エンジンの強烈な主張に驚き!!
BMWモトラッドが新ジャンルのヘリテイジクルーザー「R 18」シリーズの発売を開始したのは2020年からです。私(筆者:中村友彦)が同社にとって史上最大となる排気量1801ccのフラットツイン(水平対向2気筒)エンジン(ボクサーツインとも呼ぶ)を体験したのは今回の「R 18 Roctane」(以下、ロクテイン)が初で、各気筒の爆発がダイレクトに伝わる原始的で野性的なフィーリングと、隠す気配がないエンジンのトルクリアクションに(同社の「R」シリーズのようにクランクを縦置き搭載する場合はスロットルの開閉で車体が左右に傾こうとする)、大きな驚きを感じることになりました。
【画像】カッコいい! BMW Motorrad「R 18 Roctane」を画像で見る(22枚)
逆に言うなら、クルーザーに限らず、BMWモトラッド自身の「R 1250/1300」シリーズも含めて、近年の大排気量ツインはいろいろな面で洗練が進んでいるので、荒っぽさや手強さを感じる機会は滅多にありません。
そんな中で、時代と逆行するかのような内燃機関らしさが濃厚なエンジンを手がけたことに対して、この時代によくぞ……と、私はしみじみ感心してしまったのです。
なお、試乗を体験した後日、エンジンの概要を調べてみたところ、「R 18」シリーズ用として新規開発された空油冷フラットツインは、ルックスだけではなく構造もクラシックでした。
まず近年の「R 1250/1300」シリーズが搭載している空水冷・水冷フラットツインが、DOHCヘッド、上方吸気・下方排気、エンジン+ミッション一体式、振動を緩和するバランサーを採用するのに対して、「R 18」シリーズは、OHV、後方吸気・前方排気、ミッション別体式、バランサーは無しです。
またパワーユニットは、エンジンとギアボックスの間に大径フライホイール+乾式単板クラッチが備わっていて、その配置を見た私は「先祖返り……?」という印象を抱きました。
ちなみに、ここまでに述べた「R 18」のエンジンの特徴の多くは、2024年から発売が始まった「R 12」シリーズにも通じる話です。
とはいえ、2008年型「HP2スポルト」に端を発する「R 12」の空油冷フラットツインは、吸排気系を刷新した2024年型で劇的に洗練され、昔ながらの気配はほとんどありません。このあたりは開発者の趣向が表れているようで、個人的には面白いところだと思います。
チョッパー&バガーテイストを強調
当初はベーシックモデルのみでスタートした「R 18」シリーズですが、2020年秋には快適装備を追加した「クラシック」、2021年にはフェアリングやハードケースを備える「トランスコンチネンタル」と「B(ボバー)」が加わっているので、日本では2023年9月から発売が始まった「ロクテイン」は第5のモデルということになります。
そして以下に記す数値(車重/シート高/前後ホイールサイズ/価格)から推察すると、ロクテインは既存のモデルの中間的な特性と思えなくはないのですが……
「R 18」=358kg/690mm/F19・R16インチ/266万8000円~
「クラシック」=374kg/710mm/前後16インチ/274万8000円~
「トランスコンチネンタル」=440kg/720mm/F19・R16インチ/392万9000円~
「B」=410kg/720mm/F19・R16インチ/325万3000円~
「ロクテイン」=382kg/720mm/F21・R18インチ/284万円~
大径タイヤに加えて、ミニエイプハンガータイプのハンドルやブラックメッキ仕上げのマフラー、シンプルな指針式メーター(ヘッドライトにビルトイン)などを採用する「ロクテイン」は、チョッパー&バガーテイストを強調したモデルです。
ちなみに「トランスコンチネンタル」と「B」はフェアリングの採用に伴い、車体各部に専用設計部品を導入していますが、「ロクテイン」のシャシーの基本構成は、ベーシックモデル(R 18)や「クラシック」と同じようです。
シリーズ最良の資質?
さて、冒頭ではあまりにもインパクトが強烈だったエンジンの印象を記しましたが、「ロクテイン」でいろいろな場面を走った私が興味を惹かれたのは、ハンドリングがいたってナチュラルで「真っ当」だったことです。
いや、この表現だと何だか上から目線みたいで恐縮ですが、「R 18」シリーズのシャシーはそもそもフロント19/リア16インチタイヤを前提に設計されていて、「クラシック」の登場時期を考えると、前後16インチは視野に入れていたはずです。
とはいえ、大変更と言うべき21/18インチ+ミニエイプハンガータイプのハンドルを採用しているのに、ナチュラルで真っ当と感じるのは、私にとっては意外な展開でした(他の「R 18」シリーズのハンドルはクルーザーの世界では定番のアップ&ワイドタイプ)。
また、同業者によると既存の同シリーズは、場面によっては曲がらなさや物足りなさを感じることがあるようですが、今回の試乗で私は「ロクテイン」にそういった印象は抱きませんでした。おそらくその背景には、既存の同シリーズと比較すると、やや高くなった車高や、少なくなった前輪分布荷重があるのでしょう。
もちろん、車重が382kgで軸間距離が1720mmのクルーザーですから、一般的なロードバイクのように走れるわけではありません。
とはいえ、「ロクテイン」がルックスだけを重視して生まれた派生機種かと言うと、まったくそんなことはなく、もしかしたらこのモデルは、既存の同シリーズ以上にツーリングやスポーツライディングが楽しめるのかも……? と、私は感じたのです。
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