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大波乱の決算期販売戦線 新型勢の奮戦と伏兵カローラ首位奪還 三つ巴の裏事情

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大波乱の決算期販売戦線 新型勢の奮戦と伏兵カローラ首位奪還 三つ巴の裏事情

 2020年4月6日、同年3月の車名別登録台数ランキングが発表され、注目新車の「フィット」が2位に急浮上! 同じく2月発売で競合の「ヤリス」は3位で“伏兵”カローラが首位奪還。なぜ、フィットはヤリスを越え、カローラが1位に?

 2020年3月の国内販売状況(速報値)を見ると、小型/普通車(登録車)の登録台数は、2019年に比べて10%減少。軽自動車も8%減り、総台数では9%のマイナスだ。新型コロナウイルスの被害が深刻化して、今後売れ行きが下がるのは避けられない。

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 2020年3月の国内販売上位3車を見ると、1位:ホンダ N-BOX(2万2078台)、2位:ダイハツ タント(1万7370台)、3位:トヨタ カローラ(1万6327台)であった。軽自動車単独で見ると3位はスズキ スペーシア(1万6077台)と続く。

 一方、波乱となった登録車はカローラが1位、これに続いてホンダ フィット(1万4845台)、トヨタ ヤリス(1万3164台)であった。2019年1、2月の登録車1位トヨタ ライズ(1万2009台)は、3月は4位に下がった。

 ただし、この登録台数をそのまま受け取ることはできない。いろいろな事情が絡んでいるためだ。

文:渡辺陽一郎
写真:ベストカー編集部、TOYOTA

【画像ギャラリー】ガチライバルでも個性は異なる!? 新型フィットVS新型ヤリスを写真で徹底比較

3か月ぶりに奪還! カローラ首位へなぜ再浮上?

2020年3月の登録車台数ベスト5(『日本自動車販売協会連合会』データをもとに作成)

 まず、上記のカローラの登録台数は、車名別に集計されたシリーズ全体の数字になる。

 これをボディタイプ別に算出すると、

カローラセダン:2960台
カローラツーリング:8060台
カローラスポーツ:2240台
旧型カローラアクシオ:1400台
旧型カローラフィールダー:1640台

 このほか教習車も若干含まれる。

カローラシリーズで最も台数が出ているのはワゴンの「ツーリング」。さらに併売されている旧型も手堅く売れ、1位に貢献

 このようにカローラでは、旧型のカローラアクシオとフィールダーが、今でも合計3000台以上登録されている。カローラではワゴンを含めて法人需要が多く、ビジネスで使われるために5ナンバー車が求められるからだ。

 この需要を考えると、新しいカローラシリーズが3ナンバー車になった今、ヤリスをベースにした5ナンバーサイズのセダンやワゴンも必要だ。

 旧型のカローラアクシオとフィールダーは、安全装備や衝突安全性も下がるので、安心して使えるコンパクトなセダン&ワゴンが求められる。このような事情もあり、新しいカローラシリーズ(セダン+ツーリング+スポーツ)の登録台数は1万3260台となった。

新型フィットは実質首位も上位3車は超僅差

2月14日発売のフィットは、本格的な立ち上がりといえる3月に登録車2位に浮上! 惜しくもカローラには及ばなかったが、台数を分析していくと実質1位といえる売れ行きだ

 フィットは、発売が2020年2月だから、3月に入っても旧型の在庫車が少数だが登録された。この台数を差し引くと1万4057台になる。ヤリスの発売も2020年2月で、3月に入っても従来型ヴィッツが2575台登録された。

 以上を整理して、旧型を除いた登録車のランキングを割り出すと以下のようになる。

■2020年3月/新型&現行モデル国内登録台数ランキング(旧型を除く)
1位:フィット:1万4057台
2位:ヤリス:1万3164台
3位:カローラシリーズ(セダン+ツーリング+スポーツ):1万3260台

 登録車上位3モデルの台数は、いずれも僅差だ。1位のフィットと3位のヤリスでは、893台しか差がない。比率に換算すると6%程度の違いにとどまる。

 しかも2020年3月には、前述のように従来型となるヴィッツも2575台登録された。ヤリスの販売がヴィッツの影響を受けたこともあるだろう。

 新型コロナウイルスの影響も考えられる。3月の時点で、パーツの供給体制もあり、生産や納期が滞り始めたからだ。メーカーは生産を落とさないよう部品の発注などを柔軟に行うから、車種ごとの納期が、状況に応じて遅延したり元に戻ったりしている。

 そうなると上記の登録台数ランキングは、本来の人気を反映させた結果とはいえないだろう。3車種とも人気車であることは確かだが、ランキング順位は、今後入れ替わる可能性も高い。

 発売から1か月後の受注台数を見ると、フィットは3月16日時点で3万1000台、ヤリスは3月9日時点で3万7000台と発表した。この受注台数を素直に受け取って上記の登録台数と比べれば、ヤリスは受注台数の割に登録台数が少ないから、納車を待っているユーザーが多いことになる。

 そうなると今後はヤリスが大きく伸びるかも知れない。いずれにしろ現時点では今後の売れ行きが不透明だ。

トヨタ全店全車種扱いが今後の販売にも影響

トヨタはすでに東京で全店全車種扱い化を進めているが、全国での導入で人気車の売れ行きにも変化が見られそうだ(編集部撮影、一部加工)

 これからの注目される展開としては、2020年5月になると、トヨタの全店が全車を扱う体制に移行する。

 トヨタ店やトヨペット店といった4つの販売系列は、基本的には存続するが、ひとつの資本が4系列すべてを経営している場合は、東京地区のように全店を1系列に統合することもあり得る。

 かつては日産やホンダも、販売店を系列化していた。それを撤廃して全店が全車を扱うようになると、国内市場に合った販売しやすい車種はさらに登録台数を伸ばし、売りにくい車種は高価格車を中心に下がっていった。

 扱える車種に制限がなくなると、顧客は人気車を求め、販売店もそこに注力するから台数格差が拡大するのだ。

 その結果、今のホンダでは、N-BOXが国内で新車として売られるホンダ車の28%を占める。軽自動車全体なら50%だ。

 日産もデイズ+ルークス+ノート+セレナの販売台数を合計すると、国内で売られる日産車の67%に達する。今のホンダと日産では、販売格差の拡大により、セダンは売れ行きを大幅に下げた。

ヤリスとフィットは「与えられた使命」が違う?

ヤリスは今後全店扱い化で販売をさらに伸ばすポテンシャルもあるが、ある意味で“嬉しい悩み”もある!?

 トヨタのヤリスも、今はネッツトヨタ店だけが扱うが(全店に約1600店舗)、2020年5月に全店(4900店舗)で販売するようになると、売れ行きを伸ばす。ヤリスのようなコンパクトカーは、国内市場で高い人気があるからだ。

 その代わり、セダンは時間の経過に伴って売れ行きを下げていく。プレミオ&アリオンは、すでに設計が古く廃止される可能性が高い。クラウンやカムリの先行きも分からない。

 ヤリスが全店で売られるとコンパクトカーやハッチバック同士の競争も激しくなり、アクア、パッソ、カローラスポーツは影響を受けて売れ行きが下がる可能性がある。

売れ筋モデルのアクア。これまではヤリスがネッツ店で販売されていたが、全店扱いとなればアクアとの競合が激化する可能性も

 以上のように、全店が全車を扱うようになってヤリスが売れ行きを伸ばすと、ほかの車種のテコ入れも相応に行わなければ販売格差が拡大する。

 改良を受けずに放置される車種が増えたり、車種数の削減に繋がる心配もある。これらはすべてユーザーの不利益に結び付く。

 日産はすでにこの状態に陥り、ノートが国内販売の1位を争う一方で、メーカー別の国内販売順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位で落ち着いた。国内で発売される新型車も、1年から2年に1車種と少ない。

 ホンダもN-BOXと軽自動車の比率が過剰に高まった。バランスを取って登録車の商品開発を活性化するためにも、新型フィットが重要になる。

 つまり、ヤリスは過剰に売れないよう注意する必要があり、フィットはホンダの軽自動車偏重を抑えるために販売を促進せねばならない。与えられた使命が異なる。人気車が登場するのは良いことだが、ほかの車種や市場全体に与える影響はさまざまだ。

【画像ギャラリー】ガチライバルでも個性は異なる!? 新型フィットVS新型ヤリスを写真で徹底比較

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