現時点ではEV=日産リーフという状況に
これまでEV(100%電気自動車)の本格展開には距離を置いているように見えたトヨタが、ついにEVの拡大に動き出した。上海モーターショーでC-HRベースのEVを世界初公開したと思ったら、2020年代前半にはグローバルで10車種以上のEVを展開すると宣言した。このグローバルという表現のなかには、日本市場も含まれていることだろう。東京オリンピック・パラリンピックに向けて自動運動の実用化もかまびすしいが、オリンピック後の日本市場はEVへとシフトしていくのだろうか? そのとき勢力図はどう変わるのか。
「石油の枯渇」が原因じゃない! 世界的に電気自動車シフトが進む本当の理由とは
2019年春の時点で、日本のEV市場はほぼ日産が握っている。なにしろ市販EVというのは、日産のリーフとe-NV200、三菱のアイミーブとミニキャブミーブしかないのだ。いずれにしても、ルノー日産三菱アライアンスのモデルであるが、販売の大半はリーフとなっているのは言わずと知れたことだろう。日産のEVに商用車やワゴンを用意するe-NV200が存在していることも忘れがちだが、それだけ「リーフ」というEV専用モデルのインパクトは強い。日本においてはEV=リーフと市場が捉えているといっても過言ではない。
「EVの日産」としてブランディングしてきたアドバンテージは大きい。逆に、トヨタはEVへの本格参入の第一弾としてC-HRのバリエーションとして出してきたことから、既存モデルのEV仕様を展開すると予想される。
増加するカーシェアリングサービスがEV市場活性化の肝になる
これは、かつてハイブリッドカー(HEV)で見られた構図だ。最初は「プリウス」というHEV専用車が主役で、その後も「アクア」というHEV専用モデルが存在感を示しているが、いまやトヨタ(やホンダ)については軽自動車を除いてHEVが未設定のクルマを探すほうが難しいという状況になっている。歴史は繰り返すというが、HEVで起きたことを考えると、日産「リーフ」のブランディング面での優位性は当面揺るがないであろう。ただし、EV全体のシェアにおいては販売網の違いからもトヨタが実力を発揮することになると考えられる。
さて、そもそも日産やトヨタ、その他メーカーが日本でEVを多数展開するほど市場にEVニーズが高まるかどうか、という問題がある。EVの航続可能距離が伸びれば売れるようになるのか、それともガソリンスタンドの閉店によりエンジン車に乗ることがインフラ的に厳しくなって仕方なしにEVにシフトするのか。はたまた再生可能エネルギーの効率的な利用から電動化が進むのか……。シナリオはいくつも考えられるが、とにかくEVの市場が大きくならないことには、複数のメーカーがEVを採算レベルで売るのは難しいだろう。
ところで、カーシェアリングとEVは親和性が高い。エンジン車に比べてメンテナンスフリーの要素は強く、EVであれば燃料補給の手間も不要だ。すでに日産がe-シェアモビというサービスを始めているが、近距離ユースがメインユーザーのカーシェアリングが拡大していけば、サービス提供社がEVを採用するという展開になると予想される。個人所有を無視するわけではないが、カーシェアリングというビジネスモデルの拡大が、日本におけるEV普及の一助となるのではないだろうか。
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