グレカーレと既存モデルの違いとは
これまでのマセラティは、一旦忘れた方がいい。最近、15年ぶりにスーパーカーを発売し、売れ筋モデルにハイブリッドを導入し、新たな小型SUVを披露したマセラティは、2025年までに内燃エンジン車の生産を終わらせるべく、急速に電動化を推進している。
【画像】生まれ変わったマセラティ【新型グレカーレとMC20を写真で見る】 全107枚
こうした動きはどの自動車メーカーにおいても革命的なことだが、モータースポーツの伝統に彩られ、V8の轟音と本質的に結びついた107年の歴史を持つマセラティにとっては、抜本的な革新以外の何物でもないだろう。親会社ステランティスのデザイン担当副社長であるクラウス・ブッセにとって、これはブランドイメージを一新するチャンスである。
マセラティにどのような新提案を行ったのか、そしてマセラティの電動化によって次に何が起こるのか、そのヒントを得るために、グレカーレのベールを解いたブッセに話を訊いた。
――新型グレカーレとレヴァンテの差別化はどのように行われたのでしょうか?
「レヴァンテ、ギブリ、クアトロポルテは、デザイン的に1つのファミリーとなっていますが、(グレカーレの)デザインのDNAは、約3年半前にグレカーレとMC20の開発を始めたときに、マセラティの新章を作ろうと思って描いたものなんですよ。MC20は重要な新しいマイルストーンであり、デザインにおいても一歩前進する価値があったのです」
「レヴァンテは水平基調のデザインなので、このプロセスで自動的に差別化が図れます。ギブリ、クアトロポルテ、レヴァンテは、どれもボディにラインワークが多い。グレカーレではエンジニアと一緒になって、ラインを取り去り、ボディそのものに集中することで、クリーンなものにすることができました」
「映える」クルマは作りたくなかった
――今後のマセラティには、どのような要素が盛り込まれるのでしょうか?
「MC20ですでにご覧いただいたもので、低い口元と高い位置にあるライト、そしてライトシグネチャーといった特徴です。MC20、グレカーレ、そして今回発表されたグラントゥーリズモ(次期型)に見られる、マセラティの新しい顔です」
「純度を極限まで高めながら、その中でエンジニアが機能・性能を表現するというフィロソフィーが重要でした。このデザインDNAを生み出す際に、社会を文脈として見つめたのです。我々はどこにいて、社会はどこに向かっているのか?と」
「いわゆる『インスタ映え』するクルマをデザインしたかったわけではありません。『わたしを見て』と叫ぶような、アグレッシブすぎる外見のクルマもデザインしたくはなかった。マセラティを見れば、その環境が美しくなるような、視覚的な価値を付加するクルマをデザインしたかったんです」
「特にイタリアでは、デザインとはプロポーションとフォルムのことであり、装飾的で二次元的な特徴や折り目、不必要なエアインテーク、あるいはフェイクのエグゾーストパイプは禁じ手のようなものです」
「デザインにはある種のオーセンティックさがありますが、何よりもピュアなのです」
マセラティらしさを感じる要素
――テールライトはマセラティ3200GTにインスパイアされていますが、歴史的なモデルを振り返りたかったのでしょうか?
「答えはノーです。マセラティに限らず、世界的に最もアイコニックなクルマは何かと自発的に考えるのは、とてもいいエクササイズになりました。実際、わたしは60台思いつきましたが……」
「レトロなデザインが良いというわけではありません。ピュアさも強調したいのですが、同時に、これがマセラティであると見てほしい。もし、バッジやロゴが見えないとしたら、そのクルマを表すためにいくつの要素が必要でしょうか?ブランドメッセージを伝えるために5、6、7、10、15個の小さな要素が必要なクルマもありますし、1つだけでいいクルマもあります。ジープのセブンスロットグリルが良い例ですね」
「マセラティにとって、フロント、サイド、リアに少なくとも1つの明確な要素があることが重要でした。フロントはトライデントのある顔、サイドは完全にアプローチを変えたホイール、リアは3200GTのライトが当時としては刺激的なディテールだったので、『いいじゃないか』と」
「マセラティに関連する非常に強いディテールです」
車載スクリーンにもマセラティ流のこだわり
――このセグメントの他のクルマからはインスピレーションを受けましたか?
「はい。ですが、おそらく皆さんが期待するようなものではないでしょう。他のクルマがお客様に何を提供し、何が優れていて、何がわたし達にできるのか、ということです。快適さ、収納、直感的な操作、適切なものが適切な場所にある……クルマの実際の使用シーンを決して忘れないことが重要なのです」
「また、スクリーンに関しても、市場の動きを観察しています。どこまでが『スクリーンのピーク』なのか、スクリーン・デトックスは必要なのか?わたし達にとって、マセラティは常にパフォーマンスを体験するためのものです。巨大スクリーンに気を取られることなく、クルマを体感したい」
「このクルマにはかなり大きなスクリーンが搭載されていますが、表示モードを設定できます。わたしのお気に入りはリラックスモードで、必要最小限の情報しか表示されません。マセラティに乗るということは、自分へのご褒美であり、不必要なグラフィックで気を散らさないということが大切なのです」
EVでは冷却性能と空力に注目
――EVでは、デザインのアプローチをどのように変えるのですか?
「フォルゴーレ(マセラティのEVシリーズ)は、基本的な土台は同じで、90%クリアなものを使っています。わたし達が注目するのは、冷却条件の違いや、より積極的な空力要求、これはホイールやドアハンドルにも影響を与えましたね、そしてコミュニケーション(例えば色使い)です」
――燃焼パワーが恋しくなりませんか?
「わたしは自然吸気のV8エンジンを搭載したグランカブリオに乗っているので、朝のコールドスタートは特別な瞬間です。しかし、結局のところ、時代の現実を無視することはできません。EVだってすごいんだ、と思ったのは、4年前、デザインスタジオでディスカッションをしていたときです」
「そこで面白いエクササイズをしました。1954年にピニンファリーナがデザインしたA6 GCSをブレシアの街で走らせるビデオを撮ったのです。エンジン音を消して、クラシック音楽を流したのですが、その時に『ああ、本当は素晴らしいものなんだ』と思ったんです。1マイル先から存在を主張するのではなく、静かに近づいてくるのです」
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みんなのコメント
所謂、貧困なんだよね!マインドも。