現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 日産初の超スタイリッシュなクーペは値段が高すぎた! 総生産台数わずか554台に終わった初代シルビアとは

ここから本文です

日産初の超スタイリッシュなクーペは値段が高すぎた! 総生産台数わずか554台に終わった初代シルビアとは

掲載 5
日産初の超スタイリッシュなクーペは値段が高すぎた! 総生産台数わずか554台に終わった初代シルビアとは

クリスプカットデザインが特徴的だったシルビア

 1950年代から1960年代にかけての国産車と言えば、ボクシーな4ドア/2ドアセダンが圧倒的な多数派を占めていました。ですが、1960年代の半ばからはスタイリッシュなモデルも見られるようになったのです。その典型が、1965年に日産がリリースした初代シルビア。今回はスタイリッシュなグランツーリスモ、シルビアを振り返ります。

最初はなんと「フェアレデー」! まもなく新型発売の「Z」の知られざるご先祖様

数多くのロードスターやスポーツカー登場させていた日産初のGTクーペ

 日産は古くから、いくつものスポーツカーやロードスターをリリースしてきました。ただし、その多くは幌付きのオープントップでしたが、1964年に開催された第11回東京モーターショーに市販を前提としたコンセプトモデルのダットサン・クーペ1500を出展。

 翌1965年の4月に日産シルビアとして市販にこぎつけています。スカイラインのスペシャリティモデルだったスカイライン・スポーツにも4座の2ドア・クーペがラインアップされていました。これはまだプリンス自動車工業がまだ日産自動車に吸収合併される以前の話で、日産としての初のクーペモデルは、この初代シルビア、ということになります。

 スカイライン・スポーツをはじめとして、他社ではイタリアのカーデザイナーやカロッツェリアにデザインを依頼するケースが増えていました。しかし、シルビアのエクステリアは日産の社内で、日本人デザイナーの木村一男さんが手掛けています。

 当時の日産は、ドイツ人のインダストリアル・デザイナーであるアルブレヒト・フォン・ゲルツとアドバイザリー契約を交わしていて、彼が契約期間中に日産の造形部でクレイモデルを見ながらアドバイスをした、とされています。アドバイスをしたのは事実でしょうが、しかしゲルツは、初代シルビアは自らのデザインだと主張(吹聴)していたようです。

 彼が、どういった意図でそう話していたのかは、彼が亡くなった今となっては確かめようがありませんが、それはともかく、初代シルビアのデザイン自体は木村さんが手掛けたことは間違いないようです。

 エクステリアのデザインは“クリスプカット”と名付けられていて、シャープなキャラクターラインを多用していくつもの面で形成。とくにサイドビューは特徴的で、ショルダーラインは2本のキャラクターラインで挟まれた逆Rの凹面で構成されていました。

 そのショルダーラインの下、ドアハンドルの高さにも1本のキャラクターラインが走っていて、まるで宝石の多面カットを思わせるデザインでした。また外板パネルの繋ぎ目を極力減らすなど、デザインを活かすための工夫も多く見られます。

 そのために製作はハンドメイドに近いものがあり、日産自動車本体ではなく協力工場で架装メーカーでもあるトノックス(当時は殿内工業)で生産されていました。また内装も、ステアリングホイールはグリップ部分がウッドでスポークはクロームメッキ、シートの表皮に本革を使用するなど上質に仕上げられています。

 兄弟モデルとされていた2代目フェアレディ(1500/1600ccエンジンを搭載したS310系)は、ライトウェイトでオープン2シーターのスポーツカーを目指しました。しかし初代シルビアは、そんなフェアレディとは目指したベクトルの方向が異なっていて、スポーツカーというよりもコンパクトながらも豪華なグランツーリスモを目指していたようです。

ブルーバードやフェアレディと3兄弟に

 初代シルビアはS310系フェアレディのシャシーを転用したもの。基本的には310型ブルーバードのそれをベースにしたラダー形状のフレームでしたが、前後サスペンションの取り付け部分にX字型に補強メンバーを追加したもので、剛性が一層引き上げられていました。

 サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンをコイルで吊った独立懸架で、リヤはリーフスプリングでアクスルを吊ったリジッド式を採用。搭載されていたエンジンは、1964年のモーターショー時点ではフェアレディ1500から転用したG型エンジン(1488ccの直4プッシュロッドで、最高出力は71ps)でした。

 市販モデルが登場した1965年には、フェアレディも1600ccにコンバートされることが決まっていたために、4月に登場した初代シルビアは、フェアレディよりも1カ月早くR型エンジン(1595ccの直4プッシュロッド。最高出力は90ps)を搭載してデビューを果たしていました。ちなみに、このR型エンジンは2代目の410型に生まれ変わっていたブルーバードのホットモデルでサファリ・ラリーなどでも大活躍する、1600SSSにも搭載されています。

  つまりダットサン・フェアレディ1600(SP311型)と日産シルビア(CSP310)、そしてダットサン・ブルーバード1600SSS(R411)の3車は共通のエンジンを搭載していました。さらにR411型のひと世代前、初代のダットサン・ブルーバードとフェアレディ&シルビアは、シャシー(のベースデザインを)を共有しており、3車の関係は深いのです。

 ただしブルーバードは、初代の310型から2代目の410型に移行する際に、より軽量なモノコックフレームにコンバートされていました。その関係性は幾分薄められていましたが、サスペンションは、フロントがコイルで吊ったダブルウィッシュボーン式独立懸架、リヤはリーフでアクスルを吊ったリジッド式を採用。

 またブレーキもフロントに日産車として初めてディスクブレーキが装着されたのも、この3車の共通項でした。もう少し正確に言うと1965年の4月に登場した初代シルビアが日産初の装着となり、1965年5月に登場したフェアレディ1600と1966年4月のブルーバード・シリーズがマイナーチェンジを受けた際に追加設定されたブルーバード1600SSSは、厳密には日産で最初、とは言えませんね。いずれこの3兄弟がほかの日産車に先駆けてディスクブレーキを採用したことには間違いありません。

 初代シルビアに話を戻すと、サイズ的には全長×全幅×全高が3985mm×1510mm×1275mmでホイールベースは2280mmでした。車両重量は980kgでエンジンとシャシーがほぼ共通のフェアレディ1600(SP311型で車重は920kg)や、エンジンが共通のブルーバード1600SSS(2代目のDR411型で車重は930kg)と比べて少し重くなっていたのですが、最高速は165km/hでフェアレディと同じです。

 豪華なグランツーリスモで、フェアレディほどにはタフでハードでもストイックでもなく、またルックスも素晴らしいし、充分なパフォーマンスを備えていた初代シルビアは、発売と同時に飛ぶように売れる……はずでした。

 現実的には554台が生産されただけで3年余りの短いモデルライフを終えてしまいました。販売が伸び悩んだ最大の理由はやはり価格設定。ブルーバードの1600SSSが72万円、フェアレディ1600でも93万円だったところがこの初代シルビアは桁違いの120万円。当時の社会背景を考えると、やはり飛ぶように売れるはずはなかった。もっともハンドメイドに近かったから、そんなに売れても困ったかもしれないのですが……。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

5件
  • 最初デザインはミケロッティだと勘違いしてました。
    当時の日本人デザイナーは、海外でデザインを見てくるか、洋本を見るぐらいしか最新デザインに触れるチャンスが無かったから。

    ヤマハ2000GTもそうですが、残念ながら日本人のオリジナルデザインは当時は不可能で、絶対にお手本がありました。
    インダストリアルデザインは一朝一夕には生まれないのです。
  • シルビア、当時の新聞の正月版に1面全部の広告を出した。
    斬新で人目を引き付けるデザインで、その新聞広告を自分の部屋の襖に貼り付け毎日眺めてた。 高校生の時で将来こんな車に乗りたいと思った。
    それから半世紀以上過ぎたがまだそんな車には乗れていない。
    技術の日産がデザインの日産にも成るのだと感じたが・・・。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

177.0271.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

156.0908.0万円

中古車を検索
シルビアの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

177.0271.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

156.0908.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村