装備を徹底して省いたXGはジムニーのみの設定
私自身は、LEDヘッドランプの表情、デザインが気に入って「XC」一択(見た目は大事)だったが、どのグレードも実に魅力なので今回はその特徴は少し解説したい。
貴重な初代ジムニーに遭遇! 「ジムニーXC 4AT」と「ジムニーシエラJC」に比較試乗! 【出来利弘のジムニーオーナーレポート:Vol.4】
デビュー時のカタログを見ると最後のページはブレード別の主要装備とボディカラーを見ることができる。ジムニーとジムニーシエラで基本的に上級モデルの「XC」(シムニー)と「JC」(シエラ)、標準モデルと言える「XL」(ジムニー)と「JL」(シエラ)が同じ装備のため、グレード構成は実にシンプルでわかりやすい。
軽のジムニーのみ、さらに徹底して装備を簡略化した「XG」を設定しているのも素晴らしい。こちらは一体型リヤシートや、普通のメカニカルキーを採用。スモークガラスではないし、マニュアルエアコンなど、平成初期のクルマのようだが、カスタムベースなら、これで十分と思う人もいるはずだ。ラゲッジアクセサリーソケットなど便利な装備はそのままに残してくれているのも嬉しい。
最もシンプルな「XG」グレード。樹脂素材のドアミラー、フォブランプなし、ハロゲンヘッドライト、スチールホイール、クリアガラスなのがわかる。「XG」は各ドアノブ、リヤドアノブもブラックの樹脂素材そのもの、リヤガラスは透明(スモークでない)。「XG」は樹脂素材のドアノブ、その横には今や懐かしい形状の鍵穴のみ。ハロゲンヘッドランプ。「XG」はフォグランプも付かない。「XG」のドアミラーは樹脂素材のまま。「XL」と「JL」はブラック塗装。
全グレードがラダーフレーム、リジットサス、4WDであり、低燃費の最新インタークーラー付ツインカムターボエンジンを搭載していることを思えば、「XG」 5MTが145万8000円(消費税抜き135万円)は本当に安い。80年代の旧車ブームだが、それらと比較したら十分すぎるほどの豪華装備だ。エアバッグやABSなど基本安全装備は全グレード変わらない。
「XL」と「JL」とこの「XG」でも衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報機能、ハイビームアシストなどを備える「スズキ セーフティ サポート」を4万2120円プラスで選択できる素晴らしさだった(現在は全車標準装備)。ジムニー「XC」とシエラ「JC」は装備充実仕様
「XG」で十分だと思う人。あるいはアウトドアや趣味にお金を使いたいなど「実は金銭的にこれしか買えない」いう人もジムニーは買ってからカスタムすることで、自分仕様を作り上げていく夢を与えてくれるのだ。
「XL」と「JL」とこの「XG」でも衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報機能、ハイビームアシストなどを備える「スズキ セーフティ サポート」を4万2120円プラスで選択できる素晴らしさだった(現在は全車標準装備)。
「XL」と「JL」は「いやいや、いくらカスタムベースとはいえ、現代の標準モデルとして、カラードドアハンドルや携帯リモコンでハンズフリーのキーレスエントリー、電動格納ミラー、フォグランプ、スモークガラス(リヤクオーター、バックドア)、オートエアコンは欲しいよね」という人向けだ。フロントシートは左右にシートヒーターを備え、リヤシートは左右独立式のリクライニング機構となり、シートを倒せばラゲッジボックスと合わせてフラットなスペースになる。
メーカーで装備しておいて欲しい部品は良心的に標準設定してくれている。その一方でハロゲンヘッドライト、ウレタンステアリング、16インチスチールホイールなど後からカスタムすることをイメージしやすい。例えば「XL」5MTは158万2200円(消費税抜き146万5000円)と「XG」に12万4200円プラスでグレードアップできるのだ。
「XC」と「JC」は一番人気で充実装備のトップグレード。しかしながらその装備も適度なグレードアップであり、「令和」の時代においては標準的な装備の範囲だ。「XL」と「JL」と比較で明るいLEDヘッドランプ&ヘッドランプウォッシャー、クルーズコントロール、本革巻きステアリング、LEDサイドターンラップ付ドアミラー、16インチアルミホイールやシルバー系の内装加飾などが追加される。
「XC」5MTで174万4200円(消費税抜き161万5000円)だ。差額16万2000円だが、他のグレードではオプションの「スズキ セーフティ サポート」の4万2120円分も標準で備えられていることを考慮すると実質的な装備金額の差額は11万9800円と思ってもいい。
3つのグレード差が約12万円くらいずつ。どのくらいの装備を「標準的」と捉えるかや価値観はオーナーによって人それぞれだ。オーナーの立場に立って吟味されたであろうグレード設定、装備設定は良心的であり、真心すら感じる。
思えば今人気再熱の1980年代のクルマのグレード展開はこうだった。平成に入り、だんだんと少しずつ変わり、2000年以降は「生産効率やメーカーの都合でグレード設定になっているのでは?」「一番高いグレードを買わせたいのでは?」と思うなど、グレード展開に疑問を持ったり、イライラすることは多々あり、メーカーに意見をしたりするのだが「装備を簡略化したグレード設定をすることにコストがかかる」などと言われて却下されることが多い。ところがジムニーを見ると「あれ、できるじゃないか!」と思ってしまう。
ジムニーの人気の凄さの陰にはこういった「ユーザーの立場に立った細かな配慮」があるのではないだろうか。ユーザーはよく見ている。当たり前のことをきちんとやってくれたジムニー開発陣には本当に感謝しかない。
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