スーパーGT第4戦富士の決勝日、GTアソシエイションから公式予選形式の変更が発表された。ブルテンにより示された変更は複数に渡り、公式予選Q1、Q2での複数タイヤセットの使用が可能になったほか、GT300クラスではこれまで不公平ではないかという声が上がっていたQ1の組分けが廃され、20分で全車が走行するスタイルとなった。GT300チームの複数の監督やエンジニアに、後半戦の予選Q1がどんなものになるかを聞いた。
■不公平さをなくすためのQ1の変更
2024年のスーパーGTは、タイヤの持ち込みセット数の削減にともない公式予選では、Q1、Q2を1セットで争うスタイルが導入されていた。またタイムは合算方式となり、GT300クラスではQ1をA組、B組に分けて実施。各組の上位がQ2のアッパーグループ、下位がロワーグループに分かれ、Q1、Q2の合算タイムによってグリッドが決まっていた。
この中で、GT300ではQ1に組分けがあったことからコンディションの変化で先に走る組と後に走る組でタイムに違いがあり、不公平であるという声が上がっていた。合算方式を維持したままこれを解消するべく、第5戦鈴鹿からGT300クラスのQ1は、20分1回というスタイルに改められることになった。20分間で27台がアタックを行うことになる。
Q1の順位により上位14台はQ2のアッパー14に進出。下位はQ2のロワー15に進むことになり、それぞれQ2を行い、Q1とQ2の合算でグリッドが決まる。第3戦まで行われていたアッパーとロワーの入れ替えは廃止となった。
「モータースポーツのなかでも、特にスーパーGTはプロスポーツなので、シーズンの途中で真逆のルールを入れて変更してしまうことは、スポーツの精神として曲げないべきだろうと考えました。そこで、合算自体は維持させていただきたい」とGTアソシエイションの沢目拓レース事業部長が説明したとおり、タイム合算を維持すると考えれば、今回の変更は公平性を保つものといえる。
ちなみにGT300の公式予選では、第4戦で採用されたウエット時の進行が関係者からも「分かりやすい」という声が多く聞かれたこともお伝えしておこう。FIA-F4でのオイル漏れから実施されたものだったが、合算ではなかったことでやはりシンプルだったよう。これも今後への参考になるだろう。
■課題はやはりSUGOでの第6戦
GT300では2018年から、トラフィックによりアタックができないことを避けるため予選Q1に組分けが採用されてきた。合算方式では不公平が残るところはあったが、2023年までの形式ではQ1は単にQ2に進出する車両を決めるもので、不公平はなかったことから、組分けのメリットがあった。
第5戦からは20分1回のQ1に変更されたが、いったいどんな予選になるだろうか。「絶対面白くなると思う。アタックできないチームが絶対に出てくると思うけど、それは『お前が悪い』という話になる」という声がチーム監督からは聞かれたが、一方でエンジニアにとっては悩みも多そうだ。
セオリーとしては、20分間ある中でラバーが乗りコンディションが良くなる最後の8~10分ほどでピットアウトし、アウトラップ~ウォームアップ1~2周~アタック1~2周を行う流れだ。ただし、全車がこのタイミングでアタックすると当然トラフィックになる。しかしそこでアタックできなくとも台数が増えるタイミングでコースインしたので“自己責任”だ。
「絶対モメます(苦笑)」とあるエンジニアは言う。特に懸念が大きいのが、ファンの皆さんも想像するとおりスポーツランドSUGOでの第6戦だ。もともと組分けのルールもコース長が短いSUGOでの混乱から生まれた。また、第7戦の舞台であるオートポリスもセクター3は抜きづらく、トラフィックの懸念があるが、コンディションの変化も大きいのがオートポリスだという。
「鈴鹿はまだスペースがあるのでそれほど苦労はしないと思いますが、お察しのとおりSUGOはどうするのかと。そもそも、SUGOのトラフィックでアタックできないから組分けができたはずなんですけどね」と別のエンジニアは言う。
「スーパーフォーミュラみたいに、みんなが1周しかアタックしないのであれば関係ないですし、SFはあのレベルの人たちが争っているので1秒も変わらないわけじゃないですか。だからいいんですが、どうしてもスーパーGTではタイヤコンペティションがありますよね」とあるエンジニア。
「チームによってドライバーの力量にも差があるでしょうし、2周目にアタックする人もいれば3周目の人もいるでしょうし、下手したら5~6周目まで走る人もいると思うんです。だからクリアラップはほぼ取れないと思います」
■コンディションか、トラフィックか
では逆に、トラフィックを嫌って早めにコースインする作戦はどうだろう。ただこれについて別のエンジニアは「あまり早めに出過ぎちゃうと、アタック周にコースに別の車両が入ってくるのでダメなんです。だからまわりの動きに同調しないと損をする。もしくは、最初から諦めて最初の10分で行くしかないんじゃないですか。でもそれは、トラックコンディションを考えるとうま味がない」という。
コンディションが良くなるとタイムが上がるのは先述のとおりセオリーだが、ではトラフィックで損をする分とコンディションで稼げる分はどちらが良いのだろうか。
「クルマの速さに余力があればいいんじゃないですか。コンマ2~3秒余力があって、トラフィックで失敗するのであれば最初に出ちゃうのも手ですけど、余力がなく、コンマ2~3秒を“拾い”にいきたいのであれば、やはり最後に出ることになると思います」とあるエンジニア。
「特にGT300のQ1で、サポートレースは走っていたとしてもスーパーGTは午前から走っていないわけですよね。そこは取り分があると思います」
このエンジニアは、「あくまで予想ですが」としつつ「文句を言い出す人はピット位置で文句を言い始めると思います。スーパーフォーミュラでもありますよね。鈴鹿だったらスペースがあるからいいけど、SUGOだと出たいタイミングで出られないと1周まわってきたクルマが来ちゃうのでズレてしまう」と語った。
スーパーフォーミュラでは、予選におけるピット位置はかなり重要で、ランキング上位チームから出口に近いピットを得ることができ、タイミングをコントロールできるが、下位チームは出口が遠く、予選で一瞬のピットアウトのタイミングがうまくつかめないことがある。過去にはアタックできないままチェッカーが出てしまったケースもあった。ただスーパーGTの場合は、ピット位置はレースによって変わっており、特に混戦が予想されるSUGOは難しい。
「出すタイミングなんかは考えるのイヤですね(苦笑)。富士ならまだしも、SUGOは特に3コーナーがピットレーン出口になるので、ちょっと難しくなるんですよ」という。
■GT300ならではのルール作りを
『やる側』としてはかなり大変な予選となりそうな第5戦からのGT300のQ1。各車がいつコースインするのか、そしてチェッカー間際にはどんな光景と展開が見られるか、そして思わぬ下剋上が発生するのか、『見る側』のファンにとっては逆に楽しみなところではないだろうか。
別のエンジニアは、トラフィックの対策として「アタック中の人はヘッドライトを点けるとか、そういうGT300なりのルールを作らないとかなりカオスになると思います。そういう配慮はGTAでルールとして決めて欲しいですね」とさらなるルールづくりを要望した。
GT300の公式予選Q1が第5戦からどんな光景になるかはまだ予想もつかない。「絶対面白くなると思う」という声に期待しよう。
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みんなのコメント
従来は路面コンディションが良い後攻が有利なのは明白
トラフィックが居ない終盤前にタイムを出すか、トラフィック覚悟で最終盤の路面が良くなった時にタイムを出すか
スチュワートが妨害があったか確認するのに時間かかるし揉めるだろうね
どちらも嫌なら時間かかるがインディ500方式しかない