現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【昭和の名機(10)】日産VG型に新たに加わったDOHC版は究極のレシプロエンジンだった

ここから本文です

【昭和の名機(10)】日産VG型に新たに加わったDOHC版は究極のレシプロエンジンだった

掲載 更新 105
【昭和の名機(10)】日産VG型に新たに加わったDOHC版は究極のレシプロエンジンだった

名機なくして名車なし。今回は日本で初めて量産化されたV6エンジンである日産のVGシリーズの後編。SOHCシリーズとは異なるコンセプトで新たに開発されたDOHCシリーズは、世界一を目指しコストを度外視した究極のレシプロエンジンだった。

先端技術を惜しみなく投入したVG30DE ~1986年2月登場
VGシリーズの進化は止まらない。1986年2月に2代目F31型レパードのフラッグシップグレードであるアルティマに搭載されてデビューしたのが、VGシリーズ初のDOHCユニットであるVG30DEである。日産社内の呼称は“EG1”。従来のVGとは一線を画した別シリーズ扱いの秘密兵器であり、それまでのSOHCシリーズとはケタ違いの高度なパワーユニットを目指した意欲作だった。

【くるま問答】交通取締りで警察官がする質問「過去1年以内に違反をしたことは?」の意図とは!

VGを名乗るものの、ただヘッドをDOHC化したものではない。そこには、当時のエンジン技術者にとって夢のようなハイテク技術がふんだんに盛り込まれていた。

左右各バンクに2本ずつ、計4本のカムシャフトがあるのはもちろん国産エンジン初。スパークプラグ座に6個の独立した圧電式ノックセンサーを配置し、気筒別に最適な点火時期を電子制御するシステムは世界初採用であった。またRB型エンジンで実用化されたNICS(NISSAN INDUCTION CONTROL SYSTEM)も採用。インマニを左右バンク3気筒ずつに分け、それぞれにスロットルチャンバーを設置するとともに連絡通路のバルブを開閉して実質的な吸気管長を変えるシステムだ。なお、このツインスロットルチャンバーは国産初の技術でもある。

さらに吸気バルブの開閉時期を電子制御するNVCS(NISSAN VALVETIMING CONTROL SYSTEM)も国産初の技術である。ほかにもコンパクトなイグニッションコイルをプラグに直接取り付け、ハイテンションコードによるエネルギー損失を防ぐNDIS(NISSAN DIRECT IGNITION SYSTEM)等など。ライバル社のエンジニアが絶句したと伝わるのも納得である。まさにコストを度外視した究極のエンジンだったのだ。

もっともVG30DEはNAということもあり、デビュー時のスペックはネット表示で185ps/6000rpmと控えめで、最大トルクも25.0kgm/4400rpm。当時のライバルであり同時期に登場した2代目ソアラに搭載された7M-GTEU(ネット230ps/33.0kgm)の前には影が薄かった。1986年10月にはネット190psまでパワーアップされてZ31型フェアレディZの300ZRにも搭載されたが、生産台数はなかなか思ったようには伸びなかった。このエンジンがその秘めたポテンシャルを開花させるには、後述するY31型初代シーマ用に開発されたVG30DETの登場を待つしかなかった。

VG30DEのDNAをいち早く取り入れたVG20DET ~1987年6月登場
1987年6月にフルモデルチェンジしたY31セドリック/グロリア。そのイメージを大いに高めたのが、スポーツグレードのグランツーリスモSVであり、そこに搭載された2LのDOHCターボであるVG20DETだ。可変バルタイなどの先端技術は兄貴分のVG30DEから受け継ぎつつ、小排気量をカバーするため日産内製のCNR-1型ハイフローセラミックターボを世界初採用。さらに可変吸気システム(NICS)を採用して排気量はミドルクラスながら、185ps/6800rpmの最高出力と22.0kgm/4800rpmの最大トルクで切れ味鋭い刺激的な走りを味わわせてくれた。

当時はたとえターボでも2Lエンジンでは、Y31クラスの高級車を走らせるのは荷が重いと言われていた時代。ところがVG20DETは新型ATミッションの“E-AT”との組み合わせで、フォーマルカーとは思えない軽快な走りを実現したのだ。発進加速、高速域の伸びともに、1.5トンの重量級を走らせているとは思えない、機敏で軽快な走りを実現していたのだ。右足に力を入れれば、大きなボディが山道をぐんぐん上って行く様に、当時は誰もが驚いたものだった。

VG20DET は1988年8月にマイナーチェンジしたF31型レパードにも拡大採用されるが、このときハイオク仕様化され、さらにインタークーラーも装着されて210ps/27.0kgmにパワーアップしている。

もはや過剰なパワーとも言うべきVG30DET ~1988年1月登場
バブル景気が本格化しつつあった1988年1月、ついに登場したのが初代Y31型シーマだ。最初から3ナンバー専用に設計されたボディでマンネリ気味だった日本の高級車市場に新しい風を送り込んだシーマだったが、さらに衝撃的だったのはそこに搭載されたエンジン。「高級車はパワフルでなければならない」という思想に基づいて搭載されたのは、2代目レパードに搭載されてデビューしたVG30DEをさらにターボ化したVG30DET。その最高出力は255ps/6000rpm、最大トルク35.0kgm/3200rpmという(当時としては)とてつもないもので、一躍、国産最強エンジンの座に躍り出た。ちなみに同時にNAのVG30DEもハイオク仕様化され、15ps/1.5kgmそれぞれ向上して200ps/26.5kgmにパワーアップしている。

それまでの高級車の概念をふっ飛ばす高性能ぶりこそ、初代シーマのもうひとつの魅力だった。ただでさえ余裕のトルクを誇る3LのV6に中高速域ではさらにターボの勢いが加わり、その加速たるや当時最新のスポーツカーも顔負けだった。もっとも、そのパワーにシャシ/足回りが付いていけなかったのも事実で、結構なじゃじゃ馬でもあった。この高性能エンジンに足回りが追いつくには、まだ少々時間が必要だったのもまた事実なのだ。

VG30DETは、1988年8月にはマイナーチェンジした2代目レパードに、さらに1991年6月にはY32型にフルモデルチェンジしたセドリック/グロリアにも搭載された。また1993年9月には2代目シーマのマイナーチェンジも継続採用される。この間、エンジン本体には大きな変更や改良はなかったが、シャシの熟成は大幅に進み、255ps/35.0kgmをしっかりと路面に伝えることができるようになった。

SOHCから始まり、究極とも呼ぶべきハイテク満載のDOHCターボへと進化を遂げたVGシリーズ。1989年7月にはついにネット280psを発生するツインターボのモンスター、VG30DETTにたどり着く(Z32型フェアレディZに搭載)。だが、進化はそこまで。すでに次世代V6であるVQ型の開発は着々と進んでいたのだ。

[ アルバム : DOHC化されたVGシリーズと主な搭載車 はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
くるまのニュース
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
Merkmal
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
ベストカーWeb
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
WEB CARTOP
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
AUTOSPORT web
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
レスポンス
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
乗りものニュース
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
ベストカーWeb
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
motorsport.com 日本版
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
くるまのニュース
ラリージャパン2024がついに走行開始。シェイクダウン1走目の最速はヌービル/WRC日本
ラリージャパン2024がついに走行開始。シェイクダウン1走目の最速はヌービル/WRC日本
AUTOSPORT web
ダイハツが新型「軽SUV」発表! 打倒「ジムニー!?」な“5ドア”モデル登場! タフすぎる「ゴツ顔×カクカクボディ」採用した“新型タフト”138万円から発売!
ダイハツが新型「軽SUV」発表! 打倒「ジムニー!?」な“5ドア”モデル登場! タフすぎる「ゴツ顔×カクカクボディ」採用した“新型タフト”138万円から発売!
くるまのニュース
MotoGPマシンデビューの小椋藍選手 初走行の印象は……【MotoGPバルセロナ公式テスト】
MotoGPマシンデビューの小椋藍選手 初走行の印象は……【MotoGPバルセロナ公式テスト】
バイクのニュース
ゼンリン、パナソニックのカーナビ「Strada」向け最新地図データ発売へ…12月2日
ゼンリン、パナソニックのカーナビ「Strada」向け最新地図データ発売へ…12月2日
レスポンス
下取り額爆上がり? アルヴェルのドアの速さまで変えられるトヨタの[KINTO FACTORY(キントファクトリー)]がすごい!
下取り額爆上がり? アルヴェルのドアの速さまで変えられるトヨタの[KINTO FACTORY(キントファクトリー)]がすごい!
ベストカーWeb
チャンピオン争いで明暗を分けた要因と変化がもたらす2025シーズンへの期待/MotoGPの御意見番に聞くソリダリティGP
チャンピオン争いで明暗を分けた要因と変化がもたらす2025シーズンへの期待/MotoGPの御意見番に聞くソリダリティGP
AUTOSPORT web
メルセデスが好発進、ハミルトンがトップタイム。RB勢は下位に沈み角田裕毅19番手|ラスベガスGP FP1
メルセデスが好発進、ハミルトンがトップタイム。RB勢は下位に沈み角田裕毅19番手|ラスベガスGP FP1
motorsport.com 日本版
ヤマハとホンダがコラボ展示! バイクSFアニメ『Tokyo Override』劇中車の『YZF-R1』&『CB1300』が渋谷に登場
ヤマハとホンダがコラボ展示! バイクSFアニメ『Tokyo Override』劇中車の『YZF-R1』&『CB1300』が渋谷に登場
レスポンス

みんなのコメント

105件
  • レパードか
    日産もトヨタに負けない高級クーペを持っていたなんて今の人は誰も信じないだろうね
  • Z32乗ってました。VG30DE…美しい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村