キング・オブ・スーパーカー“カウンタック”
ランボルギーニの名前を世に知らしめたカウンタック。マルチェロ・ガンディーニが手掛けた前衛的なデザインとライバルを圧倒する存在感をもち、『サーキットの狼』に登場する“ハマの黒ヒョウ”によって多くのファンを魅了した。ここでは「スーパーカーの象徴」であり、1970年代を席巻したスーパーカーブームの立役者であるカウンタックにフォーカスを当て、池沢早人師先生に思い出を語って頂く。
池沢早人師に訊くスーパーカーブームのウラ側「第9回:ミウラを目の当たりにしたときの感動は忘れられない」
圧倒的な存在感は、子供たちだけじゃなくボクも衝撃を受けた!
『サーキットの狼』では圧倒的な人気を誇ったカウンタックだけど、恥ずかしい話、連載の途中までその存在を知らなかった。だから公道グランプリの途中から現れることになるんだ(笑)。さすがにスーパーカーの象徴を出さないわけにはいかないからね。
でも“ハマの黒ヒョウ”というキャラクターの愛車として登場させることで、ストーリーに迫力を出せたと思う。“ハマの黒ヒョウ”は何回も事故を起こすんだけど(編注:実に3回も!)、修理をして乗り続ける所も硬派なカウンタックらしい演出になっている。
“ハマの黒ヒョウ”のモデルになったのは、「伝説の男」として知られる安田銀二さん。当時、シーサイドモーターが輸入した日本上陸1号車となる黒のカウンタックLP400を手に入れ、カーマニアの間では大きな話題になった。そのカウンタックに敬意を称して横浜に会社があったシーサイドモーター(ヨコハマ=ハマ)、黒のボディカラー(黒)にヒョウを付けて「ハマの黒ヒョウ」にしたワケ(笑)。
ボクが実際にカウンタックに乗ったのは日本上陸2号車だったオレンジ色のLP400S。乗ってみると外観からは想像できないほど乗りやすいんだよね。クセが強いんだろうと思って身構えていたら意外とイージードライブで拍子抜けしちゃった。バックだけは全く後ろが見えないので怖かったけど(笑)。
そんな試乗をきっかけにカウンタックをオーダーしたんだ。1978年頃の話なんだけど、当時の価格で2100万円。今なら約4倍だから8000万~9000万円になると思う。実はカウンタックを買う前にスイスのカロッツェリアに「スバッロ」というメーカーがあって、そこに惚れ込んでいたかつてのレーシングカーのローラを頼んでいたんだけど、海外取材の折に寄ってみたら公道を走れるシロモノではなくキャセル。イメージより乗りやすかったカウンタックにチェンジしたんだ。
同じ頃、フェラーリの512BBも持っていたので、新車のLP400Sと512BBを日替わりで乗り比べていた。実際に2台を比べたら頭の中にあったイメージとは全く逆で、512BBはボディが柔らかくてロールしながらコーナリングするのに比べ、カウンタックはボディ剛性が高くてフォーミュラカーのようにシャープな走りが楽しめた。ハンドリングも512BBよりもLP400Sの方がシャープでクイックだったね。
ただし、エンジンのレスポンスに関しては512BBの方が良かった。LP400Sも悪くないんだけど、フェラーリの12気筒エンジンに比べるとランボルギーニの12気筒エンジンには鈍さを感じてしまう。それにLP400Sはクラッチよりもアクセルが重くて、踏み込んでいくと途中から一気に加速するのもイマイチだったなぁ。まるでON/OFFの切り替えスイッチみたいなアクセルだったよ(笑)。
でもね、何があってもカウンタックは時代を象徴する“スーパーカーのシンボル”なんだ。前モデルのミウラは優美な曲線が女性的だったけど、カウンタックは直線的で男臭い。シザースドアもアグレッシブだしね。カウンタックの存在感はデビュー当時から色褪せることなく、今でも強烈なインパクトを保ち続けているのは凄いことだと思う。
Lamborghini Countach LP400S
ランボルギーニ カウンタック LP400S
GENROQ Web解説:空前にして絶後の前衛的なデザイン
1974年、フェルッチョ・ランボルギーニが率いるランボルギーニ社からミウラの後継モデルとして登場したカウンタックLP400。エッジの効いたボディには大きく跳ね上がるシザースドアを備え、エンジンとトランスミッションを反転させた縦置きミッドシップのV型12気筒エンジンは375psの最高出力を発揮した。
その後、ランボルギーニはカウンタックLP400の最高速度を300km/hと公言し、最大のライバルであるフェラーリ512BBとの「300km/h」バトルが始まった。このエピソードがスーパーカーブームに一層の拍車を掛け、日本におけるスーパーカーブームを加速させたことは間違いない。
前衛的なボディデザインは奇才マルチェロ・ガンディーニが手掛けたもので、近未来的なウェッジシェイプは他モデルにも大きな影響を与えることになる。このカウンタックは長寿モデルとしても知られ、LP500から始まりLP400、LP400S、LP500S、5000QV、そして最終モデルとなる25thアニバーサリーまで約16年の長きに渡ってランボルギーニの象徴として君臨し続けた。
その間、ミッドシップにレイアウトされたV型12気筒DOHCエンジンは排気量を4.8リッター(LP500)、4.0リッター(LP400)、5.2リッター(5000QV)へと変更。1985年にライバルであるフェラーリ・テスタロッサに対抗するべく登場した5000QVには、その名の通り12気筒DOHCエンジンに4バルブ(クアトロバロボーレ)化を施し、ライバルを上回る455psの最高出力を実現した。
巷ではLP400からLP500へと進化を遂げた・・・と思われていることも多いが、実はカウンタックの歴史はプロトタイプであるLP500から始まり、1974年に市販車としてLP400が登場したのである。同モデルはLP500のウィークポイントであるオーバーヒートに対応するためエアインテークとアウトレットを追加し、エンジンはミウラで実績を築いた3929ccのV12へと変更された。ボディ剛性を高めるためにセミモノコック方式から鋼管パイプフレーム(バードケージ)へと改め、剛性だけでなく軽量化にも成功している。
今回、池沢先生と共に撮影した個体はLP400Sとなり、そのボディはミウラにも採用されていた希少なライトグリーンにペイントされている。ボディディメンションは全長4140×全幅1995×全高1029mm、ホイールベース2443mm、車両重量は1351kg。搭載されるV型12気筒DOHCエンジンは3929ccの排気量が与えられ、353ps/7500rpmの最高出力と37.0kgm/5000rpmの最大出力を発揮する。
TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
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