WLTCモード燃費)となる。
200Vの普通充電に対応し、EV航続距離は61kmを備える
一方、ガソリン車は、最高出力225ps/5500rpm、最大トルク300Nm/1900rpmとピュアエンジン車らしい専用セッティングを採用。出力の向上と最大トルクの発生回転数が抑えられている。燃費消費率は、14.4km/L(WLTCモード燃費)となる。トランスミッションは、いずれも8速ATを組み合わせている。
■トリムレベルはいずれもふたつ
グレード構成は、「REVOLI(リヴォリ)」と最上位の「OPERA(オペラ)」の2種類。いずれもガソリン車とPHEV「E-TENSE」の選択が可能だ。2グレードの違いは、内装の装飾と装備レベルだ。
「REVOLI」は、インテリアがブラック基調となり、シートとドアトリムなどもブラックレザーに。その表皮にはダイヤモンドステッチが施される。装備面は充実しており、前後カメラ、衝突被害軽減ブレーキ、DSコネクテッドパイロット(トラフィックジャムアシスト/レーンポジショニングアシスト付)、アクティブクルーズコントロール(ACC)、DSパークパイロットなどの先進の安全運転支援機能も標準化。
上記のナビや高級オーディオシステムに加え、ETC2.0車載器、19インチアロイホイール、快適な乗り心地を提供するアクティブスキャンサスペンションまで備わる。
RIVOLIのブラックインテリア。そのクールな雰囲気は悪くない選択だ
最上位の「OPERA」は、インテリアがボルドー基調となり、ナッパレザーにアップデートされ、シート表皮はウオッチベゼルパターンとなり、ルーフランニングもアルカンタラ張りにするなどの視覚的な差別化が図られる。
さらに装備面では、DSナイトビジョン、スライディングガラスルーフ、DSラウンジリアシートなどが追加される。後席の利用頻度が高い人は、OPERAがお薦めだが、ドライバーズカーならば、いずれも魅力的な内容となっている。
個性的なアクセントと美しいボディラインは、ほかの高級車と並んでも存在感を示すだろう
これまでハッチバックとクロスオーバーSUVを中心に展開してきたDSだが、ついにラグジュアリーカーの王道であるセダンを投入してきた。かつてDSのデザイントップにインタビューした際、高級車にとってセダンの重要性と美しさを語ってくれたことがあった。
それだけDS9の投入は、DSにとって念願だったといえる。日本では、世界の名立たる高級車が手に入る環境にあるが、そのなかでいかに存在感を示すか、DS9の活躍が注目される。少なくとも、王道のドイツ車だけでなく、英国車や米国車などの名立たる高級車たちと並べても、しっかりと存在感を示すことはできそうだ。
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